尻を蹴られる
「急いで早く、こっちに運んで!」
着いた草々、おとなしいネビルに指示された。
それからも、症状の軽い者達に水を配らせられたさ。
すると、ニーアがマァルを伴って現れたんだ。
「ライル、コレを見な」
渡された袋の中身は、白っぽい粉だった。
「何の粉なんだ?」
「ダングルの奴が、隠して持っていた物さね」
「まさか、コレってダングルがやったのか?」
「アッサムが急に倒れちまったから、ダングルの奴を調べたのさ」
「アッサムって、あのチェーンの先にも『毒』が塗ってあったとかか?」
頷いている。
「あたいも迂闊だったー」
後悔しているニーアは放っておいて、振り返った。
「ネビル! これが今回の『毒』みたいだぞ」
言うが早いか、「貸して」と、取り上げられてしまった。
色や、微かにする臭いとか、あれこれ試した後に漸く何の『毒』か判明したみたいで、ネビルは、持ち物の毒消し草を煎じ始めたんだ。
そして、今度は、まだ明るいうちにと毒消し草探しに出されたと言う訳さ。
『人使いが荒いな』
「ニーアも付き合ってもらって悪いな」
「今度の事は、ダングルを早く捕まえられなかったあたい等にも責任はあるからね」
「悪いのはダングルだろう。それにしても、脱獄して迄私を殺したかったのか? アイツ」
レイデン山には、跳躍蛇が出る為に手付かずの野草が茂っているんだ。
この魔物は、特に害はないんだが、ヌメヌメして身体中粘液だらけで、気持ちが悪いんだ。
だから、村人達は、一切レイデン山に近付かないんだとさ。(勧誘に行った際に嫌味を言われて知った事だ)
私は、跳躍蛇を突っつき弾きながら山道の先を歩いていた。
「逆恨みにしては、行き過ぎだとあたいは思うよ」
「ダングルの事は、ベルナップの後継者問題だと思っていたんだがなあ」
「そうなら、狙われても仕方ないね」
「どう意味でだよ?」
「ライルに、ベルナップ様の元に戻って欲しくないって思われたのさ」
「あぁ、そう言う事か。じゃあ、後継者問題で間違いないな」
話しに夢中になって、跳躍蛇が一匹ニーアの方に跳んでしまったさ。
「イヤーーッ!」
驚いた拍子に、ニーアがいつも被っていた毛皮付の帽子がはずれて素顔が見えた。
顎の下で切り揃えた髪から、花の形をしたピアスが覗いている。
『宮殿に飾られていた、陶器の人形みたいな顔をしているんだな……それに』
「ニーアも女なんだな」
そこだけ口にしてしまったもんだから……。
ゲシッ!
ニーアに尻を蹴られてうっかり前に倒れて、跳躍蛇に集られて大変だった。
『ウゲッ、気持ち悪い』
そんなこんなで、私は、苦労して毒消し草を摘んで帰ったんだぞ。
*
「デミトリーーッ、生きてるかあ?」
底の村に戻ってから気になって探していたら、ハーストが教えてくれたのさ。
「アイツ等は、朝は、果実を食べているから無事だよ」
「えっ? 村人全員が同じ食事を摂るんじゃないのか?」
「こんな村で、貴族様みたいな生活をしているんだぜ、働きもしないでさ」
軽蔑したように言うハースト。
「まあ、王様だからなデミトリは」
「そうだよ。魔王様だもんな」
『ハーストには、そう聞こえたのか。だから、大魔王なのか!』
ライルは、どうでもいい事を理解した。




