魔樹
「ほとんど獣道じゃないか!」
ネイビが獣道に慣れなくて、転びそうになる度に文句を言うハースト。
「モーラ」
ラキがネイビのサポートを頼むが、山道ではモーラの機動力も落ちるようだ。
「モモモッ」
「ウモッ」
「ギギーッ」
木の根に絡まってしまい、ラキの後ろについていたリーダーが、シャキーンとポーズを決めながら仲間を助け出している始末。
「ごめ、ごめんなさい」
「ウモモーォ」
モーラDは、ネイビの涙に堕ちたな。
「フゥ、報われないのになあ」
「報われない? なあに?」
ラキは、身軽に飛び跳ねていたかと思っていたが、いつの間にか私の目の下に立っていて、小さな両手を上げて訊いてきたんだ。
「ラキには難しいから、先ずは、喜怒哀楽を覚えてからな」
「嬉しい、怒る、悲しい、楽しい?」
「そうだ」
ピョコリと跳ねた髪。
「ぽくは、ライルゥと一緒で嬉しい。モーラとみんなと山登り楽しい」
「ラキ。完璧だな」
あいにく、手がふさがっているので笑い掛けたら、ラキの髪がふわふわした。
ラキにあげた帽子は、マァルの巣になっていて、ラキの鞄の中にある。
「うぜぇ、ペッ」
相変わらずの悪態をつくディミトリ。
シャキーン。
『モーラのリーダーが、構えているなあ……やれやれ』
しかし、ディミトリにツツーッと寄ったラキは、「トオル?」と言って顔を覗いたんだ。
すると、大魔王のディミトリがフィッと顔を背けたんだよなあ。
『まさかな』
「早く進もうぜ! 今夜のねぐらを決めないと、また眠れなくなるじゃないか」
ハーストに言われて、そうだったと底の村を目指した。
*
ラキの信者が山には沢山いて、毎朝、貢ぎ物で一杯になる寝床の上。
ところが、今回は、モーラ以外からはないのだ。
『変だなあ』
私だけがそう思っているだけで、ラキは、何とも思っていないようで……。
で、ある時、全員が魔樹に吊り下げられてしまいオタオタしていたら、何処からか矢に狙われて、はからずも魔樹に助けられてしまったと。
「山賊に狙われていたのか。だから、小動物が近づかなかったのか」
何だか府に落ちた気がした。
魔樹は、私達から魔力を奪った後、ポイと放り出してくれて助かったんだ。
が、誰の魔力が多かったのか、見事な黄金色に輝いて、一帯が魔の森に変わってしまったよ。
「ごわーっ!」
「ヒイーッ」
遠くから叫ぶ声がしたが、私達を狙った山賊か何かだろうからと無視したさ。
ラキは、モーラのリーダーとディミトリと一緒に伸びていたから、助けに行こうと言わなかったしな。
「イテテ、大丈夫かネイビ?」
「うん。ハストは?」
「これくらい何ともない」
ハーストは、腕から落ちたようだ。
「うん」
ネイビは、ディミトリの上に落ちたから、無傷のようだな。
『しかし、コイツら付き合っているのか?』
「ゴホン」
見つめあっていた二人は、咳をした私に気付いてくれたな。
「あ、ラキは無事か?」
「ああ、魔力を吸われて伸びてるがな」
「ラキも大魔王も魔力ありそうだからな」
「ハスト、早く抜け出そう」
ネイビがハーストの袖をクイッと引いた。
「そうだな。魔力が貯まったらまた餌食にされるからな」
ハースト達に急かされたので、モーラ達を集めて背に乗せて走り抜けたさ。
「あれで、しばらくは誰も村に来れないな」
振り返りながら、帰りの心配をしたぞ。
「ライル~」
ラキを担いだハーストに呼ばれて先を急いだんだ。




