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The end of the world online ~不遇職・アイテムマスター戦記~  作者: 三十六計
第六章_タマモ召喚!

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97_プロローグ

 ―――最近外が騒がしい

 

 狭苦しい空間に閉じ込められてどのくらいの年月が経ったのだろうか? 正確には分からないが百年単位で時が流れているに違いない。


 当初は、酒宴に招かれ騙し討ちに遭うという、一時の油断によってこの様なところに封じ込められた自身の不覚を呪いつつ、封じた術者や自身を謀った奴等を八つ裂きにすることをただただ考えていたものの、やがてそれにも飽き、考えることすら面倒になり、最近は過ぎゆく時の大半を眠って過すことが多くなっていた。


 外の様子も知ろうと思えば知ることはできる。だが、それも化け物らしきものが発する呻き声だけが聞こえる、退屈で不愉快なものでしかない。永遠の牢獄ともいえる狭い空間にいつまでも閉じ込められるのであれば、いっそのこと、消えて無くなることはできないだろうか……。目を覚ましているときはそんなことが頭をよぎるようになっていた。


 しかし、そんな憂鬱に支配された日々は、最近になり大きな変化があった。

自身を支配していた化け物が討たれ、思念の所有が移ったのだ。


 ―――新しい所有者は非常に興味深い


 生霊は、それなりの腕に覚えがある者であったとしても、簡単に倒せるほど()()ではない。手強い化け物が退治されたことだけでも驚きだったが、更にそれをやってのけたのが低レベルでかつ最貧弱職業の「あの」アイテムマスターだったことは俄かに信じられなかった。


 眠っていたため戦闘の経緯を把握していなかった当初は、如何にして生霊に勝ち得たのだろうかと大いに疑問に感じたのだが、その後の戦い方等を観察して、彼の者の基礎レベルだけでは推し量れない実力を知り、妙に納得してしまった。


 自分より強大な相手を向こうに回しながらも、手持ちの装備品やアイテム、そして並外れた戦闘技術を駆使して互角以上に渡り合ってみせる戦闘のかけ引きは、今まで見たことが無い。その戦いぶりから彼の者なら自身の封印を解き放ってくれるかもしれない、と淡い期待を抱くに至ったのも決して荒唐無稽なことでは無いだろう。


 幸い所有者からも自身の思念に興味を持ち、召喚の道を探っている様子が伝わってきた。これは外の世界に戻れる千載一遇の好機が訪れたと言っても良い。ただ……。


 ―――外の世界に出たら何がしたいのだろうか?


 もしも、外の世界に再び出ることができたら、何百年も閉じ込められた鬱屈とした気分を晴らすため、破壊と殺戮の衝動に駆られる本能に身を任せ、王都を蹂躙し尽くすのも悪くはない。


 ―――だが、彼の者は何を望む?


 自身ぐらいの召喚獣になると召喚者の命令の拘束力は皆無に等しい。命じられたことが気に入らなければ拒否だってできるし、もっと言えば召喚者の命を奪うことだって簡単にできる。

 

 ―――だが……


 彼の者は召喚獣に何を望むのだろうか? 自身が先ほど考えていたようなことを命ずるのであればそれに乗るのも一興かもしれないが、彼の者の性格からそれはあり得ない。意志の疎通はできないものの、一緒にいる時間が長かったこともあり行動形態や信条はなんとなく掴めるようになっている。帝国の侵略に断固として対抗したり、住人の厄介事の解決に奔走したり、苦労も厭わず困難に立ち向かっていく姿を幾度も見てきたからそれは誰よりも理解しているつもりだ。


 繰り返しになるが彼の者はそのようなことは絶対に命じまい。そのような者だからこそ、自身の解放にも真摯に向き合ってくれると信じられるのだ。

  

 ―――そうは言っても最近妾のことを忘れておらぬか?


 先ほども述べたとおり思念の所有が移って以降、彼の者とは長い時間を共有してきた。それこそ、裁縫師の女や筋肉ダルマの大工、それに非常に彼の者になれなれしく接する、サブジョブ漁師の魔法使いの不愉快な泥棒猫など足下に及ばないくらいだと自負している。


 自身の召喚に必要になる「契約の器++」の入手が困難なのは重々承知している(「契約の器+」の販売価格が七十万ルピアというのは高すぎやしないか? 彼の者の落胆ぶりは、それはもう気の毒で見ていられなかった)。苦労をかけていることは心苦しいと思うものの、戦争イベントや他のことに気を取られて、一向に召喚の兆しが見えないのは少々焦らしすぎではないかと一方で感じることがある。


 ―――妾がおれば戦闘だって楽になるのに……


 今まで散々手を焼いてきた戦闘だって、自身がその場にいたら、そもそも苦戦なんてしなかったはずだ。それに、基礎レベルが30を過ぎてもサブジョブを選択しようともしないのもいただけない。サモナーギルド職員の女も事ある度に奨めているようだが、早いところサモナーをサブジョブに選択して上位の召喚スキルを習得しなければ自身のような高位召喚獣を使いこなすこともできまい。未来の(あるじ)は少しのんびりし過ぎだ。


 ―――本当に困った主じゃ。本当に……


 自身が召喚された暁には、我が主に色々と申し入れをしなければならないだろう。そのようなことを考え、やきもきしていたら不意に眠気に誘われる。


 今まで眠りは変えようが無い現実から一時的に逃れるための手段だった。しかし、最近は、眠りから覚めるたび未来の主と会える日が近付いているのだと感じられ、その性質が前向きなものに大きく変化しているのは自分自身でも気付いていた。


 ―――主、タマモは早く、主にお会いしとうございます。


 待ちきれない未来の展望を思い描きつつ、タマモは再び深い眠りに落ちていった。



 長らくお待たせして申し訳ございませんが、ようやく第六章掲載の目途がたちましたので連載を再開させていただきます。今章は現在のところ30~33話くらいを予定しています。仕上げに少し時間をいただきたいので、掲載は火、木、土の各曜日の午前1時に行います(万一指定する日に掲載が行えない場合は翌日以降に持ち越します)。

 第六章は第一章でアヤセが獲得し、前章の第五章で具体的な話が出てきた「タマモの思念」の召喚がテーマです。


 ちなみに、感想等も大歓迎です。創作の励みや刺激になりますので、どうぞお気軽にお寄せくださいませ。


 また、カクヨムでも本作の連載を始めました。向こうは第一章から毎日更新で一話ずつ投稿していますので連載の進捗はこちらの方が早いです(内容も投稿時に気付いた句読点やてにおはを直す程度でストーリーが変わったりすることは一切ありません)。


 それでは、最後までお付き合いのほど、よろしくお願いいたします。

 

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