まどろっこしい
《前回までの話し》ハーストとすれ違いに底の村に入ったライル。
*
村人の居住エリアには亡骸はなく、静まり返っていた。
「あいつ等(村長)が埋めたのか?」
まさかな。
きっと、村人が、こちらに来て何処かに埋めたんだろう。
村長の家に行けば、壊れたままの瓦礫がそのままになっていた。
「ハーストが言っていた通り、自分達では、何もしないのか」
私は、少し残っていた塊を軽く踏んだ。
「なら、村人を大切にしろっての!」
塵となった塊は、山から降りてきた風に、私の言葉ごと運ばれて行った。
「最近、自分の口調までも悪くなっていくな……。いや、戻りつつあるのか?」
『クソッ、過去に捕らわれていてたまるか! 俺、私は、変わるんだ。あの、穢れない奇跡に誓って、邁進するんだ』
「その為には、早くこの件を調べて世界を救いに行かなくてはな」
私が、雑念を払った時、村長の取り巻きがやって来た。
「やべえ、また来たんか」
若者二人だ。
「見廻りか? 感心だな」
「言ってろよ!」
威勢はいいが、既に逃げ腰だ。
「悪いが、レンフルだったか? あの、カサカサうるさいベストを着ている奴。あれを呼んできてくれないか?」
「レ、レンフルさんに何の用事だや」
「まあ、落ち着けって。ほら、水を持ってきてやったぞ」
桶に半分くらいの水を差し出してやる。
「フ、フン! その手にのるかよ。ど、どうせ、毒入りだろや」
「そ、そうだ! 騙されんよ」
「まだ、疑ってんのか? ハーストがいつも水を持っていってるのにか?」
若い二人は、顔を見合せて確認している。
「知ってっか?」
「おりゃ知らん」
こっちを睨む二人。
「スープとか飲んでないのかよ、お前ら。寂しい食事だな」
「馬鹿にすんな! 肉入りのスープを飲んでるわ!」
「「あや!」」
二人は、慌てて何処かに確かめに行ったようだ。
「単純だな」
腕組みして待っていたら、婆さんを連れてきたようだ。
「エンテさん、本当の事を言ってやれや」
「んだな」
「ハァ、フゥ、いったい、あたしに何の用だっていうのかね?」
「私が、用があるのは、レンフルなんだがなあ」
「と、年寄りをこんなところまで呼びつけて、おまえさんは、礼儀もなっちゃいないね」
息が整ったのか、悪態をつき始めたぞ。
「だから、用があるのは、レンフルだ」
「そうじゃないだろや! スープに使っている水の事だろや!」
「んだな」
「ああ、ほら、水だ。使ってくれ」
「あたしに重い物を持たせるつもりかい。本当に礼儀知らずな男だよ」
「えっ、こいつから水を貰っていたのかよ!」
「嘘だろや?」
「喧しいねぇ。消費しかしない連中が」
押し黙った若者二人。
なんだ? 取り巻き連中の統制もとれていないのか?
桶を差し出したまま様子を伺っていたら、乱暴にもぎ取った婆さんは、若者一人にそれを持たせて、もう一人には、レンフルを呼んでくるように言ってくれた。
『あの婆さん、只者じゃないな』
しかも、しゃきしゃきと歩いている。
『何者なんだ?』
そうして、やっと向こうから、カサカサカサカサとナイロンが擦れるような音が近づいて来たのさ。
「私に何の用があると言うのですか?」
「一人か?」
「そ、そうですよ。ですが、私に何かしようとしても無駄ですよ。そら、あそこに『村警団』が待機してますからね」
『まどろっこしい。何でそんな事を?』
まあ、いい。
「突然呼びつけて悪いな。賢そうなあんたに、少し教えてもらいたい事があってな」
「教える? なんだ、そうですか。私はてっきり脅迫されるのかと……」
いつもと違い、ぶつぶつ言うレンフル。
「はっ? 脅迫?」
「あ、いえ……そんな事より、どうして私が、悪人のあなたに教えてやらなければならないのですか!」
呟きから大声に変わったな。
『村警団』に聴こえるようにか。
「毎日、水を譲ってやっている私につれないな。さっきだって、婆さんに水を渡してやったぞ? 少しは、恩を返してくれてもいいだろうさ」
それには、思うところがあったのか、態度が変わった。
「何を訊きたい?」
「その、あんたが着ている素敵なベストが気に入ってね、ラキにも着せてやりたいと思ったんだが、町でも見かけなかっのさ。だから、何処で手に入れたのか教えてくれないかと思ってな」
「くっ、あなたは、何か知っているのですか?」
「質問に質問を返すって、どう言う事だ?」
まったく、本当にまどろっこしい。
レンフルは、私を伺っていてイラつく。
「それしかないなら、譲ってくれないか?」
自分で調べれば、異世界物かどうかぐらいはわかるだろう。
面倒になって頼んでみれば、レンフルがわめき出したんだ。




