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The end of the world online ~不遇職・アイテムマスター戦記~  作者: 三十六計
第四章_立ち込める戦雲

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59_【閑話】悪鬼の鎧

 「聞きましたか? 『樹氷回廊』九合目ボスの攻略法が判明しましたよ」


 集会場に入室した岩鉄にアイオスは声をかける。


 ここは、クラン「ブラックローズ・ヴァルキリー」の集会場。第一パーティーのリーダーを務める岩鉄は、副長のアイオスに呼び出され集会場にやって来た。静寂に包まれた集会場には、現在この二人しかおらず、お互いに距離をとって離れていても声が良く通る。

 

 「ああ、その話は先ほど聞いた。泥のポテンシャルか。単純だが誰もが納得する理由だ」

 「ええ、篝火を『点火』するのではなく、『燃やす』という表現が正しいのでしょうね。全く、キャンプファイヤーじゃあるまいし……。それにしても都合の良いアイテムがあったものです」


 アイオスは呆れたように、首を振りながらため息をつく。


 「クラン『アウトローズ☆エデン』の団員達が酒場で自慢げに話しているようですから、この攻略法はすぐにでも広まるでしょう。ただ、キーアイテムたる泥炭は、流通が全く無いので入手困難な状況です。ですので、ボス攻略も今後しばらくは膠着状態が続くでしょうね」

 「やはり決め手はポテンシャルだったか。お前は一考に値しないと言っていたが、やはり団長が言われたように、もっとこのことを検証すべきだったのではないのか?」

 「……っ!」

 

 アイオスはそれを聞き、これ以上この話を追及されるのも面白くないと感じ、急いで話題を逸らす。


 「それにしても、貴方とは一対一で満足に話すこともままならないですね。団長から付いて離れない忠実な番犬を引き離すのは、いつも難儀しますよ」


 アイオスの話し方は慇懃ではあるが、言葉尻から皮肉めいたものを感じさせる。岩鉄は、このアイオスの態度に苛立ちを隠さない。


 「団長だってログアウトはする。それより、早く用件を言え」

 「勿論です。私だって無駄話をするために時間を作っている訳ではありませんからね」


 アイオスは、内心ほくそ笑んで、話題の変換が上手くいったことを喜ぶ。そして同時に岩鉄の単純さを嘲り笑った。このように、クラン序列第二位と三位の立場である二人の仲は、共に団長のエルザを支える間柄でありながら良好とは程遠いものである。


 「私の伝手で入手した情報ですが、いよいよ帝国軍が東部侵攻に着手するようです。それに伴って、私達にも帝国軍司令部より参戦要請が下りました」


 アイオスは嬉々として自慢げに情報を岩鉄に披露する。しかし、岩鉄の態度はそれに反して冷ややかであった。


 「……団長をたぶらかして戦争か。貴様は何を企んでいる?」

 「たぶらかすだなんて失礼な。私は団長の決裁をいただき、戦争イベントへの参加を画策しているのですよ。それはいくら頭の固い貴方でも理解できるはずでは?」

 「……」


 しかめ面でフウーッと大きなため息をつく岩鉄。その様子にアイオスは満足げな表情を見せる。


 「それで本題に入りますが、帝国軍の攻撃目標は王国西部の都市ラタスです。小都市ですが、過去何度か帝国の侵攻を退けた強固な防御施設を備えている厄介な拠点です。帝国はブルボンヌ地方に駐留している第三軍の半数にあたる十個師団を動員して、この都市を攻囲するようです」

 「十個師団……。ゲーム上だと一個師団あたり一万程度だから十万か」

 「あくまで正規軍の数ですから、モンスターやプレイヤーの数を含めると動員兵力は十四、五万といったところでしょうか? ただ、この人数だとラタスを陥落させることは難しいでしょうね」

 「勝てない戦なのに、何故攻め込むのだ?」

 「ねらいはいくつかあるようですが、主な理由は、ポートキングストンにいる侵攻軍主力の第六軍が動けるようになるまでの時間稼ぎですね。第六軍は兵糧の補給で問題を抱えていて、進行計画に遅れが生じています。第三軍は時間の隙間を埋めるため、ラタスを包囲して注意を引き付けるとともに、あわよくば王都から王国軍を誘い出し、野戦で叩くことを目論んでいるようです」


 王国の動員総兵力は、二十五万人前後と推定されている。うち十万人程度が首都防衛のため、王都とその近郊に駐屯しているらしく、王都攻略の大きな障害になることが予想されていた。ラタスが包囲されれば、王都から救援のため援軍が派遣されるだろうから、これを迎撃して王国軍を一兵でも多く消耗させることが、動員された第三軍の主任務であった。


 「その話が仮に本当だとして、ラタスの陥落が望めないのなら、当然、宝物庫も破れないのだろう? 我々の目的が果たせないと聞いたら、団長は意味の無い要請を断れと言われるのではないか?」


 クラン「ブラックローズ・ヴァルキリー」が戦争イベントに参加するのは、各都市に秘匿されているレアアイテムを奪取することが目的あり、これが達成できないのであれば、そもそもイベントに参加する意味が無い。


 「ええ、おそらく団長はそう言われるでしょう。ですが、今回は帝国軍上層部たっての要請であることを忘れてはいけません。団長の御出馬までは及ばないと思いますが、それ相応の者を出して先方に誠意を見せる必要があるでしょう」

 「……それで俺を呼び出したのか?」

 「貴方にしては、察しが良い。余計なことを言わなくて済みましたね」


 アイオスは、薄ら笑いを浮かべて答える。


 「勿論、貴方だけでなく他のメンバーも参加させます。ただ、第一パーティーのメンバーは不要でしょう。サポート班から出す程度で事足りるはずです」

 「……」

 「おや、不満ですか?」


 不満を態度で表す岩鉄。彼はいくら序列が自身より上だからと言って、副長のアイオスに顎で使われる謂れはないし、帝国への誠意とやらは、今まで散々他の場面で見せつけてきており、今回の件にしたって、クランにメリットが無い以上は無理に参加する必要がないと考えていた。


 「貴方は、勘違いされていますが、これは私の命令ではありませんよ。先ほども言いましたが、決裁をされた団長の方針でもあるのです。そこはお忘れなきよう」

 「……」


 これを言われると岩鉄には、反論の余地は残されない。苦々しい思いを抱え、しぶしぶアイオスの求めに応じることになる。


 「……いいだろう。ラタスに行ってやる」

 「結構。当初からそのように黙って従ってくださいましたら、時間の無駄にならずに済んだのですが。よろしくお願いします。あ、あとこれは餞別という訳ではありませんが貴方にお貸しします。精々役立ててください」


 ======================

  【防具・外体】悪鬼の鎧 品質6 価値5 

   耐久値 400 重量70 物 35 魔 20

   装備条件:VIT85以上 

   特殊効果:・被ダメージ60%down

   ポテンシャル(1)…凶バーサク(STR70%UP、被ダメージ30%down、

             HP80%以下で狂化状態になる)

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 「これは、ブルボンヌ地方のエリゼの宝物庫から入手した逸品です。重量に装備条件、それにポテンシャルにやや難がありますが、貴方にうってつけでしょう。他の団員にも各都市で手に入れたアイテムを預けますので、併せて使い勝手を報告してくれると助かります」


 アイオスが貴重な装備品を無償で提供するなんてあり得ない。岩鉄は、アイオスの意図が自身を実験台として利用し、不具合をチェックすることだと見抜いていたが、装備品の性能は申し分ないことから、彼への不快感を腹に収め、黙って鎧を受け取ることにした。

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