それから
「参ったね」
ネビルと交代してきたニーアが言った。
「お疲れ、何かあったのか?」
「いやね、あんた等がこんな事になっているなんて思わないから、ダングルの護送をどうしたらいいもんかと考えているところさね」
「アッサムの足の怪我は、(毒の為)治りが遅いんだろう?」
「それだけじゃないよ」
「?」
ちょうどニーアが上着を脱いだところに目を向けてしまい、顔を蹴られた。
「イッ……悪い」
一応、謝ったが、私等と変わらない薄い胸だったぞ……。
「ふん! あんた等が来た時は、ダボッチ山で何か異変がなかったのかい?」
「魔樹がいたな」
「そうさ。あれに苦戦しなけりゃ、ダングルの奴をもっと早く捕まえられていたんだよ。まったく忌々しい」
悔しそうだな。
ここは、本当の事を言わないでおこう。
「そうか! 山で反響していたのは、アッサムの爆弾の音だったのか」
「ああ、ここまで聞こえていたのかい。あれで、手持ちが無くなっちまって手詰まりさね」
少しばかり責任を感じるな。
「それなら、この新しい村作りに協力してくれないか? 代わりに護送の方も、何かいい手立てがないか考えるから、どうだ?」
「今のところあたい等には、それしか方法がないんだろうね」
言うだけ言ってニーアは、ラキの隣りに横になってしまった。
「丸い塊がいないな」
ラキがいつも抱えているから気になったが、きっと、ネビルのところに居るんだな。
「考えたら、マァルにも支えられているな」
「ん……」
ラキが寝返りをうってこちらを向いた。
『安らかで清らかな寝顔だな』
私は、誘われるように仮眠をとって休んださ。
*
ダングルには、ディミトリの為に造ってもらった枷をつける事にしたよ。
「まさか、こんなところで役に立つとはな」
「……」
ダングルは、先日、村人達から無言の非難を受けて、急におとなしくしなってしまったんだ。
「悪いが、暫くこの村に居てもらう事になる。ここでの長い一日を、皆の悲しみを感じながら過ごしてくれよ」
「くっ」
一瞬、こっちを睨んだが、項垂れたダングル。
もっとも、善人でもない私が、言えた事じゃないが、反省してもらわないとラキの為にも困るんだ。
また、狙われたらかなわないからな。
「ライルゥ、ハースト来たぁ」
テントの幕を開け放しているところに、ラキが駆けてきた。
「えっ? 早いな」
ラキを抱き上げて、門に行ってみれば、本当にハーストが立っていたんだ。
私に余計な事を言われる前に、先に口を開いたハースト。
「村長からの使いだ」
「使い? って何のだ?」
「水を分けてもらえないか?」
桶を差し出された。
『ああ、そう言う事か』
「それから、ラキも借りたいって言うんだ」
「いやぁ……」
ラキが、ぎゅっと抱きついたんで、怯えている事がよくわかった。
「大丈夫だラキ。ずっと一緒だからな」
背中をさすってやりながら、ハーストを睨み付けてやった。
すると、ハーストが硬直したのがわかる。
私が本気で怒った事が伝わったようだな。
「ラキに関わるなら、水は、一切やらない。そこは、村長に言ってくれ。が、少しだけなら分けてやらないでもない」
「……助かる」
ハーストが持ってきた桶に、水を半分入れてやり、皮の水筒も持たせてやった。
ハーストには、皮の水筒の意味がわかって、手近なところに隠すだろう。
「また来る」
それだけ言って戻って行った。
それから、ラキを抱き上げたまま畑の水やりをこなし、狩りに行き木を伐って(倒して)持って帰ってきたところで日が暮れた。
新しい村の中の事は、ニーア達に任せていったんだ。
悪人を捕まえてくれた冒険者として、村人達から感謝されているからな。
中の様子はと言うと……。
「荒れる者も出ずに協力的なようだな」
『フゥ、一安心だ』
「ライル、汚れ物は洗っといたよ。ラキー、お腹すいただろう? こっちに来な」
肩に乗っていたラキを降ろして、広場に連れて行ってくれたようだ。
その仲の良い姿を見送っていると……。
「ケッ、貸しな」
ジュマルが、左手に抱えていた獲物を取って、持ってくれたぞ。
どうやら、解体してくれるようだ。
「助かるな」
「ケッ、ダングルの見張りは、アッサムがしてるかんな」
ツンツンしながら行ってしまった。
「じゃあ、木を割っておくか」
薪にしても、材木にするにしても乾かす必要があるからな。
兎に角、こちらからは何も言わず、村人達の自主性に任せるつもりで、私が働くしかない毎日だ。




