レンフルの秘密
「やっぱり、ハーストに探らせていたんですね!」
凄い形相だ。
「探らせるって、あいつは、あんた等の仲間になったんだろう?」
やばい、バレていたのか?
「白々しい」
「待て、何の事だよ? 私は、ただ、そのうるさ、素敵なベストを譲って欲しいと……」
「それ程迄に、私に恥をかかせたいと言うのですね!」
バレたのかと、内心慌てたが、どうも話しが見えないぞ?
「私に、私の……これを脱がせて……ハァ、ハァ」
興奮して、言葉が途切れるから、ますます意味がわからない。
「脱がせるなんて、まるで、あんたが女みたいな言い方するなよ。因みに、そんな(男を脱がせて喜ぶ)趣味もないからな。だから、その服は、何処で購入したんだよ。それだけでいいから教えてくれ」
宥めたからか、少しは、落ち着いたようだな。荒い鼻息が治まったみたいだ。
深呼吸をした後に、レンフルは、言った。
「この服が似合うのは、側近の私だけですよ。『地中虫』に等、穢らわしい」
ゴーーッ。
何の音かと思えば、全速力で自分の頭に血が昇る音だった。
「アコー、来い!」
『フィッシュ&ウォーター』の魔物好き、フローズに教わった通り、指笛を吹いた。
アコーは、性格はひねくれているが賢い鳥なので、訓練したらすぐに飛んで来るようになったのさ。
増援送れとベルナップに送ったが、すぐに返事を持ってきて、今、新しい村に居るんだよ、これが。
「コーッ、コッコッコッ」
私の頭に降り立つなり、凄い勢いで突っついているが……。
「これさえなけりゃあな」
私は、アコーの首を掴んでレンフルに向けて振った。
「何を、何をするつもりなんです!」
ベルナップからの返事を繰り返すアコー。
「ライル、助かったよ。ラキもありがとう。ダボッチ山に魔樹の森が出来ていたなんて、知らなかったよ。すぐに、討伐隊を向かわせるからさ。そんな事より、いつ、戻って来るの? お祖父様が、ラキの成長を首を長くして待っているんだから、急いでね。そうだ、ラキを養子にしたいとも言っていたよ。帰る時には、アコーで連絡してよ、それじゃあね。ゲコーッ」
終わったか。
「これは?」
「ご領主様の孫のベルナップ様からだ」
「ハハッ、ベルナップ様からあなたにですか?」
薄ら笑いしやがったな。
「あんたもディミトリの借用書を見ただろう?」
ハッとして顔を向けたレンフル。
紋章のついた巻物だったから、一目でわかる筈だ。
「まさか、お祖父様とは、ご領主様の事ですか……」
「そうだ。ラキは、才能があるから、えらく気に入られてな、屋敷までもらったんだよ」
「お屋敷!」
「ああ、ご領主様の母上様が過ごされていた豪邸をな」
フッ、下を向いちまったか。
「どうだ? ラキの方が似合うだろう? いや、そんなうるさい服なんかより、ツルスベの美しい布で作った方がいいか。願えば、ラキの為なら、何でも用意してくれるだろうからさ」
「そんな……あの、虫ケラが……おらだって……」
「あ?」
「おらだって、認められて望まれて、こんな田舎に来てやっただ。この珍しい服だて、ちゃんと計って作っただよ!」
はっ? オーダーメイドだって? ってか、澄ましたキャラはどうした?
「身体にあってねぇから、ガサつくんじゃねぇの?」
「んぐっ!」
咄嗟にか、腹を撫でたぞ?
あれ? えっ? まさか、腹が出ているのを隠していたとかか?
どうも、憐れみのオーラが出ていたのかもしれない。
レンフルの悲壮感が半端ない。
どうしようかと、微妙な空気が流れていたところ、心配した『村警団』が様子を見にきてくれて助かったぞ。
「どうしたんだ? こいつに何かされたのか?」
「チグモセ! 私の価値は、私の価値は、この服だけではないだろう?」
あ、戻ったな。
それより、この男は……。
ああ、よく井戸に食事を下ろしてきた奴か。
いったい、どんな関係なんだ? 変な村だな。
チグモセと呼ばれた男は、切り捨てる者がやるような冷酷さで、レンフルを振り払ってしまったのさ。
勢いで飛ばされて転んだレンフルは、拍子で破れた服をかき集めて、腹を隠しながら走って消えた。
気の毒な事をしてしまったな。
溜飲が下がりすぎて、罪悪感に苛まれたぞ。




