白鹿一族
パシッ。
ラキの背中を守るように硬い鱗の揃った尻尾が閃いた。
「何がどうなって……」
「ありゃ、モーラかい?」
ニーアの驚きも頷ける。
「壮観だな。それに、どこもかしこも尖ってやがる」
ラキの前には、何十もの進化を遂げたモーラ達が守っていたんだからな。
「沢山って……こんなにいたのか! だから、交代しても疲れなかったんだな」
二足歩行する蜥蜴のような尻尾持ちで、全身鱗に覆われていて、大きな牙が目立つ。
「ラキのレベルが上がったのか? まるで、ラキの要求に応えているみたいだが」
「そこを開けや! この魔物風情が!」
ってか、歯向かっているのは、さっきの婆さんじゃないか?
「あんた、何でラキを狙うんだ?」
婆さんの三倍はあるモーラに、果敢にも一人で立ち向かっているんだから、いったい何者なんだ?
しかし、モーラ達には、相手にもされていない。
「開けい! 諸悪の根元どもよ。高貴なる存在である私を遮るでない」
「もし、その話しは、私が聞きましょうか?」
青い目をしているから、リーダーモーラだろう。そいつに乱暴に摘ままれてもがいていながらのこの発言だ。
それで、婆さんを受け取り、連れてきて訊いた。
「あなた様は、いったいどこのどなた様なんですか?」
丁寧に対応すれば、気を良くした婆さんは、べらべら喋りだしたんだ。
「よろしい。心して聞きなされ」
トスッと、ニーアに小突かれたが、苦笑いするしかない。
《 中略 》
「妄想激しい婆さんだな」
「どうすんだい?」
ニーアとコソコソ話していた。
いや、婆さんの話しが長くて、それにほぼ自慢話しときている。
「高貴な一族の白鹿なんて、あたいは聞いた事がないね」
「それじゃあ……まさか……」
まだ、自慢話しを続けている婆さんを見た。
確かに、高価で繊細な髪飾りをつけている。
「お美しい髪に髪飾りが映えますね」
「ん? これか? これはな、私の為にお姫様が、名だたる職人にわざわざ作らせた赤サンゴの髪止めぞ」
「さんご?」
ニーアは知らないんだろう。
私は、宝飾品の類いは良く知っている。
一番に金になったからな。
「その、オヒィサマがどうしてそんな貴重な品を?」
「私はね、何万人もいる側仕えから選ばれた、家政婦長なのですよ」
【ハウスキーパー:主人の代わりを務める執事のようなもの】
万能スーツが説明してくれた。
成る程、それで偉そうなのか。
『いるんだよな。家を取り仕切っていると、外に出ても命令したりする輩が』
私は、うんざりした。
『でも、そんな輩がどうしてラキの命を狙うんだ?』
「あなた様ほどの方が、どうしてラキを狙うんです?」
「名前など穢らわしい。この村の井戸で、朽ちてしまえば良かったものを」
ゴーーッ!
頭に血が昇る。
が、我慢だ。
「ラキは、身も心も美しい子供ですが?」
「馬鹿を言うでない。あれには、汚ならしい青い血が流れておるのだ」
ゴーッ。
短くなってきた。
「くーっ(耐えている)」
「ラキは、落とし子ってことかい。なら、あんたより高貴な身分って事じゃないか」
「な、なんてことを」
『そうだそうだ、ラキに謝れ』
「じゃない。まさか!」
「まさか、何さ?」
「白鹿って、巨大企業の一族か!」
キラッと婆さんの目が光り、しまったと思ったが遅かった。
年寄りとは思えない素早さで、今度は、私が刃を向けられたよ。
で、咄嗟に払ってしまったから、小柄な婆さんを吹き飛ばしてしまったんだ。
「ライル! やり過ぎさね」
そう言われても、もう遅い。
それより、私の驚きを察して欲しい。白鹿一族とは、あの上皇人達の隠語だ。
『だから、あの上皇人は、ラキに親切だったのか』
新事実の発覚の連続で、何か大切な事を忘れているが、とりあえず、死んでなければいいがと、倒れている婆さんに恐る恐る近づいたんだ。




