59
俺はいくつかの車屋を巡り、自分たちが貰った車は割とハイグレードな車だと知った。それでも上には上の車があり、それにするか迷った。ナミに相談してからどの車にするか、一通り目星をつけておき、俺は約束の時間になりそうだったので、待ち合わせ場所に向かった。
高エネルギー体補足。
ナビからアナウンスがあり、補足した先にはナミと見知らぬ角が無い金髪の大柄な男がいた。
「ナミ、すまない。待たせた・・・こちらは?」
ニヤニヤしており俺を見下していた。身長差から見下さず得ないが、何か今まで出会った人とは違う感じがした。
「ナンパしてきて、そのまま無視してもついてきた人よ」
「つれないねぇ・・・君たち有名人じゃん? お近づきになろうと思ってな」
八重歯がギラりと光るような獰猛な笑みをした。
大気中の電圧変化を確認。
ナビがさっきから何か観測して、俺も何か奇妙な感じがした。
「それで何のようなんだ?」
「オレはジル、ジル・ロベルトって言うんだが・・・まあ、ジルって気軽に呼んでくれ、君たちの事は知ってるよ、レンツくんにナミちゃんだろう? いや、すごいねぇ角無しなのに」
「お前だって角無しだろう?」
「そうだね、物理的な角はないね。確かに無い・・・が、実はあるんだなぁ角はさ」
高エネルギー体圧縮確認。
ジル・ロベルトと名乗った頭部に二対の巨大な捻じれた角が出現した。立体ホログラムに似た青白く、不思議と眩しくない半透明な角だった。
「ほらぁ、あるだろう?」
「ちょっと、静電気ひどいからやめてくれない?」
ナミの髪の毛が大変な状態になっていた。そして、バチンッと青白い火花が二人の間に目に見える状態で起きていた。
「おっと? ハハッすまないすまない」
ジル・ロベルトが角を無くすと青白い火花は消えたが、ナミの静電気は収まらず髪の毛は広がったままだった。
「ないわぁー」
ナミはかなり機嫌が悪くなっており、どうしたものかと思った。ジル・ロベルトは悪いと思ってない表情をしており、何しに近寄ってきたのかわからなかった。あたりの通行人や車なども、気が付いたら遠巻きで様子を伺うように離れており、何か様子がおかしく感じた。
ナビ、こいつの魔力量は?
測定範囲外、推定ドラゴン以上。
なるほど、こいつは領主とかそういうレベルの強さを持つ存在と言うことか・・・。
「なぁ、お前何者なんだ?」
「ん~、ああ、オレは魔人族でちょっと偉い立場なんだよ。鬼人族が多い領地の都市で二人のうわさ聞いてさぁ、それでちょっと確かめたいと思ったわけよ。やっぱ自分で確かめないとダメじゃん? そう思わない?」
偉い人、という割には服装がみすぼらしかった。街中で見かける中でも一番みすぼらしく見え、偉いさというのだったらさっきの魔力量でしかわからない。
「別の種族が違う都市に物見遊山で来ちゃいけないのか?」
「んん~? いや別にそんなこと関係ないでしょ、いやさ・・・レンツくん、君さちょっと付き合ってよ」
ジル・ロベルトの眼が青白く変わり、電流が瞳孔に向かって流れていた。
「魔人の中で偉いのなら、デート中じゃなくてアポイントメントっていうお暇な時間に会いたいから時間調整してくれませんか? ってできないのかしら? それとも静電気で頭イかれてるのかしら?」
高エネルギー体圧縮確認。
バチンッ! という音がなったと思えば、眼の前が真っ白になった。
色調、光調整。視覚を通常状態に戻します。
聴覚デバイス損傷、復旧完了、通常状態に戻します。
第一級、戦闘態勢に移行。体感時間遅延剤投与。
体感時間を遅延し、判断能力は据え置きにする薬剤が投与され時間間隔が伸びていった。それがフラッシュグレネードと似たようなものだと気づいた。ナミは元から視力がないので、聴覚へ影響され、その場で崩れ落ちていた。幸いにも卵型の武具が頭から落ちないように支えられており、優秀な武具だと思った。
俺は命には別条がないことを確認し、即座にレーザービームソードを引き抜き胴体部分に向かって突きと同時にレーザービームを出力した。
「へぇ、やるじゃん」
胴体部分が貫かれたまま、言葉をしゃべる相手だった。こいつは人類敵の異電子なみの生命力がありそうだなと感じた。刃型のレーザービームソードを指向性拡散レーザービームに切り替え、ハチの巣にすることにした。異電子のような人類敵はどこかしら核があり、それに傷がつくのを恐れ距離をとる。このジル・ロベルトが同じような生命体かはわからないが、さすがに全身穴だらけは嫌がるだろうと思った。
本当は大出力状態にして、塵も残さずレーザービームソードで焼き切りたいが、ナミが近くにいるため余波によってダメージを負ってしまう可能性がある。
「いやぁ、二撃目はさすがに食らいたくないかなぁ」
一瞬にして、距離を離された。
ナビ、解析。
現段階の未確定解析・・・雷の声質と類似。
くそ、光速エネルギー体型かよ・・・!
俺は心の中で舌打ちをした、強襲型のサイボーグでさえ戦術リンクで光速ネットワークで対応し、別部隊と連携してやっと倒せるような相手だった。それを類似してるとナビが判断してるとなると、どう転んでも今の状態では勝てない。
部分解析完了。高エネルギー体の魔力吸収可能。
ん?
「今後は、オレの番」
ジル・ロベルトが手をこちらにかざした瞬間、眼の前に真っ白な電流が幾重にもなって襲ってきた。光速に近い攻撃が繰り出され、避けることが不可能だと直感した。何度も死線と隣り合わせでよく今まで生きてきたし、平和な時間をひと時でも味わえたなら、悪くないかと頭によぎった。
お読みいただき、ありがとうございます。
【ポイント評価】【いいね】【ブックマーク】【感想】などなど、よければお好きなものをお一つでも!
ご支援いただけますと大変嬉しいです!
ご協力のほど何卒よろしくお願いいたします!




