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The end of the world online ~不遇職・アイテムマスター戦記~  作者: 三十六計
第六章_タマモ召喚!

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105_ドゥ=パラース公国

 「南方三公国」の一翼を担う「ドゥ=パラース公国」は、国内各所で産出される豊富な天然資源により国全体が潤っている。首都ドゥ=パラースも国内最大の鉱山を中心に発展した都市であり、山の斜面に段々状に設けられた道を登っていくと鉱山入口にたどり着く。この鉱山こそアヤセ達が今回挑戦するダンジョン「百足(むかで)坑道」であった。


 「事前に得た情報だと、この鉱山は大陸東部と南部の境界線を担う『ジュマ山脈』に開かれたもので、多種多様な鉱石が豊富に産出されるらしい。ジュマ山脈自体はアンボワーズ公国やトロワーヌ公国にも連なっているが、鉱業はドゥ=パラース公国しか手を出していないようだ。鉱脈がこの辺りにしか無いのかもしれないが、おそらくゲーム上各国の特性を出すための設定だろうけど」

 「ちなみに山脈は三千メートル級の山々が並ぶ難所で南部攻略勢も簡単に手が出せない代物だ。こいつのせいで、北部や西部は多数の攻略ルートがあるのに南部は、事実上ブルボンヌ地方経由のルート一つに限られちまっているんだよな」

 「それが南部攻略の特徴の一つなのだが、その他にも山脈には飛竜が出現するらしい。飛竜はゲーム上強力なモンスターで、過去大陸北部に出現して侵攻してきた帝国軍に大きな損害を与えて侵攻方針の転換に至らせた記録も残っているくらいだから、プレイヤーと対峙する事態になったら大きな壁になるだろう。最も、この国における飛竜は守り神のような位置付けなので、住民にとって排除の対象という訳では無いらしいが」

 「へ~、そ~なんですかぁ? 先輩達よく調べてますね~」

 「ま、いずれは飛竜を撃破して更に山脈を突破するプレイヤーも現れるかもしれねぇが、それよりも今は、挑戦するダンジョン『百足坑道』のことを考えるべきだぜ」


 厚い城壁に囲まれた街中のいたるところに設けられた溶鉱炉から煙が立ち上る中、アヤセ、ホレイショ、ノエルの三人は坂道を登りつつ、公国君主の館よりも高所にあるダンジョンの入口へ歩みを進める。硫黄の臭いが微かに立ち込める早朝のドゥ=パラースは、三人と同じようにダンジョンに挑戦するプレイヤー達だけでなく、NPCの鉱山労働者の一団が列をなして百足坑道に続く石畳の坂道を歩いており、公国の活況ぶりを象徴しているようだった。


 「ところで、今回の相棒の目当ては何なんだ?」

 「自分の目的は、『宝探し』イベントの景品『飛竜の鱗』だ。ただ、鱗はタマモ召喚に必要なのでどうしても欲しいアイテムなのだけども、入手がかなり難しいようだ」

 「やっぱりあのイベントは一筋縄じゃいかねぇか」

 「そのイベントってどんなイベントですかぁ~?」

 「百足坑道の『宝探し』は、エントリーなしで誰でも参加できるイベントだ。実際の様子は、見てもらえば分かる」

 

 そう言いながらアヤセが手振りで目的の方向を指し示す。ノエルがそれを追うように目を向けた先には、派手な服を着込み、顔に厚く化粧を施した一人の男性が立っていた。ホレイショと同じくらいの背丈でかつ筋骨隆々な男性は、鉱山に向かう人の列に向かってしきりにだみ声で口上を繰り返している。


 「さあさあ、皆様、ドゥ=パラース公国随一のコレクター、我が主、ル=ヴィルパン様が御所望の逸品を収める者はおりませぬか? 我が主が望むのは、ズバリ『百足坑道一の宝物』っ! お持ちになられた方にはレア中のレアアイテム、この『飛竜の鱗』を贈呈いたしますぞ! このアイテムがあれば一攫千金、億万長者も夢ではございません! この機会に、ぜひぜひお持ち込みをお待ちしておりまする~!」


 A4サイズのクリアファイルくらいの大きさの透き通った綺麗な板状の物を高々と掲げる道化師(ピエロ)のような格好の男性からアヤセに目を移しつつ、ノエルは問いかける。


 「はぁ、あれのことですか~?」

 「そう。一見するとよくある納品クエストのようだが、問題は対象が非常に曖昧で何を納品すればいいのかはっきりしないところだ」

 「え~っ!? それって激ムズじゃないですかぁ~!」

 「今のところ、あのクエストに挑戦して『飛竜の鱗』を獲得した者はいない。クエストがあまりに難解なので、失敗したプレイヤーの中には、依頼主である道化師を疎ましく感じている者もいるくらいだ。最もまぁ、あの体格だからクレームをつけるのに二の足を踏んでいるようだけど」

 「相棒はアテがあるのか?」 

 「メグ……、いや、マルグリットさんも知らなかったので、正直に言うとあては全く無い。場合によっては何度もダンジョンに挑戦することになるかもしれないな」

 「おらどけっ! 道を開けろ!」


 ダンジョン攻略について方針を話し合っていたところで、不意に後ろから怒鳴り声が響く。三人が振り返ると、そこには七、八人のプレイヤーと思しき男女が乗った一台の大型馬車が、自らの通行のため列に並ぶ者達を狭い道の端に乱暴に追い散らして進んでおり、アヤセ達にも道を譲るよう迫ってきた。


 「チッ……! 嫌な奴に会っちまったな」

 「それはこちらの台詞です。ぼさっとしていないで道をあけてくださいません?」 


見知った顔を見つけホレイショが悪態をつき、それに対して馬車の荷台上から見下す口調でルクレツィアが応酬する。傍若無人な集団は数人の男性プレイヤーを引き連れたエスメラルダのパーティーだった。


 「これは、これは、ノエルさん。あなたもダンジョンに挑戦するの? 相変わらず雑魚と群れるのがお好きなようね」

 「……」

 

 ノエルの姿を認めたルクレツィアが嫌味をぶつけてくるが、当の本人は不毛な反論を避けそれを無視する。彼女達の間でどの様なやり取りがあったか分からないが、少なくてもパーティーを脱退したことだけについては、円満とは言えないものの、一応の決着がついているようだった。


 「『千本松原海岸洞』ではまぐれでどうにかなったようだけど、今回は運任せで上手くいくとは思わないことね。死に戻りたくなかったら諦めなさい。正直目障りよ!」

「ルクちゃん」


 エスメラルダがルクレツィアをたしなめる。鷹揚ぶって余裕を見せ、ルクレツィアに対応を任せているのはいつも通りだが、アヤセ達に向けて一言皮肉を言うことは忘れていない。


 「ノエルさんでは諦めるタイミングを推し量るのは無理でしょう。そして、他のお二人も勇気があり余って無謀なことをする方々のようですから、思いとどまらせるのは難しそうですね」

 「そうね。エスメラルダの言う通りね!」


 エスメラルダの言動にルクレツィアが脊髄反射で追従するのはいつも通りだが、シアンとナーカがこれに乗ってこないのがいつもと異なっていた。これによって二人の先ほどの掛け合いも上滑りしているような感じとなり、同行している男性プレイヤー達も反応に困った顔をして棒立ちになるが、ルクレツィアが血相を変えて睨みつけたので、慌ててぶつぶつと同意と思しき言葉を各々口にした。

 

 「そんなことよりもここを通してくださいませんか? 列に並ばせているパーティーメンバーと早く合流したいので」

 「こんな狭い道を大型馬車で通ることを危険と感じないのでしょうか? プレイヤーだけでなく多くのNPC住民もこの道を利用するというのに」

 「エスメラルダをこんなことで疲弊させる訳にはいきませんからね。当然でしょう?」


 自己中心的なルクレツィアの言動から、この者達の良識は初めから欠落していることを改めて思い直す。今更こんなことを問うのも無駄だというものだ。いつまでもこのような連中と押し問答をしていても埒が明かないと思った三人は道端に寄り道をあける。これに対しエスメラルダは澄ました顔で素通りし、ルクレツィアや男性プレイヤー達は勝ち誇って睨みをきかせ、一方で荷台の後方で体を小さくしていたシアンとナーカはアヤセ達に軽く会釈をする中、馬車は通り過ぎた。

 

 「何なんだ、あいつらはっ!!」


 馬車が通り過ぎたあとホレイショが連中の態度に大声で悪態をつくが、それは列に並んでいた他のプレイヤーやNPC達も同感だったようで、しきりにエスメラルダ達を批判する声が上がっていた。


 「目的が同じである以上、出くわす確率が上がるのは覚悟していたが、実際に会うと気分が悪くなるな。しかし、連中はどうしてここまでして『契約の器+』の強化アイテムを欲しがるのだろうか?」

 「シアンさんとナーカさんも、何でそれが必要なのか分からないって言っていました~」

 「大方、エスメラルダの奴がマスコットとして召喚獣を欲しがったとかそんなところじゃねぇか?」

 「そ~かもしれませんね~」

 「それにしても、意外と言っては何だが、あの二人がノエルのパーティー離脱を簡単に認めるとは思わなかった」

 「ノエルの代わりに、『プラチナ』と仲良くしたいって言う人は沢山いますから~」

 「……」


 (正に「ブロンズ」は使い捨て、か。人をその程度にしか見ていないあいつらには、心底反吐が出る。ノエルは離れて正解だったな)

 

 「学校でも無視されていますけど、単位は取れているので学校自体もうあまり行くことも無いし、シアンさんとナーカさんとは、校外で色々情報交換をしているのでノエル的には問題ありません~。シアンさんとナーカさんは、もうしばらくあの二人と一緒にいるって言っていました~」

 「あの二人も何とか筋道が立ったみてぇだな。ところであのガラの悪い野郎共は一体誰なんだ?」

 「ノエルも全然知りませ~ん。誰なのでしょうね?」

 「口では虚勢を張っていたが、高レベルのノエルが抜けた穴を埋めなければならないし、トロワーヌ公国で戦力不足を実感したのだろう。どう集めたかは知らないが、どちらにしても関わるのは実害しかない」

 「同感だぜ」

 「そ~ですね~」


 先ほどの話ではパーティーメンバーを先行して列に並ばせているようなので、連中のダンジョン入場は自分達よりも早いだろう。別々のタイミングでの入場なので、今回は鉢合わせするということは無いかもしれないが、以降何度も百足坑道に挑戦するうちにそのような事態が起こることも予測できたため、今後動向を注意する必要があるとアヤセは思ったのだった。

 



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