表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/88

山が割れる

 「婆さん、大丈夫か?」


 駄目だ。気を失っているみたいだな。


 「ライル、あたいが運ぶよ」


 頼りがいのあるニーアが、倒れた婆さんを新しい村まで担いで行った。


 「馬鹿力だな」


 「ライルゥ、終わったあ」


 代わりにちょこちょこと走って来たラキ。


 そして、その後にデデーンと腕組みして並ぶモーラ達。


 「よく頑張ったな、ラキ」


 両手をこちらに上げているから、抱き上げて怪我を確認したぞ。


 どうやら、髪がくしゃくしゃになっているだけで、後は、万能スーツが治癒してくれたようだ。


 「そうだ! ディミトリはどうしたかな?」


 「知らな~い。モー()?」


 ガシャガシャと鱗がうるさいな。


 えっ? モール?


 聞き間違いだな。


 そろそろ、私の脳がスパークリングしているのかもしれない。


 リーダーが紅で他にも蒼や藻なんかの鱗の色がいるな。


 「ライルゥ、デミ、あっちに行った」


 ラキのハネ髪が、ピョコリと立ってから教えてくれたが、まさか、アンテナじゃないよな。


 婆さんの事を話さなければと、考えなしに追いかけたぞ。


 「ダボッチ山って事は、町に行くつもりか? あいつ」




 ゴゴゴーッ。


 「うわっ、地震か?」


 暗闇迫る中、ゴロゴロと岩が崩れた振動もして、驚きで足が止まったな。


 「ハハッ、これでどうだ! 俺様は、最強だーっ!」


 割れた崖の間から漏れた光りは、空まで照らして、大きな影を私達に落としたんだ。


 「ライル、どこだーっ!」


 頭上から、わんわん響くダミ声。


 「あれ? コレ、死んだか?」


 「ィヤーー、ライル、ラキ、モール一緒!」


 半ば冗談で言った言葉にラキが大袈裟に反応して叫んだ。


 すると、男の声を確かに聴いた。



 「叶えよう」




 それから、いったいどうなったのか……。


 流れに身を任せるしかない程、もみくちゃにされて、気づいた時には、手足のゆび五本にリングを装着されて、色のない空間に浮いていた。


 「何処なんだここは?」


 「ライルゥ、ライルゥ、ライルゥ」



 「そうだ、ラキは、何処だ?」


 「ラキ、一緒」


 この捕らえられた空間から、ダイレクトに骨に伝わる声。


 「ラキなのか?」




 「俺様に戦いを挑むってか? 上等じゃねぇか」


 今度は、ディミトリの声だ。


 突然、ゴーグルのような物をかけられて、視界がひろがった。



 目の前には、巨大化したディミトリが、プロテクターのような物を装着した姿で構えていた。


 その脇にモールだかのガイドが解析されて表示されている。



 『まさか、まさか、合体したとか? 私がオペレーターとかか?』


 ドクンと身体中を流れた恐怖。


 これは、私ではなくラキの気持ちか?



 「こねぇなら、こっちから行くぜぇ」


 力を溜めてから跳躍して、襲いかかるディミトリ。


 反射的に、ファイティングポーズからのジャブを繰り出すが、腕みじけぇ。


 簡単に捕まり、振り回されて投げ飛ばされてしまった。


 『うう、う』


 もんどり打って、背中を強打したか?


 ラキの苦し気な声が伝わる。


 が、ディミトリは、今度は、馬乗りになって殴ってきたのさ。


 「オラ、オラ、オラ、オラーッ!」



 『ぃたー、ううっ』


 くそ、このままでは、ラキが痛い思いをするし、我慢するから、余計に辛そうだ。


 しかし、この魔物の手足が短くて、喧嘩慣れしているとは言え、いつもの動きは難しそうなんだ。


 パシッと、殴るディミトリの両腕を掴み止め、解析されたゴーグルの端を見れば、デビルアイからリキッドと示されていたんで、迷わず指示したさ。


 プシャっとディミトリの目に直撃だ。


 「グゥ!」


 顔を手のひらで覆い、後退ってくれたぜ。


 「デミ、許さねぇぞ」


 怒りMAXで、反撃してやる。


 短くても面積の広い足裏で蹴りの連発。


 おまけに、捻れば、突起のついた重い尻尾までもが、ディミトリの身体を引き裂いた。


 「汚ねぇぞ! 目潰しなんかしやがって」


 結構、爛れてんな。


 デミの奴、目だけ出た兜メットしてやがったから、してやったりだぜ。


 「悪いが、攻撃されたくないんでね」


 「その声は、ライル! てめえかよ」


 

 蹲っていたデミの身体から、蒼白い閃光が散って、闇雲に放電しやがった。


 どうにも、逃げ足が遅くてかわしきれずに喰らってしまったが、土の魔物だからなのか、鱗から地面に流れてダメージはなかったのさ。



 『フゥ、土の魔物で助かったぜ。これ以上、ラキに痛い思いはさせたくないからな』


 その瞬間、みなぎる力。


 モール達だな。


 それで、何か一撃必殺はないかと考えると、出ました『対敵刺(ラージソワン)』。




 どうやら、一押しらしいが、これを見舞ったらディミトリの奴死じまうんじゃないか?



 しかし、高まり続ける闘士。


 モール達も、ディミトリの奴に鬱憤がたまっていたんだな。


 

 そうは言っても、もう少し穏やかな奴はないのか?


 『刺乱打』

 『爪串刺』

 『投力刺』

 

 どれもエゲツないぞ。


 仕方ない。


 お勧めの『対敵刺(ラージソワン)』を指示。


 すると、背中を丸めた巨大モールは、そこにあった鋭利な鱗を射出した。


 楓の葉のように尖った形のものが、トスッ、トストストスと地面に刺さり、デミの背中にも斜め掛けするように刺さったのさ。


 「ウギャー、イテェ」


 あいつ、生身での巨大化なのか?


 まあ、装具をさっき尻尾で粉砕しちゃったからなぁ。


 パワーは、私の力に寄っているのか、破壊力が壮絶なんだよ。


 「イテェ、イテェ」


 血を流しながら、転げ回るディミトリ。


 

 ドクン。


 ディミトリ相手に感じた事のない憐れみの気持ちが伝わってくる。


 ラキの気持ちだ。


 私が戸惑っているうちに、ディミトリの体は小さくなっていて、側にはやはり、あの男が立っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ