躾
せわしなく荷運びする漢達の前に、ヤンチャな青年が揃って並べば、睨み合いが始まった。
「あーっ! お前、居なくなったディミトリだろう?」
「人を指差すでない」
「なんだその態度は! どれだけダンナに迷惑を掛けたと思っているんだ!」
『コイツと居ると、ずっと謝り通しになるのか……』
すると、ラキがまたも謝ろうとするから、ラキは謝らなくていいんだよと言って、後ろに居てもらったんだ。
「トールのオッサン。また、子供のラキに謝らせるのかよ? 自分のする事で、こんなにも皆が怒り周囲から去っていくんだから、いい加減わかれよ」
アルセルゴの町に着く迄の間に、しおらしくしていたから、反省したのかと思っていた。
が。
「ワシは、ディミトリではないのだ。ディミトリのやった事など知らん」
一同唖然としている。
『うん、清々しい程の子悪党だな。しかし、今、牢に入れられたら困るんだよ。フゥ』
「ディミトリが戻ったと聞いたが、何処にいる?」
ズンズンと、血の気の多そうな大柄な男に、顔色の悪い細い男が付き従ってやって来た。
「大棚のご主人、お久しぶりです」
「こんにちは」
二人で挨拶をすると、ガッハッハと笑った主人は、バシバシ背中を叩いてきたんだ。
「ライル、それにラキ。ディミトリを見つけたんだな」
「はい。カンツールの街で、怪しい教団を作っていましたよ」
縛ったままのディミトリを差し出した。
「ちぃと、太ったか? ディミトリよ」
ご主人のケッセラーが声を掛ける。
珍しく言い返さないトールのオッサン。
「ディミトリ、お前、黒炭をすり替えて、そのお金を着服しただろう、違うか?」
『うっ、実にタイムリーな話しだぞ』
若者達がザワついている。
「うるさい。ワシの働いた賃金も出さん奴など、主人ではない」
ゴツッ。
容赦なく殴った音がした。
「ディミトリ! 小さい頃から悪たれだったが、成人になったら自分で責任を取るもんなんだよ。入る前に教えたな?」
大柄な主人の迫力に、誰一人動けない。
私もビビる。
「昔馴染みのあの男(村長)に、頼み込まれてお前を雇ってやったが、働かないどころか損害まで与えられるたあ、考えもしなかったな」
「それは、コイツ等が売って欲しいって言うのでな、仕方なくした人助けなのだ」
『いやいや、それを横取りしておいて、よくもまあ言えたもんだ』
ガツッ。
今度は蹴られた。
「グフゥ」
トールのオッサンが気を失ってしまったので、主人のケッセラーに引き摺られて行った。
お付きの人も大変だな。
「アイツ、本当に死ぬぞ」
「ご主人をあんなに怒らせちまって、だが、自業自得か」
ヒソヒソ話しながら、荷運びを再開させていた。
「どうする?」
私が、残された青年達に訊けば、リーダーらしい髪を後ろに縛った男が交渉してきた。
「今ので全てわかった。俺らが作った黒い宝石は売られたんだな」
「正直、幾らぐらいするんだ? それに、そのお金をどう使うつもりだったんだ? まさか、盗賊になるとか言うなよな」
「質問が多すぎるぜ。でも、資金がないなら盗賊もやむ無しかもな」
「何に使うかが抜けてんぞ?」
「ちぇっ、どうせ言ったところでブツも金もねぇんだろう?」
「なら、話せよ。じゃなきゃ、こんな所にまで連れて来る訳がないだろう?」
帰ろうとしていたリーダーは、少し考えてから戻ってきた。
「自分達で何か仕事を始められないかと思っていた……」
「炭を作るのか?」
「いや、それには、沢山の木が必要なんだ。だから、他を考えている」
「私は、孤児だが皆もそうなのか?」
「いや、養う者がいる奴もいるし、いてもろくでもない親だ。もういいか?」
「ちょっと待てって。躾が終わるまで暇だから、食事をご馳走するよ」
「全員にか?」
「勿論だ。お土産もつけてやる」
「ヨッシ。おい、優男がご馳走してお土産もつけてくれるってさ。行こうぜ」
「ウッヒョ、助かる」
「肉だ肉」
と、昔の自分を見ているみたいで、若者を放っておけなかったのさ。




