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あなたは……誰?
薄暗く、深い森の中。ある女生徒が、そこに居た。ナイフを持った、黒いフード付きのパーカーを身に付け、そのフードを目深に被った人物と共に。
黙って見つめ合う。
「………………」
「………………」
「っ、絵、希菜……。っ、あなた、は…………」
「ふふっ。すみません。これは、完全犯罪とさせていただきますね」
ニコリと笑い、茶目っ気のあるように言うが、異様な威圧感が拭えず、目は全くもって笑えていない。手にしているナイフがキラリと輝いた。
「い、いぃ、いやっ、いやあっ……! 絵希菜……絵希菜…………っ!」
「あなたが、悪いんですよ? ただ——近付きすぎた。それだけだ」
血の匂い。動悸が進み、全身に血液を送ろうとする。だが——
「…………っ、……ぁ、…………っ……」
六月二十日。雨の強い日だった。季節外れのスノードロップが一輪、目の前で揺れていた。不自然なほど美しく、咲いていた。