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翌日、昨日の出来事が周りに知れ渡っている為、行く先々で周りから距離を置かれた。店員などは対応してくれるが巻き添えを食らいたくないという思いが伝わってきた。
昨日の一件は、俺の中でも割と死を覚悟した出来事だったが、この移植された眼とあの卵型の武具のおかげで助かったと思う。
「なぁ、何を探してるんだ?」
昨日今日、この厄介なジル・ロベルトが付きまとってきている。今回はぼろっちい服ではなく、ちゃんとした服だった。
彼には戦う意思はないから、ちょっと付き合わせてくれといい勝手に付きまとっている。出会い頭から即座に戦術データリンクを連携し、ナミとは暗号化された通信によって会話してる。ジル・ロベルトからすると目の前で無言にしか見えないだろうと思う。
ナミ、こいつどうする?
無視でいいんじゃないかしら? 癇癪起こしても彼の魔力なら吸収してしまうし、肉体的な優位性は図体だけでかいけれど、格闘技術は新兵に劣るから、全然脅威じゃないと思うわ。
昨日死ぬかと思ったけれどな。
それで学び、対策したのだし、それを上回るような事をするなら暴力で訴えられるでしょ。
ジル・ロベルトが戦闘状態になった場合の対策はもうおこなっている。高エネルギー体反応を示した瞬間に卵型の武具が対象から指向性吸収をフルパワーで行い、無力化する。無力化した後に、近接攻撃でボコり理由を聞くという流れだ。
「なぁなぁ、無視しないでくれってばさぁ・・・昨日は、その・・・悪かったよ」
俺たちは引き続きジル・ロベルトを無視し続け、新しく車を調達すべく店巡りをした。今回は昨日と違いナミと別々で動かず一緒に動き、どういう車がいいのか確認して購入することにした。別々で行動するとその隙に何かするとも限らないし、二人そろっている事でジル・ロベルト対策となる。
「あ、あのこちらなんてどうでしょうか?」
完全に店員が怯えつつも、接客サービスをしてくれる。
「えぇ~車探してるの? もっとすごいいいやつあるぜ~? 紹介しちゃうぜ?」
「中を見せてください」
俺たちはジル・ロベルトを無視し、居住可能な車の中を見せてもらった。
「どうでしょうか・・・?」
レンツ、もうちょっと寝室は広い方がいいわ、シャワー室は問題ないわね。あとは・・・。
ナミからの要望を聞き、俺は別の車を見せてもらいたいと店員に伝え、希望に合うのを探し続けた。その間、ジル・ロベルトを無視し続け、しまいには黙ってついてくるようになった。
昼食時、旅に必要な道具や服などを探しつつ購入したりする合間も俺とナミはジル・ロベルトを無視し、暗号通信で会話して、その日を過ごした。
そして、夕方頃まで付きまとってきたのでナミに言われて俺はこいつが何をしたいのか確認することにした。
「それでお前は何の用で付きまとってきてるんだ?」
「え? いや・・・昨日はその悪かった」
「それはわかったが、それで何がしたいんだ?」
「その眼について、知りたいんだ」
この眼、自称神さまから貰った鬼眼は俺にとってもよくわからないものだ。知りたいと言われても答えられるものはその程度しかない。それで納得するのかどうかと疑問に感じた。
「答えられる範囲でいいなら答えるがお前が納得するかは知らないぞ。あと答えるかわりに何か俺たちにメリットあるのか?」
「め、メリット?」
「お前タダで情報をもらおうとしてるのか?」
「え、ダメなのか?」
「昨日、いきなり襲ってきて無様な姿を晒して、詫びの言葉を言ったからそれでチャラって・・・あなた大丈夫?」
ナミは冷ややかな表情でジル・ロベルトを一瞥した。昨日のことを思い出したのか、ジル・ロベルトは顔を赤らめていた。急所部分に蹴りを入れられて、凄み続けるほどの精神性は持っていないことがわかった。
「とりあえず、晩飯もまだだし、なんか奢ってくれ」
俺はこちら側が優位な状態なので、晩飯をたかることにした。
「おう、いいぜ。めっちゃ美味いところに招待してやるよ。なんたってオレは――」
「そういうのいいから、早くして」
「・・・はい」
俺とナミの認識として、こういった手合いは調子に乗らせると厄介だという事を前の世界で学んでいる。局地的な力を発揮する兵士など、確かに強くて戦場によっては便りになる。しかし、それを鼻にかけて威張り散らしたり、調子に乗らせるのは規律や作戦行動時に悪い影響が起きることが多い。
そんなタイプな相手を調子に乗らせたり、主導権を握らせるのは面倒過ぎる。
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