思わぬ足止め
それから、ファーロン達が畑で作った新鮮野菜料理を、ラキはとても喜んで、いつもより沢山食べたのだ。
「ぁい、ライルゥ、あ~ん」
温野菜が出ると、決まってラキは苦手な野菜を食わせてくるんだよなあ。
「ラキ、私はいいから自分で食べろ」
「ん、ライルゥ……」
拒否されたと思ったのか、また、悲壮な表情を浮かべグッと我慢するラキに、有ろうことか、無口なアッサムまでが私の口を開けに来たんだ。
「ラキちゃん、ほーら、ライルが口を開けて待っているわよ」
フローズが優しくラキの肩を抱いた。
「ぅん、ライルゥ、あ~ん」
「んがっ」
『いやいや、ラキ。これは、開いてるんじゃなくて、開かされているんだよ。気づけよな』
「けっ! つべこべ言わずに旨いんだから食えよ」
ジュマルはニヤニヤしてやがった。
こっちが、冒険者同士でわいわいやっていると、向こうでは、ベルナップやファーロン達が、マァルに凝りを解してもらいトロ~ンと骨抜きにされて伸びていた。
工兵隊達は、連帯責任なのか、ダングルの様子を交代で見張っていたようだ。大変だな。
その晩は、屋根の下で久しぶりにゆっくり眠れて、ラキもご機嫌だったな。
翌日は、馬の調達に近くの村に行ってもらったり、町からダングルを護送する為の兵を呼んだりと、ファーロンの部下達は大忙しだ。
アコーの奴は、ベルナップのお屋敷の対応がお気に召したらしく、「ケケーッ」と言ってついて来なかったんだよな。
ここには需要があるから、アイツには丁度いいと思うんだがな。
で、そんなこんなで暇だったので、私とラキは、モーラ達と開墾したりして、この兵站の手伝いをして過ごしたよ。
見学しているラキの周囲には、いつもの貢ぎ物の山が出来ていたけどな。
「あ~、ありまと」
「キキッキィ」
合間合間に和む光景を目にして頑張ったら、結構な広さの畑が出来上がり、後でファーロン達にとても感謝されたさ。
この辺は、掘ると下からゴロゴロした岩が出るもんだから、中々開墾するにも骨が折れるらしい。
せっかくだから、出てきた岩を並べて小屋みたいな物も作ってみた。
「どう見ても遺跡にしかみえないか」
出入口の上下に木の板を渡して、とりあえず縄で引っ張りあげる扉も作った。
『後で、器用な奴が開き扉にでもするだろう』
モーラ達のお陰で、それ等は短時間で済んで、戻ってみたら冒険者の皆も、ご馳走になった分働いていたようだ。
「ふふんふんふん♪」
防具を脱いだ姿のニーアがシーツを干していた。
「ニーアも洗濯するんだな」
「当たり前さ。誰だって綺麗な方がいいに決まってる。ラキもそうさ、なー」
「ニーア、きれー」
ラキが、どっちの意味で言ったのか知らないが、ニーアは真っ赤になっていた。
『まさか、ラキは……あっ、もとからタラシだったな』
「ライルゥ、ニーア、きれー、ぬのぉ、きれー」
『うん、うん。ラキには、計算なしだもんな』
「本当だな。どちらも綺麗だな」
限界に達したのか、ニーアは怒りだして、「邪魔だからあっちにお行き!」と、なんでか私が蹴られた。
「けっ! ライル、姉さんに蹴られるような事しやがったな。油断なんねぇ奴」
収穫したのか採取したのか、茸なんかを抱えて通りすぎたジュマル。
「アイツ、なんで蹴られたのがわかったんだ?」
「ライルゥ、ん~」
ラキが尻を指差している。
「くっきり足跡ついてますよ」
プランツとミールは、狩りにでも行っていたのか、鴨をぶら下げている。
「今夜の晩飯か?」
「昨夜のお礼ですよ」
「残念」
「ライルには、ラキが美味しい野菜を食べさせてくれるからいいじゃないか」
「ミール! 私があの野菜嫌いなの、薄々わかってんだろう?」
「くっ、大人が好き嫌いするなんて笑えます」
『くそっ、プランツの奴生意気だな』
「ライルゥ?」
私が怒りを我慢していたから、ラキが心配した。
「ラキは、ライルの気持ちに敏感なようだ。おじさんは心配しなくても大丈夫だぞ?」
ラキの頭をポンポンと触っている。
「ミール!」
『敏感なら、私の嫌いな野菜を食わせたりしないだろうが』
と、心の中で続けた。
が、二人は笑いながらファーロンのところに行ってしまった。




