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 トレーニングジムの数は思った以上に多くあったが、全員で連携し襲ってくるか、最初は一対一だが敵わないと武器や数でかかってくるか、とわかりやすかった。そのトレーニングジムを制圧するとリーダーだけ引き連れて次のジムとはしごしていった。

 

 さすがに全員引きずりながらの移動はできないので、歩けるくらいに回復したゴブリンに背負わせついてこさせた。途中で逃走を図ろうとしたゴブリンがいたので、ゴブリンを投げつけ片足の骨をヒビいれておき、投げつけたゴブリンと仲良くついてくるように説得した。

 

 その光景を目にした元ジムリーダーのゴブリンたちは、震えていたが気にしない事にした。

 

 トレーニングジムを各所、制圧していき、次の場所に向かおうとしたときに、今までと違うゴブリンが待ち構えていた。

 

「お前か? ここらを荒らしている角なしのガキっていうのは? ふん、見た所貧相なマッスルだ」

 

「あいつは誰なんだ?」

 

 俺はついてきてるゴブリンに問いかけた。

 

「あの方はこの都市の四天王の一人、パンチングのゴブソンです」

 

 四天王と呼ばれるだけあって、筋肉は今までのジムリーダーのゴブリンと違い特化された筋肉に洗練されていた。拳で戦うのに特化し、素早い攻撃に重い一撃を載せられるように、腰からつま先にかけての筋肉にしなりがあるように見えた。上半身の鍛え上げられた筋肉は攻防一体の厚さがあるものの、きめ細かな筋肉の盛り上がりは意識しないと鍛えることができない状態だった。

 

 俺はこの筋肉のつき方から、相手が得意とする構えをとった。

 

「ほぅ・・・お前わかってるやつか・・・面白い」

 

 やはり、こいつは拳闘型だった。

 

 一気に相手は距離をつめ、ジャブを繰り出した。テンポよく繰り出し的確に俺の目の位置を狙ってきていた。スウェイ、上半身を紙一重でのけ反らし、俺は避けつつ、ステップで相手の側面に移動した。

 相手の挨拶には、こちらも挨拶で返すのがいいと思い、同じくジャブで相手が狙ってきた場所にお返しした。繰り出したジャブは最初の一発は軽く当たったものの、二発目以降はうまく避け、距離を開けた。

 

「君、やるねぇ。名前を聞き忘れたな・・・俺はゴブソン、マイク・ゴブソンだ」

 

「俺はレンツ、レンツ・イツ・オータム」

 

 お互い名乗り合った後に、頷き合った。そして、渾身のストレートパンチを互いに放った。ゴブソンと俺の体格差はかなりあり、腕のリーチも相手が長く、全体的な筋肉量も上であるため、質量がそもそも違う。しかし、筋肉の差だけではなく、技の差が勝敗を決した。

 相手の右ストレートは的確に俺の顔をめがけて繰り出されたが、頬をかすめ、俺の左ストレートが相手の顎先を的確に撃ち抜いた。相手はニヤッと笑い、白目を向いてそのまま倒れた。

 

 俺は握った拳を空に掲げ、勝鬨を上げた。

 

 倒れたゴブソンをついてきてるゴブリンに背負わせ、次のトレーニングジムへ向かって制圧を続けていった。同じように四天王の一人と名乗る二人目が現れたが、かぎ爪とフェイスガードをつけたゴブログというのと遭遇した。かぎ爪をへし折り、フェイスガードを粉砕し、そんなものに頼るなとわからせた。

 

 そして、この都市で一番の筋肉を持つとされるゴブリンと出会う事になった。そいつは眼帯をし、身体中に傷の跡があるが、それに負けない筋肉を身にまとっていた。どの部位も突出して盛り上がってるわけではなく、全体の筋肉のバランスが完璧だった。

 体格に対しての筋肉の黄金比を理解し、自身の戦い方に対して徹底的にチューニングされた筋肉だと一目でわかった。また筋肉の質も見た目から肌身にひしひしと感じ、筋肉から湯気のようなオーラが出ている。

 

「我が名は、四天王の一人・・・ヴィクター・ゴブット! 貴様の蛮行を終わらせてくれる!」

 

「俺はレンツ・イツ・オータム! お前を倒す者だ!」

 

 お互い名乗り終わると、ヴィクター・ゴブットは両手を腰の位置に持っていき、拳を強く握った。俺はその不思議な構えが何を意味するのかわからなかった。ただまっすぐに俺に向かってその場で両手で拳を勢いよく突き出した。

 

「くっ」

 

 筋肉と魔力を融合させた技だった。筋肉力を最大に高め、魔力を混ぜ合わせそれを飛ばしてきた。紙一重で避けたと思ったが右肩に当たってしまった。まるで砲弾を受けたように重い一撃で、いい勝負になりそうだと痛みが教えてくれた。

 

「まさか、避けられるとはな」

 

「いや当たったさ」

 

「倒すつもりの一撃だったんだがな」

 

「もう当たらないさ」

 

「それはどうかな?」

 

 ヴィクター・ゴブットはさっきと同じように筋肉と魔力を融合させた砲弾を放ってきた。俺は気合弾と呼ぶ事にした、同じ強襲型のサイボーグの中で、全身ではなく部分サイボーグの仲間が似たような技を使っていたのを思い出した。根性と気合によって身体の波動を表に出し、相手にぶつけ爆発させる波動弾だと言っていた。

 

 この世界のあのゴブリンはどちらかというと気を合わせて放っているので気合弾だ。

 

 その気合弾が連射され、まるで近寄ることができなかった。そして、じょじょにその気合弾が俺の身体をかするようになってきていた。

 

「どうしたぁ!」

 

 この戦いの中で相手は成長していっていると感じた。俺は避け続けて相手の体力の限界を待つのではなく、近寄って戦ってみたいと思うようになった。

 

 気合弾を相手に近寄りながら避け、距離的優位を無くした。まだ相手のリーチがあるが、この距離なら気合弾を放つメリットはない。俺は相手がどんな技を見せてくれるのか楽しみであり、この世界に来て感じた事がない胸の高まりだった。

 

「あまいわ!!」

 

 なんとヴィクター・ゴブットはさらに距離を詰め、蛇のようにしならせた左腕から高速のジャブを放ってきた。一発一発が重い一撃だとわかる風切り音が耳元を鳴り響いた。ビュンビュンという音が耳障りだけど楽しかった。

 

「ふんっ!」

 

 ジャブになれきった所に右の重い打ち下ろしパンチが左鎖骨付近めがけて降ろされた。俺は即座に相手の脇腹にもぐりこむように身体を寄せ、左肩部分で脇腹に当て、ヒットの感触を確かめ、すぐさま左ひじを突き出した。

 

 ヴィクター・ゴブットは耐え切れず、後ろによろけるもののすぐさまファイティングポーズをとった。

 

「やるな」

 

「お前もな」



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