18_プロローグ
アヤセから徹夜を控えるように言われていたが、マリーは、深夜になった今も手を休めず作業に没頭していた。
既に三匹のテイムモンスター達は、部屋の片隅に置かれたクッションの中で寝入っており、起こさないように部屋の明かりは必要最低限に抑えられている。少しだけ開けられた窓から舞い込んだ深夜の涼しい風は、熱と空気がこもった室内を駆け巡る。マリーは顔を吹き抜けた空気の流れに気付き、ここに至って針を動かす手を止める。
「もうこんな時間。少し休憩しようかしら」
満腹度も40%になったため夜食にすることにする。献立は、黒っぽくて固いパンとホットミルクだ。
「やっぱり白パンの方が美味しいわね。早くアヤセさんと一緒に白パンをもらいに行きたいなー」
固いパンを食べながらマリーは独り言をつぶやく。マリーは、アヤセとの約束が待ち遠しくて仕方がなかった。
「でもそれは、これを完成させた後よね。あの人のためにあともう少し、頑張らなくちゃ!」
この晩、マリーの部屋から明かりが消えたのは、これよりだいぶ後になってからだった。
大事な人を想い、一縫い一縫い紡がれる服は、一人のアイテムマスターに奇跡をもたらす。
今回は短いので続いてもう一話投稿します。




