ラキの目覚め
「……ありがとう」
「ぅん」
「もう行くよ」
「……一緒……ため?」
「君には、沢山の仲間が待っているように、僕にも使命があるんだ」
「……」
「心配要らないよ。僕は、いつでもここにいるから」
「ううっ、ぅん」
「泣かないで、ラキ。僕は、君と一緒に過ごせて、世界を幸せにする術を知ったんだ。だから、これからは、僕が君を……みんなを幸せにするから。約束するよ」
「ぅん、淋しいけど、ラキも頑張るぅ」
「ありがとうラキ。僕の可愛い友達」
「ん……」
「ガウガウ」
「どうしたのマーちゃん?」
「クマクマー」
「ラキが目覚めたの?」
「ガウッガウ」
「ん、ん、僕の……」
目覚めたラキは、胸元を探すように両手を動かしていた。
「もう大丈夫だよ、ラキ」
寝台のドームを開けた魔熊。そして、伸ばされたラキの小さな手を優しく握ったのは、『K』だった。
最初は、僕の、僕のと繰り返していたが、状況がわかるにつれて、今度は、ライル、ライルと探し始めた。
「ラキ、聞いてくれないか?」
「あ、ぅん、なあに?」
「君の本当の叔父さんは、ライルなどではなく、この私なのですよ」
「叔父さん? なあに?」
ライルによく言われていたが、本当のところは、理解していなかったのだ。
「君はね、私の姉上様が産んだ子供ですから、私は、君の叔父さんにあたる、つまり、家族なのですよ。わかりますか?」
「ケエーが家族?」
「そうです」
「ラキ、家族が増えて嬉しい」
涙をためた瞳で、一所懸命答えるラキは、いじらしいもので。
「ても、ライルゥ……」
そうして、静かにしょんとして俯いてしまったのだ。
聞き分けがいいだけに、これには、上皇人も魔熊も心がヒリついてやるせない気持ちになった。
「ガウッガウ、ガウ」
「わかっているよ」
何やら、諭された上皇人は、また、ラキに話し掛けたのだ。
「君の本当の名前は、愛蘿と言うのですよ。そして、頂点に位置する白鹿一族の一人なのです」
「……」
「愛蘿が二才になった頃に何者かに誘拐されて、行方不明になってしまったのです。そうして、姉上様は、それが原因で心の病に掛かられて……」
上皇人は、未だ悲しみが薄れないのか、自らの瞼を閉じていた。
「くっ、こんなに可愛いあなたを残して……」
「姉上様、たれ?」
不意にラキの跳ね髪がピョコリと立った。
「愛蘿の母上様ですよ」
「ラキの?」
「そうです」
どうやら、万能スーツがラキにもわかるように説明をしたようで、それで、興味が湧いたようなのだ。
あの、遠い村で会った自分より小さいココラ。
何にも出来ないから、死んでしまうかもしれないととても心配した。
でも、ココラには、常に寄り添う両親がいたのだ。
常に一緒の人が二人もラキにいる。それが、とても不思議で仕方がない。
「他にも、愛蘿だけを守護する黒獣が付く筈だったのですが、それが、どうしてか産まれてこなかったのです。聖なる契約の中で、前代未聞の事態と言われていましたが、私のマーちゃんが言う事には、愛蘿には、全ての黒獣が抗えない力があると言うのです。つまり、愛蘿には、全ての黒獣が従うと言うのですよ」
「くぅ、大好き」
ラキに言われた魔熊は、猛烈な勢いでペロペロした。
「あ~、くぅ、くすぐったい~」
「マーちゃん……」
絶対守護の自分の黒獣が、目の前で甥とは言え他人に気を許すところを見るのは、どうにも複雑な気持ちがするようだ。
「愛蘿、これからは、父上様の元で不自由なく幸せに暮らせますよ」
ピクリとした跳ね髪。
「ても、ライルゥに会いたい、ライルゥどこ?」
「「……」」
とてもとても澄んだ瞳のラキにそう問われて、これ以上の説明が出来ないでいた上皇人。
この後、脱け殻のようになってしまったラキに折れて、スペースシップはUターンを余儀なくされたのだ。




