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ベルナップの舎弟

 コンシーナの街とカンツールの街の間の検問所まで馬車で送ってもらい、そこからは、歩いて帰る事にした。




 「ベルナップの屋敷は大きいから、ここからも見えるし方向を見失う事もないな」


 「ほーこー?」


 「そうだな……方向を知る為には、動かない物を目印にするんだ」


 「ベルゥの家~」


 「そう。あれは勝手に動いたりしないから、この街の中なら何処に居てもわかるだろう?」


 「ふわあ、方向を知るぅ。ラキ、わかったあ」


 「そうか、また賢くなったな」


 「ぅん」


 「ニャア~」


 マァルも、街の中は安全だと知っているからか、ラキの肩にくっついている。


 マァルは、領主の館でも大人気で、裏で随分と可愛いがられたらしく、首に緑の艶光りするリボンを巻いてもらったようだ。


 「マァル、首にリボンを巻いただけで、上品に見えるな」


 「ミャウ」


 鳴き方も澄ましているな。


 「綺麗なリボン?」


 ラキは、マァルを目の前に掲げた。


 「良くあうね」


 「良く似合うだ」


 「あ~、ん」


 マァルがラキの頬を舐めたから、じゃれあいが始まってしまった。


 せっかくだから、もらった家を見に行こうと思っている。


 ベルナップの屋敷を通りすぎたもっと先の、貴族と庶民の境界線辺りに、庭つきの戸建てを貰ったんだ。


 場所は、領主館にある地図で確認してある。



 『確か、小さな学校があって、その先の空き地の前に柵で囲まれた……』




 「有ったぞ、ラキ」



 「ここ?」


 「多分な。待ってろ、今、鍵を開けてみるから」


 渡された鍵束から、柵と同じ色の鍵を差し込めば、カチリと軽快な音がして開いた。


 まだ、家は見えない。


 「ライルゥ、家無い?」


 アーチや何やらに、蔦を絡ませてあるので、外から中が見え難くなっているようだ。


 進んだ先の左側と右側に建物があり、最初に右の木造に向かった


 「領主の祖母さんの別荘らしいが、落ち着いた雰囲気だな」


 「ライルゥとラキとマァルの家?」


 「そうだぞ。ここから、さっきの学校にラキを通わせてやるからな。もう少し辛抱してくれな」


 順番に扉を開けたが、どれも広く調度品もそのままに置いてあったぞ。



 『しかし、何もかもが高級そうで、部屋は落ち着かないな』


 きちんと手入れもされているようで、ラキが気軽に飛び跳ねたりは出来ない感じだ。




 施錠してから左側の建物に向かった。


 『こっちは、使用人棟か?』

 


 炊事場や洗濯場、薪割り場に馬房。


 生活で必要な物が揃っている。


 棟は、長い平屋で、中は、宿屋のように単純な造りだった。


 こっちの方が落ち着くなと、使うならこちら側にする事に決めたのさ。






 かくして、ベルナップの屋敷に着くのがすっかり遅くなってしまったと言う訳なんだ。





 「ライル、遅いじゃないですか!」


 着いてすぐにベルナップのもとに案内された。


 ベルナップをはじめ、戻って来ていたルーミスもピリピリしている。


 「ルーミス、すっかり元通りだな」


 「ご心配お掛けしました」


 榛色の瞳が笑っていない。




 「あ~、あのオッサン何かしたのか?」


 「何かじゃないよ。キミがいないから、誰も止める人がいなくて大変だったんだから」


 「オッサンは?」


 「薬で眠ってもらっている」


 「じゃあ、いいじゃないか」



 たまりかねたのか、ルーミスが勢いよく喋り出した。


 「いい訳ありませんよ! ディミトリは、主に隠れて勝手に至高のお酒や宝飾のついた衣装を注文されていたんですからね!」


 「ヒュー(口笛)、オッサンやるな」


 大した悪党だなと褒めたら、ルーミスにキレられた上に私の指示ではないのか! と疑いをかけられて、八つ当たりもいいところだ。


 「ルーミス、落ち着いて。幾ら、仲間が多大な損害を我が家に与えたからと言って、ライルを首謀者だと考えるのは、言い過ぎだよ」




 「お前も、端々トゲがあるな」


 笑って誤魔化された。


 「あ~、トールが悪い事したの。ごめんなさい」


 大人達を綺麗に仲裁したラキ。



 「ラキ君、話し方が上達したね。すごいや!」


 ベルナップは、ラキを抱き上げた。


 「きゃあ、エド先生が教えてくれた~」


 ラキがいるだけで、その場の雰囲気がクリーンになった。



 ゴロゴロゴロッ。



 「ん? ベルナップ、足下のゴミはなんだ?」



 小さな砂利が、私の足にかかった。



 パシパシパシッ。



 万能スーツがあるから痛くもないが、何だろう?


 ラキもすかさず質問している。


 「ベル、それ、なあに?」


 「えーと……」



 挙動不審になったベルナップ。


 が、しかし、ラキの澄んだ目にジッと見詰められたらなあ。


 「うっ、あれはね」


 覚悟したようだ。


 「ん?」


 「あれは、どうも僕の『舎弟』のようなんだ……」


 「は? この砂利がか?」


 嘘はだめ、と良心に見張られているからか、ガックリとしながら頷いたんだ。




 「ブーッ」


 「「ライル(様)!」」


 私が吹き出したら、主従から避難されたぞ。


 「ラキ君、ライルが僕をバカにするんだよ。酷いよね」


 なんて、泣きつきやがるから、その後私は、ラキに反省させられたよ、やれやれ。

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