山の反響
ドーン、ドドーン。
(ドーン) (ドドーン)
「なんだ? 山崩れか?」
まだ明けやらない早朝、盆地のこの辺りに反響する重い音。
モーラ達が報告に来ないので、こちらへの攻撃ではない事はわかるんだが。
とすると、どこかの山で何かが起こっているんだろうか?
まさか、魔樹討伐でもしているのか?
私が、そう考えている間に、底の村からはあらぬ疑いをかけられていたようだ。
新しい村の周りをウロウロしていた村長の取り巻きが、モーラの威嚇で逃げて行ったようだった。
「ライルゥ、二人来たぁ」
リーダーからの報告を受けたのか、ラキが言いたくなさそうに報告する。
「なんだ、まだ、隣りの村が怖いのか?」
「ぅん……」
服の裾を握ってウジウジするラキは、子供らしい。
「ラキには、私とモーラがついているだろう?」
そう言えば、ラキの癖毛の頭頂のハネが、返事より早くピコンと立つんだ。
「あぅん! ライルゥ、モーラ、いつも一緒ね」
可愛い笑顔が戻ったこの日、まだまだ、恐ろしい出来事の起こる前触れでしかなかったんだ。
*
ベチャ、ゴン、ドーン。
「出て来い、卑怯者!」
塀に向けて、泥やら石を投げつけてきた音がする。
「モーラの警備をくぐってこれたのか?」
「ライル、子供の声みたい……」
開け放たれた門の前で、困っているモーラ二匹と、そこに、先に来ていたネビル。
「子供が来たって?」
隠れていたラキは、私を見つけるとすかさず脚と一体化だ。
「厄介者! 出て来ーい」
「卑怯者ー!」
さっきから、酷い言われようだな。
「おい! 何が言いたいんだ?」
私が前に出ると、握っていた石をぶつけてきた少年二人。
ラキに当たらないように気をつけたが、痛くも痒くもない。
「悪ガキだな。何もしていない者に石をぶつけるなんてな」
「嘘つくな! 地中虫を使って、村の食べ物に毒を入れただろう!」
「毒だって?」
「う、村の大人が……」
「父ちゃんが……」
さっきまでの強気が崩れ、急に泣き出す少年二人。
が、地中虫とはラキの事じゃないかと思ったら、この少年も村もどうでもいいと思っちまったのさ。
「ハスト!」
しかし、急に叫んで慌てて駆けて行くネビルをラキが追いかけて行ってしまったんだよな……。
フゥ、しょうがなく後に続いたさ。
「ハスト! ハーストー! どこー?」
ネビルは、倒れ苦しむ村人を避け、ハーストを必死に探している。
ラキは、底の村の門の前で立ち止まっていたが、私を見つけるとすぐに脚と一体化だ。
「ハーストの安全を確認しに入るぞ」
「……」
脚と一体化の時は、もう私の脚なのかラキは、話さなくなるんだ。
それで、その大きくなった脚を振り上げたりして確認を取る。
ピタッ。
『落ちてこないな』
「……」
声はしないが、頭頂のハネがピコピコ返事をした。
「まるで、古い機械みたいだな、ラキの癖毛は」
そうして、一歩足を踏み入れると……。
村の中は、のたうち回る軽症の者から、泡を吹いて絶命する者までが、ゴロゴロした惨状だった。
一方ネビルは、呆然として前から歩いてきたハーストを見つけて安堵で抱きついた。
「ハスト! 生きてて良かった、わあん(泣く)」
「……っ、ネビー……」
それで、正気を取り戻したハーストは、薬師の勉強をしていたネビルに村人を助けて欲しいと頼むんだ。
最初、自信のなさから怯んだようだが、最後には、ハーストの熱心さに励まされて、私達と合流して指示を出してきた。
「ハストとモーラは、息のある村人を集めて。寝かせる時は、横向きにしてね。喉に吐いたものが詰まるかもしれないから! それから、ライルは、新しい村から水を沢山汲んできて!」
「よし、わかった」
ハーストは、走って行った。
シャキーン。
モーラのリーダーは、近くの者達を救出するようだ。
ネビルも、それだけ言うと集められた村人の判別を始めてしまった。
着いて来ていた少年達や、水を飲まずに無事だった者達もポツポツ集まってきて、ネビルを手伝っているようだ。
「何で、うちの村の水を汲んでくるんだ?」
「……」
こうしていても仕方ないと、言われた通り水汲みに戻ったと。




