モーラの成長
「悪いが、旅の資金稼ぎに協力してくれないか?」
皆にそう話すと、若い三人は頷いてくれた。
ハーストとネイビの武器や防具を購入して、ギルドで講習を受けさせたら、旅の資金がすっかり不足してしまったんだ。
それに、凶暴なディミトリを繋ぐ拘束具を特注したので、宿代も危うくなっている。
「フゥ」
「ライルゥ?」
「何でもない。それより、モーラ達は少し太ったんじゃないか?」
「モーラ、太ったぁ?」
「うーん、大きく成長したと言うのか?」
昨日の魔物との戦闘が終わった後、何匹かがラキと同じ位の背になっていたんだ。
それをラキは、いつもと変わらず、いい子いい子してやっていたが……。
「モーラ、いい子。少し大きくぅ? 成長したあ?」
少しも大きくならないラキは、私を見上げてそう訊いた。
「フッ。ラキは、賢く成長したな」
笑ってラキを抱き上げれば、ニパッと笑う。
この世界の消滅が止められたら、美味しい物を探しだしてラキに食べさせてやりたいな。
「待ってろよ、ラキ」
「やあ、一緒」
口に出てしまって、ラキのご機嫌を損ねるのは、もう、お約束だがな。
ディミトリのストレスが溜まらないように、適度に魔物を狩ってもらうのだが、悪魔的に強くなったディミトリの暴走に私の頭が痛くなる。
今日は、町の街道沿いでネビルの野草の勉強がてら歩いていただけなのだが……。
「うぉら! どいつも手応えがねぇな」
暴れる大魔王のディミトリに、猛然とアタックしているのは、跳ねる狸達だ。
万能スーツの解説では、奸邪狸と出ているが……成る程、三匹で連携して罠を仕掛けているから、ディミトリが手こずっている。
しかし、私もモーラ達も、ディミトリから身を守る為に手は出さないのさ。
ディミトリが縄張りに入ってしまったので、街道沿いに出てきてしまい、隠れる物がなくなった為に、ディミトリに殴られ電撃を食らわされて三匹は昇天した。
「よしっ、もういいだろう? 帰るぞ」
「ああ? なに温ぃ事言ってんだ! 俺様に牙を剥きやがったコイツらは、全滅させんだよ」
逆立てた髪が赤く染まったディミトリ。その首の骨を折るつもりで手刀を当てた。
「ガハッ」
やっとおとなしくなったディミトリを拘束具で繋ぎ、皆で解体作業開始だ。
その間は、モーラ達にラキを連れ出してもらうと同時に、辺りの警戒をしてもらうんだけどな。
「ってぇな、クソが!」
「悪い。だが、こうしなけりゃ、お前は止めないだろう?」
「チッ、シャクに障りやがる」
私には勝てないと思っているからか、それからは、邪魔せずついては来る。
「トールのオッサンはどうしてる?」
「知らねぇな」
「お前達、いったいどうなっているんだ?」
前から、不思議に思っていた事を訊いてみたが、「これは、俺様の身体なんだ。オッサンなんて知らねぇ」と、ピシャリと言われてしまったのさ。
ディミトリは、手に負えない程の悪人だし、トールのオッサンは、嘘つきで詐欺師のようだしで、昔を思い出す……。
ろくでもない奴等の仲間だった、ろくでもない自分を……。
「ライルゥ、頑張れぇ」
しかし、ラキの無邪気な応援で、一瞬にして心が洗われたぞ。
「ラキ、あと少しで終わらせるからな」
「うん、ラキ、モーラと待ってるぅ」
リーダーのモーラは、ラキより一回りも大きくなっていて、ラキの後ろからは、大きな鼻が見える。
頼もしい仲間もいる事に、私は、心から感謝した。




