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殺し屋だって理解してます

 もう色々と開き直った私は仕方ないと思う。

 だって防衛本能だし。

 洗い物までしっかりこなす男の背に、そう言えばと、私は今更な質問を投げかけてみた。

 「そう言えば、あんた名前は?」

 「特に決めてませんね」

 決める?決めるとな?あれ?名前って決めるものだっけ?

 「僕には親という存在とは無縁でしたので、この稼業を始めてからは特に固定の名前なんてありませんね。貴女の会社では僕の事を何と呼んでるんですか?」

 「・・・・殺し屋の男」

 「・・・それはまた随分と()()()ですね。他の国では僕の事をトランプのジョーカーの意味で、ジョケルやシュヴィンと呼んでますよ」

 いや、私が名付けた訳じゃないからな?そんな残念な子を見る目で見ないでほしい。お門違いだ。

 「でもそうですね、名がないと色々と不便ですし・・・貴女の好きなように名付けて下さい」

 名付けて下さいって言われても、そんな犬や猫じゃあるまいし。

 途方に暮れる私を他所に、男は期待の眼差しを送ってくる。

 「・・・権兵衛とか?」

 「・・・・それ、日本でいうところの名無しの権兵衛からきてます?」

 うわあ、これはいよいよ残念な子を見る顔だ。

 「・・・じ、じゃあ、ディーク・・・とか?」

 「ディーク?まあ、いいでしょう。ちなみに名前の由来を伺っても?」

 「・・・前にうちで飼ってた犬の・・・」

 「貴女は僕が殺し屋だとちゃんと理解してます?貴女のその勇気には敬服しますが」

 「・・・」

 いやいや、待ってほしい。何でこいつこんなに偉そうな訳?しっかりしろ自分!思い出せ!曲がりなりにも私は警官!向こうは犯罪者!!パワーバランスはこちらに傾くはずだ!はずだよね?


 男改め、ディークはやれやれとため息をつくと、チラリと時計を見た。

 「ところで、時間は大丈夫なんですか?」

 「!!!!っ!!」

 見ると、いつもの出勤時間を10分も過ぎているではないか!!

 急いで椅子から離れたせいで、ガンっと足の小指をぶつけて悶える。

 「ぬをっっ!!」

 奇妙な叫び声と共に、私はよたよたと玄関へと這った。

 パンプスを履いて振り向くと、そこには相変わらず夢ではない男が笑顔で見送っている。

 

 くそう。本格的に時間がない。

 「行ってくるけど、部屋で変な事しないでよね?後、あー!もうっ!!」

 私は乱暴に鞄の中に手を突っ込むと、部屋のスペアキーと入り口のカードキーを取り出した。

 「出掛ける時はちゃんと鍵掛けて、万が一窓でも割って入られたらここ、警報装置が作動するから」

 私はマンションの5階に住んでいる。窓を破られる心配と言っておいて、普通は疑問を浮かべるが、何せ目の前のは男は普通じゃない。窓を破られて騒ぎが起きるよりも、いっそ鍵を提供してしまった方が安いのでは?と、瞬時に頭の中で弾き出した私は、目を見張るディークに鍵を押し付けると、脱兎のごとく部屋から飛び出したのだった。

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