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The end of the world online ~不遇職・アイテムマスター戦記~  作者: 三十六計
第五章_伯爵の遺児

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90_今後の取引

 ここは王都東地区の港湾部に店舗を構える、カフェ「Au café de la port」、通称「港のカフェ」。入口のドアには「定休日」の札が掲げられているが、店の外に甘い匂いが漂ってくる。

 

 「クッキー、焼き上がりました! ポテンシャルお願いします!」

 「はい、了解です!」


 ジュイエが焼き上げたクッキーに手際よくポテンシャルを付与する。

アヤセは、ケピ帽を三角巾に、プリスをエプロンに着替えてジュイエの仕込みを手伝っていた。


 「ふぅ、取り敢えずこのくらいでいいでしょう。先日のお願いからそれほど経っていないのに連続でお願いして済みません。その上、お手伝いまでしてくださいまして……」

 「料理は手伝いをする者がいれば、品質と価値が上がると聞きました。知り合いからも『料理の上達のコツは毎日するのがいい』と教えてもらいましたので、寧ろ機会を与えてくださってありがたいと感じています」

 「確かに効果も目に見えて分かりますね。報酬はお手伝いくださいました分も上乗せさせていただきます」

 「本当ですか? ありがとうございます。それにしても、これだけ作って二、三日分の量でしかないとは……。売れ行きは好調のようですね」

 「今後も『港のカフェ』を御贔屓に~!」

 「えっ!?」


 おそらく自身の物まねをしたであろう、ジュイエの唐突な口調にアヤセは面食らう。彼女はその反応を見て楽しそうに笑みを浮かべた。


 「ふふっ、最近ご来店くださるお客様は、先日の戦争イベントに参加したNPCの兵隊さんや、プレイヤーの方々が多いのですが、皆さん口を揃えて後方拠点で深緑色の服を着たプレイヤーが当店の洋菓子を振舞って先ほど言った文句で宣伝していたのを見聞きして来店したと仰っていました」

 「えーと、それは……」

 「アヤセさんのお陰で当店も多くのお客様に知っていただけました。本当にありがとうございます」

 「まぁ、洋菓子はバフが付く食料品の代用品として配った物ですし、元々ジュイエさんの腕も確かですから。しかし、それが宣伝になっていたら何よりです」

 「新鮮なフルーツも先日チーちゃんに教えてもらった、ポールさんの露店で安定して仕入れることができるようになりましたし、アヤセさんと契約して本当に、本当に良かったです。」

 「こちらこそ今日は場所までお借りしてしまい、申し訳ありません」

 「私も新作の反応もいち早く知りたいですし、今日は皆さんにお集まりいただいて良かったと思っています」


 そのような会話をしつつ、洋菓子を盛った皿とティーポットを手に二人は店内に戻る。そこにはマリーとホレイショ、それにテイムモンスター達にチーちゃんが待っていた。


 ジュイエはハーブティーを淹れ、アヤセは急かすラビちゃん達に足を叩かれながらテーブルと床に洋菓子が載った皿を並べる。

 

 「お待たせいたしました。皆様どうぞ出来たてをご賞味ください」

 「わぁ! どれも素敵なお菓子ですね!」

 「ああ、確かにな。でも、俺にも食えそうなものがあればいいが……」

 「このスコーンは甘くないから、ホレイショでも大丈夫なはずだ」

 「本当か? そいつはありがてぇぜ」

 「これはアヤセさんのアイデアで、今回初めて作った物なのですよ」

 「自分は甘い物好きなのですが、現実世界だと体質のせいか一口食べただけで気分が悪くなって少量しか食べることができません。だから、色々な理由で甘いものが食べられない人でも他に楽しめる品が無いかと思って、ジュイエさんに提案させていただきました」

 「このスコーン、ラビちゃん達も気に入ったみたいですよ。ジュイエさんのお菓子は美味しくて、ポテンシャルでバフも付くから毎日でもお店に通いたくなっちゃいます」

 「マリーさん、お褒めくださいまして、ありがとうございます。もしかしたら、これは当店の看板メニューの一つになるかもしれませんね」


 ジュイエはテイムモンスター達が争うように洋菓子を食べる姿を見てにっこりする。自身の作品が皆に認められつつあることを嬉しく感じているのが満足げな笑顔からよく分かった。


 「ところで、ノエル嬢はまだ来ないのか?」

 「もう約束の時間になるはずだが。……まぁ、先にいただいてしまおうか。この場合、遅刻者に対するペナルティになるし」

 

 アヤセとチーちゃんはテーブルに置かれたフルーツタルトに目を光らせる。それはまるで猛禽類が獲物を見定めたような目をしていた。


 「そ、そうだな。これは遅れちまった奴は試食無しになっても恨めねぇぜ」

 「あの、ホレイショさん。他にもお客様がお出でになるのでしょうか?」

 「……」


 ジュイエは、ホレイショからここにいない人物の名前が出たことに対し、その素性を尋ねる。一方でマリーは不機嫌な様子で黙り込んだ。


 「ああ、ノエルってのは、相棒の後を付いて回っている第四次組の魔法使いでサブジョブが漁師のプレイヤーだ」

 「漁師? その方はもしかしたら近くの波止場で釣りをされているプレイヤーの方でしょうか? お客様同士で話されているのを以前耳にしたことがあります」

 「はい、マリーさんの作品の一つである『純白のフリルブラウス』のポテンシャルで釣果を上げているプレイヤーです」

 「ちっと『変わった面』もあるが、まぁ、明るくていい娘だ」

 「『変わった面』? それはどの様な点でしょうか?」

「ああ、驚いたことにノエル嬢は、第四次組なのに基礎レベルが50もあるんだ」

 「えっ、50!?」

 

 第四次販売は現実世界の時間でおおよそ二週間前だったはずで、僅かな期間でここにいる全員(ジュイエは第二次組で基礎レベルは37)はもとより、王国内で上から数えた方が早い基礎レベルに達するのは常識では考えられない。ジュイエがホレイショの言葉に耳を疑うのも無理も無いことだった。


 「彼女が短期間でどうやってレベリングをしていたのか……。その秘密を本人に聞いたらあっさり教えてくれました」

 「そ、それは何でしょうか?」

 

 話に引き込まれ、秘密を尋ねるジュイエ。その問いかけに対しホレイショが言葉を引き取って種明かしをする。


 「ま、答えは単純で、釣りをしていただけだ」

 「えっ? 釣りを?」

 「御存知のとおり、経験値は生産活動等でも入りますが、釣りでも例えば、鰯1、鯵2.5、鯖3といったように釣り上げた魚に応じて経験値が入ります。ノエルは『純白のフリルブラウス』のポテンシャルをフル活用して主に青魚を釣り上げて経験値を稼いでいたのです」

 「で、でも、釣りで獲得できる経験値は戦闘よりも格段に少ないはずです。それで基礎レベルが50にもなるのですか?」

 「それだけ、ブラウスのポテンシャル『光り物の加護』の効果が破格だということです。彼女はおそらく現実世界で同じことをしたら、生態系を壊滅させるくらいの魚を今まで釣り上げているはずです」

 「この前一緒に釣りをした際に観察してみたが、チヌのような経験値ががっぽり入る青魚以外の魚も釣ったり、一度に複数匹釣れるスキルを発動していたりと意外に効率的な釣り方をしていたぜ」

 「ちなみに、チヌとは黒鯛のことで現実世界でも釣るのが難しい魚です。運営スタッフの分担のせいでしょうか、鳥や野菜や果物は実際の種類をもじった名前がついているのに、魚は現実世界と同じ名前がついているのですよね」

 「す、凄いです。そのようなやり方は私には到底真似できそうにありません」

 

 ジュイエは、ノエルのあまりにも突飛なレベリングの方法に驚嘆する。一方、マリーは不機嫌そうな態度を変えず黙り込んでいた。


 彼女が不機嫌になり、ふくれっ面をするのは、自らが仕立てた自信作「純白のフリルブラウス」をアヤセが他の女性にプレゼントしたことが理由である。

 ノエルの出会いは、アヤセ本人からも聞いており、ブラウスが彼女の手に渡った経緯も状況が状況だけに仕方がないことだということは分っている。ただ、理屈では理解できても、こうして目の前でアヤセがノエルのことを好意的に話す様子を見て、感情ではそれを受け入れられずにいた(最もブラウスは、マリーがクラン「ビースト・ワイルド」に納品し、それをアヤセが当該クランのクランマスターから譲り受けた経緯があり、所有は完全に移っているから、本人がそれをどう取り扱おうと自由であるが)。

 

 マリーが心の中で鬱屈とした気持ちと戦っているところで、店のドアがさっと開く。外の爽やかな風を運びながら店内に入ってきたのは、フリルブラウスを華麗に着こなしたエルフ種の若い女性だった。


 「こんにちは~。このお店にアヤセさんって来ていますかぁ?」

 「いらっしゃいませ。ノエルさんですね? 先ほど皆さんからお話を伺っていました」

 「えっ、ノエルのことを? どんな話をしていたんですか~?」

 「お前さんが第四次組の期待の星だってことさ」

 「ホレイショ先輩? もぉ~、他の人にノエルのこと言いふらすのは止めてくださいよ~! すっごく恥ずかしいんですから~」

 「……」


 ノエルとは初対面だったが、その人物像はマリーの思う通りだった。誰とでもすぐに打ち解けられる明るくて社交的な性格で、自然と話の輪の中心に収まるという、自身にはとても真似できない振る舞いをする様子にマリーは羨望を覚える。

 

 「……(あと、アヤセさんも胸が大きい女の人が好みなのかしら?)」

 

 ……自身に無くてノエルに有るもの。無い物ねだりだと分かりつつも、マリーは現状を嘆き、こっそりとため息をつくが、これは皆に悟られないように苦心した。


 「ああ、それでノエル、こちらがマリーさんだ。大先輩に御挨拶を」

 

 アヤセがマリーをノエルに紹介する声でマリーは憂鬱な物思いから我に返る。ノエルは紹介を受け、にっこりと笑いかけマリーに自己紹介をした。


 「マリー先輩初めまして、ノエルですぅ。マリー先輩が仕立てたブラウスのポテンシャルってステキですね!」

 「あ、ええ、ありがとうございます……」

 「先輩から聞きましたけど、先輩の装備品、深緑装備って言うのですか? これもマリー先輩が仕立てたのですよね?」

 「ええ、……まぁ、そうですけど」

 「じゃあ、お礼を言わないといけません~! 深緑装備を装備した先輩がノエルのピンチを助けてくれたのですから、ノエルが助かったのはそれを仕立てたマリー先輩のお陰でもあるんです~。ありがとうございます!」

 「アイテムマスターは装備品が命ですからね。マリーさん、ありがとうございます」

 「そんな、アヤセさんまで……。でも、話は前もって聞いていましたけど、ノエルさんが無事で良かったです」


 アヤセにくっついて回るノエルは、マリーにとって後々ライバルとなる目の上のたんこぶともいえる存在である。しかし、こうして面と向かって、裏表を感じさせてない言葉で自身の作品を評価してくれるとは思ってもみなかった。


 その後、ノエルとジュイエがお互いに挨拶と自己紹介を済ませ、各々が着席してテーブルに広げられた洋菓子やお茶に手をつけ始めたところでアヤセが本題を持ち出した。

 

 「今日、皆さんにお時間をいただいたのは、つい先日自分を取り巻く環境に大きな変化がありましたのでその報告をするためです。二点ほどお話させていただきたいので、少しだけ自分の話をお聞きください」


 アヤセは初めに、ダミアン老人とマルグリットとの『取引』の件を簡単に説明する。話のあいだアヤセ以外の者達は時折洋菓子やハーブティーに手をつけながら黙って耳を傾けた。


 「……以上が事の顛末です。以前から帝国に思うところがあるNPCと関わる機会は幾度かありましたが、まさか大物貴族の遺児達まで現れるとは思いもしませんでした」

 「しかし、『講和派』か。キングストン公国ではそんな政治的な話はなかったが、王国規模の国になると一枚岩とはいかないんだな」

 「利害関係や思想の相違等による対立は、どの組織でも起こり得ることだろう。問題は講和派に属する連中が、自らにとって好ましくない者を実力で排除する傾向にあることだ」


 講和派の暴力を伴う妨害があることに顔を曇らせたマリーが案じ顔でアヤセに尋ねる。


 「アヤセさんもその、講和派と呼ばれる人達に狙われているということでしょうか?」

 「試しに検知を行っていますが、不審な敵マーカーは現れていませんし、今の段階では明確なターゲットになっていないと思います。しかし、今後ヴァロア家所縁(ゆかり)の者達と関わりを深めると、いずれはそうなります」

 「だが、お前さんは手を引くつもりはねぇ、ってことだな?」

 「勿論だ。講和派の帝国への恭順方針は賛成できないし、ヴァロア家の生き残り達にもできる限りのことはしたい。だが、これにより相手の目が自分にも向き始め、そして関わりのある人たちにも監視の目が付いたり、何かしらの行動に出てきたりするかもしれないのでそれを懸念している」

 「うーん、それで今後は俺達も気を付けろと言うことか」

 「それだけではなく、実際にどの様な不利益を被るかも分からないので、自分としては現在取引をしているマリーさんとホレイショ、それにジュイエさんは、希望されるなら関係を見直した方が良いかもしれないと思っている。……お二人はいかがでしょうか? それに、ノエルも自分について回っていると面倒なことに巻き込まれることになるかもしれない」

 

 アヤセはホレイショだけでなくマリーとジュイエにも同じ問いを投げかける。最も、マリーとホレイショは造船の件で行動を共にしているので、取引を止めないだろうと本人は予想している。実質ジュイエ(とノエル)に意向を確認しているようなものだった。


 「私は今のままがいいです」

 「俺も変えるつもりはねぇぜ」

 「ノエルは一生先輩と添いとげますぅ~」

 「……」


 ノエルはともかく、マリーとホレイショはアヤセの見立て通りの回答だった。一方、ジュイエは結論を出すまで少しの間考え込んでいた。

 

 「あの、アヤセさん、講和派の人達は帝国とも繋がっているのでしょうか?」

 「それは、確かな証拠が無いのでそうだと言い切れませんが、状況から帝国と連絡を取り合っていると考えるのが自然だと思います」

 「そうですか……」


 そう言ってジュイエは再度考え込む。ここでこのようなことを聞いてくるのは、彼女も帝国に対して思うところがあるのかもしれない。ただし、本人にも事情があるだろうからこの場で聞くのは差し控えた方がいいだろう。


 「私も、帝国やそれに味方する人達とは上手にお付き合いできそうにありませんし、アヤセさんとの取引をここで止めるのも勿体ないと思っています。……取引、引き続きよろしくお願いいたします。」

 

 ジュイエは頭を下げつつ、今後もアヤセと取引を行っていく意思を示した。


 「ありがとうございます。ジュイエさんの洋菓子を失うことは自分のゲームをする意義が半分失われてしまうと思いますので、続けていただいて良かったです。こちらこそ面倒をおかけしますが引き続きよろしくお願いします」

 「ま、何も変わらずそのままってことか。最も情報源の話は俺達にとっても良い話になるかもしれねぇしな」

 「そうですよ。ホレイショさんの言われるとおり、私達の計画にとってもメリットがあると思います」

 「そう言ってもらえると有難いです。後ほど必要に応じて他の人達にもこの件を話しておこうと思います。特にベン場長には話しをしておきたいところです」

 「今度また樽をもらい受けに行く用事があるし、それは俺がしておこう」

 「それは助かる。それで二点目の件だが、これはホレイショに特に聞いてもらいたい事柄だ」


 アヤセは話題を変え、サモナーギルドでガブリエルから聞いたポートキングストンの困窮について説明する。ベン場長への伝言を快諾したホレイショであるが、アヤセの報告を聞き表情が曇り、話を全部聞き終えたあと、動揺を抑えるためかカップに注がれたハーブティーを一気に飲み干した。他の者達もホレイショを気遣い、カップがテーブルに置かれるとジュイエが黙って注ぎ直した。


 「ポートキングストンのヤバさは、俺が思っていた以上だったぜ……!」


 ホレイショは大きくため息をつき現状を嘆く。


 「ああ。特に小麦は、耕地が戦場になった上に、手入れする者がいなくて荒廃しているから、収穫もほとんど見込めないらしい。最悪の場合、ポートキングストンのみならず旧公国領全体が飢えることになる」

 「マジかよ……。あの国には、俺のNPCの知り合いも大勢住んでいるんだぞ」

 「残念ながら、個人レベルで打てる手はほとんど無い。だけど、知った以上は看過するつもりも無い」

 「同感だ。だがどうする? 打つ手が無いんだろ?」

 「確かにその通りだがまだ時間がある。それまでに何か考えなければならないが、いずれにしても先立つものが必要になるだろう」

 「カネか……」


 ホレイショは腕を組んで目を閉じ、考え込む。ポートキングストンの食料危機を食い止めるため資金が必要となれば、船材を買い集める活動もしばらく中止せざるを得ない。彼の態度は、一見すると、遅々として進まない計画がまた先延ばしになることを嘆いているように見受けられる。だが、アヤセは、ホレイショの決意は既に固まっていると分かっていた。


 「仕方がない。しばらく計画は中止だ。資金はできるだけプールしよう」


 自らの目標とNPCの命を秤にかけてどちらが大事か、簡単なようで過ちを犯しやすい決断を、ホレイショは自身の良心を見失わず迅速に下す。ホレイショの決断を聞きアヤセとマリーは目線を交わし頷き合った。


 「あの、皆さんの仰る『計画』とはどの様なものなのでしょうか?」

 「申し訳ありませんが、機密事項も含まれるので詳しくはお教えできません」

 「……失礼しました。差し出がましいことを伺ってしまいましたね」

 「先輩っ! ノエルも入れてくださ~い」

 「ノエルは口が軽そうだから遠慮させてもらう」

 

 希望を却下されてショックを受けるノエルを尻目に、アヤセは計画の内情を尋ねてきたジュイエの心情を推し量る。


 (ジュイエさんのような優秀な料理人は司厨長として適任なのだが、同志の選定は慎重に行うべきだよな。最も、彼女の帝国に思うところがありそうな素振りを見ると勧誘する機会があるかもしれない。まぁ、今後次第か)


 「先輩ひどいです~。じゃあ、キングストン公国の方をお願いしま~す」

 「うーん、そちらは特に秘密にしておくことはないから良いのだろうか?」

 「まぁ、いいんじゃねぇか? 俺も仲間が多い方が良いと思うぜ」

 「やった~! これで先輩といつでも一緒にいられますぅ~!」

 「えっ…!? じ、じゃあ、私もお願いします!」


 マリーが慌ててノエルの申し出に乗っかるように名乗りを上げる。それに対しノエルはマリーの横入りに気を悪くする様子も見せず、にっこりと笑顔を見せた。


 「マリー先輩も一緒でしたら楽しくなりそ~です。よろしくお願いしますね~」

 「断っておくが、これは遊びでは無い。何万というNPCの命がかかっていることを忘れないように」

 「はい、ごめんなさい~」

 「そうですね。これからが大変ですね」

 「……」


 マリーとノエルが今後について会話を交わす傍らでジュイエは黙り込んでいる。その様子は何かに迷っているようにも見える。ホレイショはアヤセへ問いかけるように視線を送るが、アヤセは二人の間だけで分かる程度の動きで首を振った。


(やはりジュイエさんは名乗りを上げないか。まぁ現時点では何をするかも決まっていないし、面倒な事に変わりは無いからな。しかし全く無関心という訳でもなさそうだ)


 いずれは彼女から何か話を聞けるかもしれない。ひとまずアヤセはそう思うに留めた。




お知らせ

第五章の話数を十一話から十二話に変更します。

引き続き御愛読のほどよろしくお願いいたします。


また、感想を随時受け付けております。今後の参考とさせていただきたいので、どの様なことでも構いませんのでお寄せくださいますと励みになります。こちらもよろしくお願いします。


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