新しい村の日常
毎日のように村長から、「水をもっと寄越せ」とハーストが使いに来ている。
そのハーストの報告では、村長を含め、取り巻き連中の中にも、怪しい動きをする者がいるそうだ。
それから、尽きる事のない果実や酒の出所が不思議だと言っていた。
確かに果実は、日持ちしない物だ。
それに、あの、カサカサ音のするベスト。
あれに使われている素材が気になるな。
「フゥ」
「ライルゥ、なあに?」
私の傍を離れようとしないラキが訊いた。
「何でもないさ。それより、モーラの背中に何か生えていないか?」
「? モーラ、いい子。一緒に成長した~」
「成長か? モーラ達の場合は、進化したと言うべきじゃないのか?」
「進化? なあに?」
「うっ」
返答に困ったぞ。
その時だ。
上空から殺気が襲ったのは!
「コーーーッ」
私の頭を突っつくこの嘴は……。
「あ~、アコー来た~」
「コーッ、コッコッコッコッ」
「このアホー鳥! 止めないか」
ムンズと掴んで首を持つ。
「グゲェー」
「あ~、ライルゥ、放してねっ、ねっ?」
「放してあげてだ、ラキ」
怒られたと思ったのか、両手で頭を押さえているが、頭頂のハネがパタパタしていて、愛らしい。
アコーには、腹は立つが、きっと、ベルナップからの連絡に違いないだろう。
怒りを下げてラキに渡してやれば、すり抜けて私の頭上にとまりやがった。
「おい!」
バタタタタ(羽音)
「ライル、ラキ、元気なんだろうね。無事にディミトリを送り届けたかな。悪いけど、そちらに『トライパータイト』が行っていないかな? 例の問題で依頼をしたのだけど、随分と経つのに戻って来ないんだよ。何かあったのかもしれないから、探してくれないかな」
ベルナップの声だ。
それに、私は「『トライパータイト』依頼達成。ダボッチ山に魔樹の森有り。増援送れ」と返答したが……。
「ケーッ、ケッケッ」
嘲笑う鳥。
「こら、アコー。ちゃんと覚えろよ」
嘴を開けたまま頭上に居座ってやがる影が足下にうつっている。
「アコー、お腹すいてる?」
「コッコー」
ラキには、素直に返事しやがって。
仕方がないんでニーアに説明した後、何か与えてやってくれと頼んだぞ。
「ニーア、良かったな。これで帰れるぞ」
「ニーア、帰る?」
たまらずラキが、駆け寄って行く。
「そうさね。まだ、先の事さね」
「ニーア……」
うわっ、ニーアが微笑んでいるぞ!
ゲシッ。
「ケッ。姉さんに見とれてんじゃねぇ。邪魔だ」
ジュマルの奴が、ふくらはぎを蹴って行きやがった。
「見とれると言うよりは、驚き? いや、恐怖か?」
「ごちゃごちゃ言ってないで、仕事しな!」
「うっ」
蹴られはしなかったが睨まれたぞ。
「まったく『トライパータイト』の奴等は、足癖が悪い」
私が、畑の方に向かおうとすると、小さくて温かい仔犬が腰にくっついてきた。
「ライルゥ、一緒」
いつものように、肩に乗せてやれば、少しは、気がまぎれたみたいだな。
「さて、害虫取りでもするか」
「悪い虫、ラキも捕まえる」
「それは助かるが、また、塀の外に逃がすのか?」
「ぅん。逃がす」
堂々と言いやがったが、まあ、ラキだから許せるか。
*
村人達は、程なく回復して、こちらが何も言わなくても各々が出来る事を始めてくれた。
「朝食も作られていたし、害虫駆除も終わっているな……」
「悪い虫いない?」
「いないから、家でも建てるか」
「ぅん。石、積む~」
「頼もしいぞ、ラキ」
だが、実は、一番苦手な作業で……。
私の居た世界では、低所得者の住む家は、スチロール製だったのだ。
ドーム型のワンフロワー。
木の家なんて、世界遺産物だから、こちらでは、贅沢に木を使えて羨ましいと思うぞ。
それで、この新しい村には、テントしかなかったと言う訳さ。
で、私が出来る事と言えば、地固めと板運びぐらいで、それは、すぐに終わってしまう。
それで、村人達が家造りをしているのをボーッと眺めて考えていた。
『ハーストに任せてばかりじゃなく、村長と交渉したりして探ってみるかな』
だった。
「ラキ~。隣りに行ってくるから、ニーアかネビルのところに行っててくれ」
マァルと追いかけっこをして遊んでいたが、急に立ち止まったもんだから、マァルが背中に激突して、痛みに耐えているようだ。
口をつぼんでいる。
「フッ」
『それにしても、遊んでいる時は、リーダーモーラはいないんだな』
等と辺りを見回しながら、水を持って門を出たのさ。




