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The end of the world online ~不遇職・アイテムマスター戦記~  作者: 三十六計
第六章_タマモ召喚!

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103_千本松原海岸洞⑤

 必要数の巣の回収が済んだアヤセに対し、ホレイショが大声で崖上から呼びかける。


 「おーい、相棒ー! 平気かー?」


 アヤセの姿は随分下に見え、声も届きにくくなっている。呼びかけから反応が返ってくるまで、時間のずれが生じるくらいだ。


 「ああ、大丈夫だ! このまま第一階層まで降りられそうなので、自分はこのまま降りる。先に戻っていてくれ!」

 「了解だ! ギードの集落で待ってるぜ。気を付けてな!」


 ホレイショが最後にプリスの袖が括り付けられた杭の刺さり具合を確認して、転移装置の方向へ立ち去る。そして、それを見計らって近くの木陰から二つの人影がそっと現れた。

 

 「ねぇ、本当にやるの?」


 やや肉付きの良いナーカが片割れに問いかける。


 「仕方がないわ。やらないと戻れない。だから仕方がない!」


 ナーカに反して長身細身で眼鏡姿のシアンが自分自身にも言い聞かせるように答える。二人は杭の前に立ち、しばらく逡巡する素振りを見せるものの、それぞれ武器を取り出した。


 「あの崖から落ちれば、死に戻り間違いなしよ」

 「でも、私達にPKペナルティが付かない?」

 「だから、この袖ではなく、杭を攻撃して破壊する。そうすれば自然落下扱いになってPKペナは付かない。……物理攻撃がダメなら私の魔法で燃やす。何が何でも杭を折るわよ!」


 シアンの長剣とナーカの短剣が交互にガツガツと音をたて杭に食い込む。しかし、アヤセの体重を支えるほどの杭の強度は思った以上で、女性プレイヤーの力では中々の重作業だった。


 「はあはあ……。早くしないとあいつが気付いちゃう!」

 「急ぎましょう! 袖に当たるかもしれないけど、ここからは魔法も使う!」


 シアンが火魔法を発動し、杭に炎を当てたことによりその強度が格段に下がる。その後は一言も発すること無く必死の思いで武器を振るい、ようやく杭をへし折ることに成功した。


 「ああっ、落ちる!」


 プリスの袖が巻き付いたままの杭の残骸がズルズルと音をたて崖下に引き寄せられ、時間をかけることなく消える様子を、二人はその場で立ち尽くし眺めていた。


 「消えちゃったね……」

 「……」

 「……私達、これで良かったのかな? 本当にこれで良かったの?」

 「……」


 目にうっすら涙を浮かべナーカが問うが、疲れ切ったシアンは何も答えない。彼女自身も自分の行いが恥ずべきものだということは分かっている。エスメラルダの意向を酌んで及んだ行為だったが、果たしてこのまま横暴な命令を下すエスメラルダ達に従い続けて良いものだろうかと疑問を感じずにはいられなかった。


 ========== 


 ホレイショと会話を交わしたアヤセは、シアンとナーカが崖上で杭を折ろうとしていることに気付かず第一階層へそのまま移動すべくプリスの袖を伸ばし、下に降り始める。勿論、袖が伸ばせる長さも限度があり、百メートル以上の断崖をこれだけでは降りきることはできない。しかし、アヤセは他の手段を用意していた。


 (できるところまでは袖で降りて、岩の窪みとか一休みできそうな場所を探すか。なければブーツのポテンシャルで足場を作り出そう)


 次の手を考えているところで、不意に袖から微かな衝撃が伝わってくる。不断的な衝撃は、何物かが杭かプリスの袖に意図的に攻撃を加えていることから生じているとアヤセは察知した。


 「モンスターか、それともプレイヤー? ホレイショが転移したあと、エスメラルダ達が戻ってきたのか?」


 不運にも手足を置ける、出っ張りや窪みが無く対応に苦慮しているうちにも、衝撃の間隔がどんどん短くなり、やがて自らの体重により落下が始まった。


 (まずいな。杭が折れたか?)


 落下の速度は秒を追うごとに加速され、アヤセはなす術無く真っ逆さまに落ちていく。このまま下の岩場に叩きつけられたら死に戻りは必至だ。


 (まぁ、とんだハプニングだが落下対策はしてある。早く発動しないと壁面にぶつかるかもしれないし、そろそろやるか)


 =個人アナウンス=

 スキル【エアボール(小)】を発動。


 スキル発動と同時に球形の空気膜がアヤセを包み込む。先般の戦争イベントで岩鉄が泥地から抜け出したスキル【エアボール】に有用性を感じ、岩鉄に習得方法を教わり取得していたものが早速役に立った。


 高速落下する空気の球体は時折岩場に激突するものの、そのまま割れることなくバウンドし、大きな水しぶきをあげて海面に着水した。

 

 (死に戻りは避けられたが、き、気持ち悪い……。衝撃に対する揺れは何とかならないのか?)


 波間に浮かぶ漂球体の中で大の字になり、アヤセは気分の悪さと戦いながらスキル【エアボール】の使い勝手と今後の課題について考えていたが、さらなる問題が発生したことに思い至る。


 (そう言えば、これからどうやって陸地に戻ればいいのだろうか? エアボールは自分で漕いだり進めたりしないから、最悪このまま漂流することにもなりかねないな)


 幸いこの周辺の潮流は穏やかではあるが、そうはいっても、沖合に流されたら厄介な状況に置かれることになる。事態の打開の方法を思案するが、それは思っていたよりも早く解決した。


 「ちょいとお兄さん」

 「わっ!」


 いきなり声をかけられ驚くアヤセ。声のした方向を振り向くとそこには一人の魚人が水面から顔を覗かせており、奇妙な空気の球体に包まれて水に浮いているアヤセを訝し気に見ていた。


 「えーと、魚人の方ですか?」

 「見てのとおりだよ。お兄さん、もしかしてアヤセって名前?」

 「えっ? ええ、自分はアヤセです。何故自分のことを御存知なのですか?」

 「あー、あたいね、フィーレって言うんだ。お父つぁんと一緒にお兄さんを迎えに来たんだよ」

 「お父様?」

 「アハハッ! 『お父様』だって!」


 アヤセの丁寧な言葉遣いを面白がったのかフィーレはころころ笑い声を上げた。


 「『お父様』なんて柄じゃないよ! ほら、お兄さんも知ってる魚人って言ったら一人くらいしかいないんじゃない? ギードだよ。うちのお父つぁんは」

 「ギードさんの娘さん!?」

 「そう。お兄さん崖で燕の巣を取っていたんだって? すごいね! それでいてこんな面妖な道具で転がり落ちてきちゃうのだからびっくりしたよ」

 「まぁ、エアボールは事故的な理由もありますが……」

 「それより、早く(おか)に上がらないとね。あんな風が強い崖にいて寒かったでしょ? お父つぁんも心配してあたい達を連れてずっとこの周りで上の様子を見てたんだから! 今日は集落で歓迎会だよ。燕の巣を持ち帰ってくれた恩人を精一杯お迎えしなきゃね!」 


 ========== 


 アヤセ、ホレイショ、ノエルの三人は、ギードやフィーレが住む魚人の集落に招かれ燕の巣を持ち帰った謝礼として、催された宴に出席している。人口二百人程度の小さな集落は漁業くらいしか生計を立てる術がなく、相互で助け合い海の恵みに感謝して生きる姿は素朴で力強さを感じさせたが、一方で自然の厳しさの前で貧しい暮らしを強いられていることも一目で察することができた。


 何もない寒村とも言える集落ではあるが、世の中には目端の利く者がいるようで、行商に訪れる商人がこの海域が養殖に適していることを見抜き、高値で取引される燕の巣を売却した資金で養殖場を敷設するという話を持ち込んできた。アヤセが目的のアイテムを提供したことにより、この集落の未来の展望に明るい兆しが差し込んだ。希望に目を輝かせた集落の長をはじめ住民達にひとしきり感謝の言葉を述べられたアヤセは、苦労して燕の巣を持ち帰った甲斐があったと思うのだった。


 「まぁ、行商人が信用のおける人物だったらいいが……」

 「何でも南部出身の『ドラゴニュート』の商人だから大丈夫だって言っていたぜ」

 「ドラゴニュート?」

 「ああ、大陸南部のナントカって都市を拠点している竜人だな。南部は元々商業が盛んな地で、その中でドラゴニュートの商人は特に信用を重視する傾向にあるそうだ」

 「なるほど。それなら安心そうだ」

 「話が変わるが、杭が折られたのは俺の警戒不足だ。済まねぇことをした。実行犯は、おべっか使いの二人組だな?」

 「直後にチーちゃんを飛ばせたが、杭を折って慌てて転移装置へ戻る二人を視認した。ノエルが抜けた穴は、『補充』があるまであの二人が色々埋めなければならない。彼女を鼻で笑っていた奴が同じ立場に立たされるなんて皮肉なものだな」

 「そうだな」

 「まぁ、最終的にはスキル【エアボール】で第一階層に戻る予定だったから、多少のイレギュラーがあったが想定の内ということで。それよりも連中がここまで実力行使してくるとは思わなかった。自分を崖から突き落としたことによって、自らがPKになるというリスクを自覚しているのか?」

 「しているだろうぜ。少なくてもエスメラルダは」

 「そしてそれを他人にやらせる、という訳か」


 アヤセとホレイショは持参したワインや果実酒にビール(余剰分は集落の住民達にも提供した)を飲みながら今日起こった出来事を振り返る。今後も連中がノエルに対し良からぬことを企むかもしれない。できればもう一切関わり合いを持ちたくないが、向こうがその気ならそれなりの対応を考えなければならないだろう。


 「ま、それは後の話だ。今は目の前の料理を楽しむとするか」

 

 ホレイショは箸を取り、魚人達が用意してくれた料理に手をつけようとしたが、丁度そのタイミングで怒号のような声が届いた。


 「何だ?」

 「向こうが騒がしいな。様子を見に行くか」

 

 もしやモンスターの襲撃かもしれないと思ったアヤセとホレイショが、得物を手にひときわ大きな声が上がる場所に駆けつけると、そこには二人の女性プレイヤーが集落の魚人と騒ぎを起こしていた。


 「こいつらっ……!」

 「シアンさんとナーカさん?」


 よく目立つPKフラグを立てているシアンとナーカは、汚れた服装からその消耗ぶりが窺える。二人は食事と回復の提供を求めているが、魚人達はPKフラグが立ったよそ者に対して警戒を隠さず、追い返そうとしていた。

 

 「あのPKフラグは、相棒を突き落とそうとした際に立ったのだろうよ。あんなのを派手に見せていたらNPCは誰だって信用しねぇよ。いいザマだぜ」

 「……」

 「おい、相棒?」


 魚人達に邪険に扱われるシアンとナーカに無言で歩み寄るアヤセ。対する二人もアヤセの存在に気付き、顔色が変わった。


 「皆さん済みません。自分はこの方達と少し話をさせていただきたいのです。自分が責任を持ちますので、二人を集落に入れてください。どうぞお願いします」


 そう言いながら頭を下げるアヤセに対し、魚人のみならずシアンとナーカも面食らった様相を見せた。


 ========== 


 宴会が催されている広場の端にアヤセ、ホレイショ、シアン、ナーカは人払いの上、四人だけで話ができるように集落の長から計らいを得て、向かい合うかたちでテーブルにかけている。両者はしばらく緊張の面持ちで、何も話さず座っていたが、始めにアヤセが口火をきった。


 「PKフラグが立った原因は、自分を崖下に突き落としたことが原因ですね?」


 アヤセの単刀直入な切り込みに、ナーカがためらいがちに頷く。


 「はい……。どうして死に戻らなかったのですか?」

 「落下対策をしていましたから。対象を確実に仕留めたいのでしたら、死に戻りを必ず自身の目で見届けることです。ルクレツィアさんでしたら『残心』なんて言うかもしれませんが」

 「……」

 「済みません。言い方が良くありませんでしたね。あなた方もエスメラルダさんの強い命令があってのことでしょう。行為に至ったこと自体は感心しませんがその点だけは同情します」

 「……本当にごめんなさい」

 「取り敢えず、満腹度も減少しているでしょうから話は後にして、集落の方々が用意してくださった料理で回復されてはいかがでしょうか? ここの集落の魚人達は、わずかですが魚醤を生産しています。これで作られた鍋は現実世界で言う『しょっつる鍋』と同じような料理です」

 

 疲労困憊で満腹度も低下していた二人は、アヤセの勧めに従い、箸を取る。一通り鍋料理をはじめとする各々の料理に手をつけた後でナーカがつぶやいた。


 「……美味しい。今日は朝からずっと何も食べていなかったので、満腹度が20%まで下がっていたんです」

 「そこまで下がっていたら、ステータスに影響が出ていたのでしょうね。低い満腹度でおまけにこんな夜遅くにダンジョンにいるなど、いくら第一階層でも危険だと思います」

 「ルクレツィアさんが、パーティーを脱退したノエルさんが死に戻っていないことに気付いて……。ポールトロワーヌにいないから、いるとしたらこのダンジョンだということになって、見つけてくるように言われました」

 「……。ノエルを見つけてどうするつもりだったのですか?」

 「分かりません。パーティーに連れ戻すつもりだったのかもしれません」

 「ノエルさんはこの集落にいるのですよね? ノエルさんに早く会わせてください!」


 出し抜けにシアンが立ちあがり、ルクレツィアのように尊大な態度で大声を上げてノエルとの面会を要求するが、怒気を抑えた目で睨み続けているホレイショに気付き、彼が首を振って静粛を促すと、しぶしぶそれに従って再び席についた。


 「残念ですがそれはできません」

 「どうしてですか?」

 「本人が話をできる状態ではないからです」

 「何ですかその理由は!? そんなもので私達が納得すると思いますか? 昨日まで上手くいっていた私達の関係が、部外者のあなた達のせいで何もかも滅茶苦茶になったのですよ! どうしてくれるのですかっ!」

 「ハッ! 何が『上手くいっていた』だよ!」

 「ノエルさんに会えないのでしたら、せめてお二人からパーティーに戻るように口添えをしてください! それくらい当然ですよね!」


 シアンの物言いに、ホレイショだけでなくアヤセも呆れ果て、不快感を顕わにして冷たく突き放す。


 「ノエルを贖罪の山羊(スケープゴート)にして成り立つ『上手くいく関係』など、果たして良い関係なのでしょうか? 普通の思考を持った人ならば絶対に違うと言うでしょうね」

 「うっ……」

 「シアンさん。あなたもとっくに気付いているのでしょう? エスメラルダとルクレツィアがまともな精神(こころ)を持っていないということに」

 「……」

 「エスメラルダのような『プラチナ』と付き合うことで自身のステータスが上がると思ったのか、又は『シルバー』としてのプライドか、実家同士の力関係かは知りませんが、あなた達の打算をはらんだ思惑が、正しいことも分からなくなるほど目を曇らせ、ノエルのような立場の人間に犠牲を強いる真似にも無神経になってしまったのです。ここまで来たのも大概ですが、今からでもこの問題と正面から向き合うべきです」

 「あなた達に何が分かるというのですか?」

 「全部詳細に、百パーセントは分かりません。ですがノエルはあなた達のグループの元メンバーであると同時に自分達の仲間でもあるのです。このゲームを通しての付き合いの浅い仲間でありますが、その仲間が自身の人生を左右する決断を下し、前に進もうとしているのを自分は応援したいですし、問題があれば共に解決をしたいと思っています。あなた方の悩みも考えようによっては、その問題のうちに入るでしょうから、こうして話をさせてもらっているのです」


 シアンとナーカは反論せず黙っている。

二人はエスメラルダやルクレツィアとは違い、僅かながらも良心が残っている。だからこうして葛藤を抱えているのだ。


 「ノエルとあなた達の取り巻く環境は違うでしょうから、悩みもまた異なると思います。ですが、自分自身でもこのままでいいと感じていないはずです」

 「でも、パパ達に迷惑が……」

 「私もナーカさんも、父親がエスメラルダさんの会社の役員をしていて、そう簡単には関係を改善することはできないのです」

 「そこが、高等部進学組のノエル嬢との違いか」

 「どこの会社とは今更言いませんが、就職先も全員同じだと伺いました。進退の決定に自身のことだけでなく、御家族のことも考えなければならないのは非常に悩ましいことだと思います。しかし、御自身の人生はこの後どうなるのでしょうか? このまま敷かれたレールを走り続けていたら、お二人はエスメラルダとルクレツィアのお友達ごっこ、つまり二人のロールプレイの登場人物の一人として生きていかなければならなくなります。……まるでこのゲームのように」

 「……!」

 「ノエル嬢は親御さんとよく話し合うって言っていたぜ。お前さん達、今までそういう話を家族としたことがあったか? 人の親なら自分の子供が自分のせいで悩んでいるのを知ったら、必ず何か考えてくれるはずだぜ」

 「……」

 

 冷えた浜風が沈黙に支配された空間を吹き抜ける。

 二人はノエル以上にエスメラルダとの付き合いが長いから、やはり重要な決断を下すのにもその分慎重になるのだろう。


 アヤセとホレイショは、そんな二人の考えがまとまるまで長い間黙って待っていたが、シアンとナーカは決意を固めたようでぽつりぽつりと語りだした。


 「私はパパとママに話してみようと思います。もうこれ以上誰かがルクレツィアさんに怒鳴られるのを見たくないし、私もそうなりたくありません」

 「ナーカさんもそうする? よく考えたら、このことを家族と深く話したことが一度もありませんでした。多分、ずっとこの関係を当たり前だと思い込んでいたのだと思います。……アヤセさん、ホレイショさん、私達に気付かせてくださってありがとうございます」


 シアンが頭を下げると、ナーカも一緒に頭を下げた。


 「『部外者』の話も少しは役にたったか? いいってことよ」

 「まぁ、今後が色々と大変でしょうけど、ノエルもお二人の決断をきっと歓迎すると思います」

 「そうですね。この後が大変ですが、まずはノエルさんに今までのことを謝らないといけませんね。再度お願いしますが、彼女に会わせていただけないでしょうか?」


 誠実な対応の必要性を感じたシアンは、再度ノエルとの面会を希望するが、アヤセとホレイショは、目線を交わし、ばつの悪そうな顔をする。


 「それが、先ほど言いました『本人が話をできる状態ではない』というのは文字通りなのです」

 「あの、それはどういうことでしょうか?」

 「えーと、つまり、彼女は少しお酒に弱いところがありまして……」

 「つまりだ、要するにノエル嬢は、調子に乗って飲み過ぎて寝ちまったんだ」

 「えっ!?」

 「そういうことで、おそらく今後も目が覚めないでしょうから、バイタルログアウトのペナルティがつく公算が高いです。ペナルティによってゲームのログイン自体が長時間制限されますから、もし、ノエルに会いたいのでしたら現実世界でお願いします」

 「やれやれ、この後、ノエル嬢のことをポールトロワーヌまで運ばなきゃだぜ。……この集落に大八車はあるのかね?」

 「ノエルさん……。何をやっているの!?」


 思わぬ展開とホレイショのぼやきを聞き、シアンとナーカは絶句するほかなかった。


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