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塔へ

 結果、塔の攻略がやり易くなった。


 工兵隊達は、重い盾を持つのを止めた。代わりに剣を提げ足には木片を付けて、音出しするようだ。


 塔の入り口は二ヶ所あるので、二手に分かれて潜入する作戦に変更だ。


 従って、ベルナップとルーミスとダンテット隊長は、塔の近くで待機だと。



 砦から数キロ先に塔は建っていた。


 周辺は、荒れ果てた採掘場のようで、罪人が働くに相応しい場所のように見える。


 とにかく、あちこちに雑草が生い茂って、先ずは絡んだ蔦なんかを伐るのに苦労した。


 問題の塔は、平屋の建物の端に繋がっているようで、冒険者の私達が建物を探索して、塔から登った工兵隊達が追い立てた魔物を退治すると。


 「みんなが顔を隠してくれて助かるよなあ、ラキ」


 ニコニコしているラキ。


 「「「「……」」」」


 「どうかした? プランツ、ミール」


 「はっ、アッサムが無口なのは元々だからしゃあないが、皮肉屋のジュマルが何も言わないなんてのは、今日の狩り場は荒れるんじゃないのかい」


 フローズやニーアが男四人を怪しむ。


 「鼻河馬(バルバンダ)ってのは、どう噛んでくるのか誰か知ってるか?」


 「それなら私、兵士さんに訊いてみたわ。昔は、頭を甘噛みして涎まみれにしていたそうよ。でも、ここ数年で少し変わったみたいなの。だけど、そこから先は、やっぱりはっきり教えてくれなかったわ」


 「ああ、あたいも訊いた。アイツ等口止めされてんのさ」


 「恐いけど、ちょっぴりドキドキするわね」


 「あんた、変わってんな」




 『いつもなら幼なじみトークが炸裂する筈が、沈黙する二人。いったいどうしたんだ?』


 建物の扉前の蔦を引きちぎって進めば、ガタッと錆びれた扉が外れてしまった。



 「よしっ、入るぞ!」


 蔦のせいか、中は薄暗い。


 向こう側からは、木片の音がしている。工兵隊達が塔を登ったのかもしれない。




 アッサムが丸い木枠に皮を張った物を、ボンボン打って鳴らせば、壁や床に反響して振動しているのがわかった。


 向こうから追い立てられて押し寄せた山羊蝗(ゴートライダ)は、反響した音で混乱して同士討ちしたり逃げ惑ったりするもんだから、皆がナイフで止めを刺していったよ。


 「可哀想だけど、進まないといけないわね」


 意外に豪胆なフローズは、山羊蝗(ゴートライダ)達の屍を踏んだ。


 すると、音で目覚めたのか鼻河馬(バルバンダ)達が姿を現し、鼻息荒く向かってきたんだ。


 「キャー可愛い」




 『鼻面が大きくて、どこか間の抜けた顔だが?』


 動揺する私達の中に、一人変な奴が交じっているが、気にしていられない。


 とはいえ、グイグイ押し出される私は、ラキを下ろして先日ギルマスに押し売られた金属の棒を振り回して壁の役目だ。


 しかし、力が過ぎて襤褸屋が揺れる。


 鼻河馬(バルバンダ)達は、まるで風船みたいにつかみ所がなくて、ふわんふわんと大気の流れに添って動き、それは、私の目の前に不意に流れてきていた。



 ブチューーッ、チュポン。


 顔面に吸い付かれたようだが、マスクしておいて良かったー。


 尻尾を掴み引き剥がし、グルグル振り回せば、目を回した鼻河馬(バルバンダ)はパッカンと大口を開けて、そこから、あの黒い虫が出て来てラキに集ってしまったんだ!




 テッテケテー。


 『テ』の形をしてテンテン跳ねる黒い虫?




 「ラキから離れろ!」


 「ラキちゃん!」


 「こいつ!」


 皆で振り払うが、細かくてすり抜けてしまう。


 「ゃあ、ん~! だめぇーーっ!」



 ラキの言葉からなのか、カーッと光って『テッテケテー』は、瞬時に消滅した。


 ラキの胸から、また、あの雫石が出ていた。



 『そうか、コイツ等は、ラキからこれを奪いたいのか』


 目的はわかったが、くれてやる訳にもいかない。


 と言うのも、ラキは、私からの初めてのプレゼントだと思って、時々胸から出しては大切そうに磨き、「ライルゥ」と嬉しそうに頬擦りしながらこちらに見せるのだ。


 挿絵(By みてみん)




 「イヤって、盗られるのがイヤだったのか」


 「ぅん」


 「ちょっと、ライル何してんのさ、魔物はまだまだいるんだよ」


 ニーアに言われて仕方なく考えた。




 『縛るしかないな』


 ふわふわする鼻河馬(バルバンダ)を捕まえて、大きな口を縛り上げる。


 「ライル、これでは魔物が可哀想よ」


 「フローズ、お前の口も縛るぞ」


 「ふわあ(赤くなる)」


 容赦なく言えば、おとなしくなったフローズと、幼なじみの男二人からの睨みがきたな。



 『あんたよりラキが大切なんだ。悪く思うなよ』



 私の足と一体化しているラキは無言だ。


 粗方片付いて、皆が戦利品を物色していると、塔から物凄い咆哮があがった。


 「グァルルゥ、グウワァーー~!」



 「けっ! 猛獣でも出たってのか、ビビらせやがる」


 「ライル、急ごう」


 黙っていた四人が喋り出す。


 「先に行ってくれ、私は、ラキを避難させる」


 建物内では、モーラ達の動きが鈍る。盲点だった。


 「ラキ、外でモーラ達と一緒にベルナップのところに行け」


 ギュッと脚にしがみつく力が増した。


 「ラキ……」


 「ラキちゃん、私と一緒に外で待っていよう?」


 「んーん、んっ」


 フローズに優しく言われても駄目か。


 「ギャーッ!」


 工兵隊達の悲鳴だ。


 プランツ達も足がすくんでいるようだ。


 「ライル、新種の魔物のようだね」


 ニーアも動きが止まっている。


 私は、ラキをそのままに塔の方に急いだ。

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