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ドラゴンのウェルダンテステーシがやけに静かだなと思って、そういえば俺がうるさいと叫び黙らせたことを思い出した。それから口を閉じ、ただ呆然と俺たちがどうするのか待っていたという感じだった。
「えーっと・・・ウェ・・・なんだっけ?」
「・・・ウェルダンテステーシだよ」
「そうそう、ウェルダンテステーシが私たちの車を壊したじゃない? あれどうしてくれるの?」
ナミは話し合いというよりも問い詰める方向にするつもりだった。俺は事の成り行きを見守ることにした、理由はナミがなんか不機嫌になっているからだ。たぶん、車を壊されたことへの怒りがぶり返しているのだろうと思う。
俺は率直に気に入っていた分、悲しさの方が勝っていた。
「ど、どうとは・・・?」
「巨大生物じゃあるまいし、誰の所有物を勝手に破壊しておいて、どうにもしませんってあんたそれでもドラゴンなわけ?」
「い、いや我は――」
「それとも何? 口を開けばブレスを制御できずに出ちゃうから不可抗力だって言いたいの?」
ナミが巨大なドラゴンに対して引かないで問い詰めている姿はなかなか凛々しいなと思った。一方ドラゴンは巨体に似合わず、最初に会ったような威風堂々としたような雰囲気はなくなっていた。
「なんとか言ったらどうなの?」
「・・・」
ちらちらとウェルダンテステーシが俺の方を見ているので、俺に助けを求めている風に感じた。このやり取りが続くとなると自分も居心地が悪いのもある。
「お前は俺たちに倒された。倒されたからには俺たちの配下に入ることになる。そして、まずは壊した車の代わりに働いてもらう。いいな?」
これで断られたらナミが怒り出すだろうなと思いつつ、相手が何かしらこれで反応があればいいかという思いで言った。
「・・・わかりました」
ナミが俺の方を見て、にんまりとし、俺はナミの機嫌が治ってよかったと思った。
「とりあえず、この斬った角はどうするか・・・これって斬ったところにくっつけたらくっついたりするのか?」
「いえ、くっつきません・・・」
だよなぁ・・・言ってみて確認してみた。
「とりあえず、都市の人にあげたら? ここに落ちていてもただのゴミになるでしょ」
「まあ、確かに使い道なんてなさそうだしな」
ウェルダンテステーシがショックを受けたような顔をした気がしたが、ドラゴンの表情はあまりわからないので気のせいだろう。
「ナミ、角をサイキックでオーガたちの方に運んでくれるか、俺はこいつに今後の事を説明するよ」
「わかったわ、よろしくね」
ナミはサイキックで角を持ち上げ、都市の門の方へと向かっていった。俺はウェルダンテステーシが自分の角が持っていかれるのを眺めているのを見ているところに話しかけた。
「感傷に浸ってるところ悪いが、今度の事について説明しておく」
ドラゴンのウェルダンテステーシはこちらの方を見て、瞬きをした。
「俺たちの移動手段である車、あれのことだってわかるよな? お前に壊されたからお前が車の代わりになる。普段、あの中に荷物を入れたりしていたから荷物も持ってもらう事になる。ここまではいいな?」
「ああ、問題ない。敗者は勝者の言う事を聞く」
俺は角が無くなったことで、ウェルダンテステーシの戦闘能力は変わったのかという疑問を感じた。巨大生物に近い大きさを持ち、空を飛べるのであれば、戦闘能力は変わらないのではないかと考えた。
否定、角が無くなったことにより保有魔力の低下に伴い、魔力による肉体教化などが劣化しています。
ナビが優秀な回答をくれた。なるほど・・・。
「あの車くらいの大きさの物を持ちながら飛行し、移動はどのくらい可能だ?」
「今の我では、寝ずに一週間は可能だ」
「わかった、じゃあ、準備とかできたら声をかけるからここら辺にいてくれ」
「わかった」
俺は都市の方へ、ナミがオーガたちと話している所に向かった。
「あの壊れた車がある場所ってルシファー卿の大都市ならあるわけね。大都市はどこにあるの?」
ナミはあの車を手に入れられる場所について情報収集をしていた。俺はマガツにコンテナのようなものがないか聴くことにした。
「マガツ、持ち運び可能なあの車くらいの倉庫みたいなものはないか? あのドラゴンに運ばせるのが目的だ」
「それなら耐久性があるのがいくつかありますので、見繕いましょう」
「ありがとう、助かる」
「いえいえ、いろんなことをレンツ殿から教えられたことの感謝と思っていただければ」
俺はナミの方に行き、情報を連携すると次の行き先についてナミから言われ、決まったのだった。
「大都市ルシファーを目指すわ、都会だからいろいろ揃ってるって」
「大都市か・・・」
俺はドラゴンの方を見て、はたしてあのサイズの種族も生活してる場所かどうか疑問に思った。
「都市の区画ごとに種族の大きさとか力関係とか色々あるみたいよ。実際行ってみればわかるでしょ」
「そうだな」
疑問に思ったりすることがあるが、実際に確かめればわかる。俺はナミに言われ前向きに楽しもうと思った。
思いたかった。
視界の隅で斬ったドラゴンの角を俺を模した銅像の手に持たせよう、頭につけるべきだと争ってるオーガたちを意識しないようにした。
ストレス感知、精神安定剤を投与します。
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