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いつか見た夢

唐突に始まった新作だよ

 暗い森。月明かりで辛うじて少しだけ先が見通せるかどうかと言ったところ。空には木々の隙間から満月が見える。

 視線を空から前へ向ける。暗闇の先に小さな灯りが見えた。

 進む。足場は悪く、思うように前へは進めないが、それでも歩みは止めなかった。


 ――きょうもいるのかな?


 その先に居るであろう彼らに思いを馳せる。

 バラバラなのに、いつもみんなで楽しそうな彼らのことを。


 次第に灯りが大きくなる。

 正体は焚き火だった。

 その焚き火を4人の人間が囲っている。


「ーーー!ーーーーー!!!」


 快活そうな赤毛の少年は、その身体に見合わないほどに大きな声を出して場を盛り上げる。


「ーーー…〜〜〜…」


 少年より一回り身体が小さい利発そうな翠髪の少女は、そんな少年の様子に呆れている様子だ。


「ーーー…ーーー…」


 寡黙で肉付きの良い禿頭の大男はそんな二人を見つめて、焚き火の周りに今日獲ってきたであろう獲物を串に刺して並べる。少しだけ分かりにくいが、その様子はどこか楽しげだ。


「〜〜〜♪〜〜〜♡」


 そんな彼等と楽しそうに談笑しながら焚き火にの上に吊るした鍋の中を掻き混ぜるのは、清楚な空気を身に纏った青髪の年若い女だ。

 時折おたまで中身のスープを掬っては味を確かめている。顔を見るに納得行くものが出来たらしい。


 性別も年齢も彼らの性格も、ひと目見て全然違うと分かる。おそらく趣味趣向も全く異なるのだろう。

 しかしよく見ると彼等には共通した不思議な特徴があった。


 まず彼等の傍らには形状は異なるが、それぞれ武器が置かれている。

 少年の傍には本人の腕と同じくらいの長さの剣と、小さいながらも丈夫そうな盾。

 少女の傍には艶消しがされた二振りの短剣。手入れの最中だったのだろう。

 大男の近くには普通の人間が持ち上げようとしたら、腕と胴体が永遠に別れを告げそうな程の質量を感じさせる戦鎚。

 女性の傍には夜闇の中でも仄かに光り輝く宝玉が先端に埋め込まれた小振りな杖。


 皆それぞれ用法は異なるが、共通しているのは戦うための武器を持っていることだった。


 更に彼らの身体にも共通した特徴がある。

 少年の額には燃え盛る炎を表したような紋章が。

 少女の右二の腕には吹き抜ける風を表したような紋章が。

 大男の背中には泰然と聳える岩山を表したような紋章が。

 そして女性の前面鎖骨付近には流れ渦巻き飛散する水を表したような紋章があった。


 焚き火を囲んで彼らは食事を始めた。

 ここからでは内容までは聴き取れない。そもそも何を話しているのかすら分からない。だけど彼らが心の底から楽しそうなことは伝わってくる。


 ――うらやましい…


 何故そう思うのかはわからない。それでもおれはそんなことを思っていた。


 その思いが伝わったのかどうかは分からない。

 ふと気が付いたら少年がこちらを見ていた。手招きしている。来いということだろうか?

 少女も気が付く。手元にある料理から何かを分けている。分けようとしているのだろうか?

 大男も気が付く。静かに横へズレて場所を空けた。焚き火がよく見える。そこへ行っても良いのだろうか?

 女性は彼らの様子を見て新しい器を取り出した。平たい木皿だ。少女を初めに各々が適当な料理を少量乗せている。

 恐る恐る近付いて行く。


 ――いいの?


 彼らを見上げる。おれへの対応をそこそこに歓談を再開していた。

 それを見て盛り付けられた料理に口を付ける。


 ――あじがこい…


 少量でも腹持ちを良くするための工夫だろうか?一品一品に調味料がふんだんに掛かっているように感じる。


 ――あたたかい…


 それでもどこか心が温まる料理だった。

 彼らの話し声を子守唄に意識が闇へと沈んでいく。満腹になってどこか安心したのかもしれない。

 おれはその場で丸くなって眠りについた。

 みんな物好きだね。

 ん?誰がって?

 みんなさ。

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