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 ミディアンデステーシの襲撃から数日、俺たちは都市から去ることにした。銅像は急ピッチで建造され、去る前に完成させていた。ミディアンステーシの引き取りはまだ時間がかかるとのことで、広場の地面に張り付けられたままになっていた。ブレスなど危険性があるため、口は常時鎖で閉じられていた。

 

「もう更に学べなくなると思うと、寂しく思います」

 

 マガツが代表して、俺とナミに悲しみを込めて言ってきた。

 

「これからは学び反省し、改善して、新しい事も取り入れていけばオーガたちにとって最適化される。健闘を祈る」

 

 ありきたりな定型文のようなことを伝え、俺は急いで車に乗り込もうとした。すると大きな風と共に、ドラゴンが上空に現れた。吹き荒れる風に土煙が舞い、目をしかめさせた。

 

「我はウェルダンテステーシ、オーガたちよ。降伏し、平伏せよ」

 

 突然の降伏せよの発言で俺はどうやってこの都市から去ろうか、という考えが頭に浮かんだ。無視してこの都市から去ろうにも目立ち過ぎるのもあり、上空からブレスでも打ち込まれる可能性はないとも言えない。俺はマガツの方を見ると、もうすでにどうやって倒そうかという顔つきになっている事を確認した。

 

 マガツは俺の視線に気づくと頷き、ドラゴンから見えない位置からハンドサインで周りに作戦を伝えていた。

 

 俺はナミの方を見ると、土煙で服と髪が汚れたのか、身体の埃を払っていた。若干の不機嫌さがにじみ出ており、少し不安がよぎった。

 

「降伏し、平伏せよ。二度とは言わんぞ!」

 

 ドラゴンの口元からブレスの予兆ともいえる火花のようなものが噴き出しており、相当お怒りな状態だというのがわかった。そして、その予兆がまさか警告として、発射されるものだと俺は思いもしなかった。

 こともあろうか俺たちの車に向けて発射され、直撃ではなく車の手前の位置の地面に着弾し、車はその反動で吹き飛んでいった。ドゴンッという音が鳴り、空を飛んだと思うとガンッと地面に叩きつけられた。車から火が上がり、ボンッという壮大な音と共に四散した。

 

 俺は無意識にナミを庇い、車に当たらないようにした。

 

 そして、四散した破片がこちらに飛んでこないか確認しつつ、立ち上がりドラゴンの方を見た。俺はナミの方を見て、気遣うことにした。

 

「大丈夫か?」

 

 ナミはドラゴンの方を見て、無表情になっていた。そして、ぞわっとする感覚が身体全身を通っていった。それがドラゴンに向けられての事だと瞬時にわかり、ドラゴンの方を向いた。

 

「伏せ」

 

 ナミが一言だけ、ぼそりとつぶやいた後、浮遊してるドラゴンが地面にはたき落とされ、めり込んでいた。そして、ドラゴンは何か喋ろうと口を開けようとするが、ガチンッ! と口は無理やりサイキックで閉じられた。かみ合わせが悪かったのか、ドラゴンの口からは血が出ていた。

 

 空気がビリビリしだし、必死にドラゴンが抗おうしているがナミのサイキックで抑えつけられているため、伏せをさせられてる状態から身動きがほとんど取れない状態になっていた。

 そして、骨が折れるような音がドラゴンから聞こえてきた。ドラゴンの大きさからして、ドラゴンの骨が折れるというのは相当な音になる。最初、ゴバキィッという音が何の音かわからなかった、ドラゴンの口をふさいでるのもあり、抑えつけているのもあってナミが骨を折っているとは思わなかった。

 

「チッ、レンツ・・・あのドラゴンの首を落としてきて」

 

「えっ」

 

「骨を折っても、あれは再生能力が高いのかすぐに回復する。ねじ切ろうにも固すぎて無理。心臓も強すぎ」

 

 俺はマガツの方を見るが、首をフルフルと横に振っていた。これは殺してしまってもいいのか?

 

「わかった、一応最後の言葉くらいは聞かせてくれよ」

 

「わかったわ、手短にね」

 

 俺はレーザービームソードを取り出して、刃を出力させずにドラゴンの近くまで移動した。ナミの方を見て、アイコンタクトをすると少しだけドラゴンの口元が弱められた。俺はここを一刀両断する事が可能である事を示すため、レーザービームソードの刃をドラゴンの首を切断可能な出力で形成させた。

 

 ヴィン! という音と共にレーザービームソードの持ち手に重力がかかる。レーザービームソードは反動がない光の剣ではなく、放射口から超圧出されたエネルギー刃を出し続けているものなので相応の筋力と訓練が必要になる兵器だ。

 

「言い残したい事はあるか?」

 

 俺は最後の言葉があるかドラゴンに聞いた。可能なら、ここで謝罪でもしてくれれば事なきを・・・と思ったりしてしまった。前の世界では考えられないことだったことに、自分自身すこし驚いてしまった。今までだったら即座にとどめを刺していたからだ。

 

「強者に屠られるのは誇り」

 

「そうか」

 

 俺はレーザービームソードをそのまま首に振り下ろさず、立派な角を斬った。



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