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やっと理解した

 塔に入ると、次々と上から工兵隊が落下してきて、咄嗟に回収して回ったのさ。


 「ありがどうぅっ。死ぬがど思いまじだぁ~」


 みな、兜を外されていて、顔が赤く腫れている。


 「いったい上に何が居るんだ?」




 「発光じだ魔物……」


 最上階に到達した後、勝手に身体が動いて、塔の階段から飛び降りさせられたそうだ。


 顔も腫れているが、涙と鼻水で酷い状態だ。


 ニーア達に工兵隊を任せて、とにかく上に急いだ。


 見上げると、天辺は黄昏色に染まっている。


 その後、雄叫びのようなものは聴こえてこないし、降りてくる気配もない。




 「ちょ、待って」


 「……」


 ミールとアッサムが途中で脱落したみたいだ。


 「けっ! 負けるかよ」


 「まだあるのか」


 ジュマルとプランツの足もその上で止まっている。


 「先に行く」


 必死に脚に張り付いているラキを抱き上げて、更に速度を上げて登りきった。




 成る程、最上階は夕日でも射し込んでいるみたいに壁が染まっている。


 ガランとした広場ほどある場所だった。


 「何処に隠れた?」


 ラキを背に庇おうとしたら、急にラキが苦しみ出して……。


 「あぅ、あ……」


 「ラキ、どうした?」


 苦しむラキの上に、黄昏色した靄がのし掛かっているように見えたんだ。


 「止めろ! トールのオッサンと同じ霊体か?」


 「あっ」


 短い悲鳴をあげたラキの体は、また白く発光して……。


 「黄口(らいこう)!」


 ラキからはっきり名前のような物を告げられた時だ。


 黄昏色した靄がくっきり形を成したのは。




 『彫刻?』


 それは、クリーム色がかった滑らかな石膏で出来た幻獣と呼ばれる類いのものだった。




 「なんと! 術が解けてしもた」


 「喋った!」


 「あん? あんたさん変わったお人やな。どうしてか、隙があらへんな」


 私に向かってそう言った。


 『?』


 「黄口(らいこう)……こんな所に居た探したぞい」


 ラキの背から、白い靄が滲み出て似たような幻獣の形になったんだ!



 『えっ! あれ、何だうーん』


 私が軽くパニックを起こしている間に、会話は進んでいく。




 「か、角有(かくゆう)……どうして居るねん……」


 「戻って来ないと思ったら、別世界に飛ばされていたぞい」


 「違わい。わっちかて王の暗殺を頼まれてんよ」


 「別世界の依頼があるとは、知らなかったぞい」


 「わっちかて、こんなんなるとは思えへんかってん」



 黄昏色した幻獣の輪郭が、じわじわ消えていく。


 「黄口(らいこう)! 術が解けたのに戻らんぞい?」


 「そやな」


 悟ったように言った。


 「このままでは、消滅するぞい?」


 「わっちの依頼は失敗したんよ。王には血の呪いが掛かっていてん。知らずに移ろうとして、王の魂が分離してしもうた。わっちは、その分離した王の魂に何故か引きずられて、ここまで来てしもうたんよ」


 「理由はわかったぞい。それより、早く依代を見つけないとお主が消滅してしまうぞい」


 「もう、いいんよ。角有(かくゆう)あんたかて、もうこんな依頼はいややろう?」




 「ため……いっしよ!」


 突然、可愛いいつものラキの声が叫んだんだ。


 その言葉は真っ白な鳥の形をとって、黄口(らいこう)の胸の辺りに飛び込んだ。


 「なんなんこれ? 何百人の祈りより純粋な願いが……」


 消えかかっていた黄昏色した幻獣は、力を取り戻したように発光した。


 そんな時だ。



 「わっ、眩しい、ハァハァ、ライル、ラキ君無事ですか?」


 どうしてか、ベルナップがその場にヨロヨロと現れて、そして、吸い込まれるように黄昏色した幻獣は、ベルナップの口の中に入ってしまったんだ。


 ベルナップは倒れながらもがいていたが、それが治まると起き上がり喋り始めた。


 「コイツん心は隙だらけやな。それに、根はお人好しやった」


 ベルナップの声だが、ベルナップのいつもの話し方と違う。



 これを見た私は、やっとラキに起こった事を理解した。

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