次の日の約束
「ちゃんといたな、よぉ、ラキ、マァル」
猫目を光らせたロウリと明るいシェイ、それに、素っ気ないファントが来た。
「あ~、みなさんこんにちはぁ」
「ミャウ」
三人にハグするラキと愛想を振り撒くマァル。
ガタガタガタ。
「ングッ!」
「ああ、ディミトリーが騒がしいが、気にしないでくれ」
私は、テーブルの下で騒ぐディミトリーを踏んで押さえつけた。
ラキやマァルが若者に可愛がられていると、残りの三人もやって来た。
「早いな、ライル」
「……」
リーダーのハーストと、その後ろに隠れたネイビだ。
「ババーン! 最後に、俺様の到着だー」
と、少し遅れてチェイフィーだな。
「みんな揃ったようだから、また、美味しい物を頼むよ」
「任せろ」
ロウリがはしゃいで走って行き、残りもそれぞれ好きな物を買いに行った。
「ラキも好きな物を買いに行って来るといい」
皆と同じに銀貨を渡してやる。
「ん~、ライルと一緒がいい」
膝になついたラキを撫でていたら、ハーストとネイビがどうしてか戻って来て座ったんだ。
いないと思ったマァルは、ネイビにくっついていたようだ。
「フニー」
「そこに縛られているのは、ディミトリーだろ?」
ハーストは、指差して確認してきた。
「そうだけど、こいつに善し悪しはないから、話しても無駄だぞ?」
と、教えてやる。
『うん? なんだか暗い顔をしているなあ?』
「夜、色々考えたんだ」
唐突だったが、私は、ハーストが話すのを待ってやった。
「今日、ちゃんと約束を守ってくれたあんたに頼もうと思ってさ」
「こっちもみんなに話しがあるから、その後でいいか?」
思い詰めたような顔をしていたハーストは、ハッと顔を上げた。
「俺様がいっちばーんだと思ったのによぉ」
チェイフィーは察しているのか、おどけた様に声を掛けてハーストの肩を叩いた。
「心配しなくても、お前が一番だ。俺達、まだだから行って来る」
立ち上がったハーストに、少しヨロヨロしたネイビがくっついて行ったが、ネイビの体調が悪くてここに居たのかもしれないと思い、走ってネイビの肩を掴んだら、そこにしゃがみ込んでしまったんだ。
「大丈夫? ね? ね?」
ラキが心配する中、ネイビの破れたズボンの隙間から、血の滲んで蒼く腫れ上がった腿が見えた。
「あ、ライルゥ!」
一緒に見てしまったラキの悲痛な声がする。
ネイビは、サッと破れ目を隠したが、今さらだな。
「医者に行こう」
「駄目だ」
何故か、ハーストは反対をする。
「さすがに、これは酷い。熱もあるんじゃないのか?」
私が熱をはかろうと手を出せば、ネイビが「平気……」と言って避けてしまった。
それを、いつの間にかネイビの正面にいたラキが、デコを合わせて測ったんだ。
「あ~、少し熱い?」
キョト顔で考えるラキ。
ネイビは、少し驚いたようだったが、ラキを嫌がる事もなく素直にされるがままになっていた。
それで、ネイビを抱き上げてベンチに座らせたよ。
無言になってしまった空気を破るように、楽しそうに買い物をしてきた三人が戻って来て、少しホッとしたかな。
「こないだ、ウーナ(妹)が美味しいねって喜んだから、僕、また、福福鳥を買ってきちゃった」
シェイが、嬉しそうに肉汁の滴る串焼きを広げた。
「見てくれよ! 金持ちのミッターがいつも自慢していたガトナの実を買ってきたぜ!」
続いて、不思議な模様のついた果実をロウリとファントがテーブルの上にソッと置いた。
「驚くなよ。俺様は、黒い粉(砂糖の一種)を買ってきたんだー」
と、巾着のような物を取り出して置いたのだ。
「ワー、スゲー」
と、盛り上がってはいるが……。
「みんなで食べられない物ばかりだな」
お土産用に買った物ばかりだったんで、しょうがないからラキと人数分の野菜スープとパンを買いに行ったさ。
『あいつらに頼んだら、また、違う物を買ってきそうだからな、フゥ』
で、ネイビもスープにパンを浸しながらゆっくり食べていたので、もう少し大丈夫かと話しを切り出したさ。
「実は、ディミトリーの件で皆に報告があるんだ」
福福鳥をガツガツ食っているマァル以外は、こちらを向いた。
横では、少し心配そうにそれを見ているシェイがいたがな。
「ディミトリーの悪行のつけで、小間物屋では、余計な仕事が増えてしまって困っているんだと。それで、若者を四人募集するって言うから、どうする?」
私は、わざとらしく見回した。
「嘘だろう? そんな上手い話しってさー」
意外にもチェイフィーが素直に期待を寄せたな。
他の者は、慎重だ。
「人望ある私が、ケッセラーの旦那に探すのを任されたんだ」
「俺様を推薦してくれよ!」
「いいとも」
「イ、ヤッター!」
「僕でも大丈夫かな?」
シェイがすがるように訊いてくる。
「シェイは、小柄で非力な事を心配していて、答えないファントは、口下手を心配している。ロウリは、それが本当なのか証拠が欲しいんだろう?」
リーダーのハーストが皆の説明をしてくれた。
「ライルが、ディミトリーの仲間を否定しないじゃん。だから、また騙されるんじゃないかって、普通考えるよな」
ロウリが気持ちを吐露してきたぞ。
「じゃあ、先に小間物屋に行ってみるか」
私は、ディミトリーを右に担いで、左手にネイビを抱き上げた。
五人は怪力に驚いていたが、何も言わずに着いて来たな。
が。
「ラキ、歩きにくいんだが……」
「ん~!」
左足と一体化して、強固に張り付いているんだよな。
「ラキは、僕の妹のウーナと同じだね」
シェイがそう言うと、それぞれが吹き出したり苦笑いしたりしていたが、いったい何なんだ?
フゥ。仕方なく、そのまま行ったけど、どうにも悪目立ちして困ったさ。




