西の砦へ
翌朝、ベルナップの屋敷に集合した冒険者二組と、第二工兵隊は西の砦に出発した。
今回は、盾を沢山積み込んだようだ。
それから、特殊糸の網や槍。
ベルナップが馬上から合図した。
「みんな揃ったな、では出発だ」
それを受けたダングルが、第二工兵隊に号令をかけ、私が冒険者の二組を促した。
「ラキちゃんはまだ寝ているのね」
私がラキを片腕に抱いているからか、フローズが声を掛けてきた。
「滅多にないが、昨日の対戦で疲れたんだろう、大人達が容赦ないからな」
「何を言っているんですか! こんなに小さいのに、能力に恵まれて悔しいぐらいに嫉妬しましたよ」
「まったくだ、俺達全員が詐欺に合ったようだよな」
プランツとミールは、嫌味に真っ直ぐ返してきたぜ。
「……(すまなんだ)」
「えっ?」
小走りで近づいたアッサムが、追い越しがてらに何か言ったようだ。
「フハ、アッサムはラキに謝ったんだよ」
ニーアがミール達の間に割り込んで、顔を出した。
「けっ!」
後ろの方からでも、ジュマルの悪態が聞こえる。
「西の砦に巣食う魔物って、鼻河馬なんでしょう? 今から、会えるのが楽しみだわ」
「変わってるねぇ、あんた」
ニーアも幼なじみの話しに気軽に参加している。
「フローズの魔物好きは、昔からなんですよ」
「そう、それで何度危ない目に遇った事か、な、プランツ」
「そうね、本当にごめんなさい。出会った事のない魔物を見ると、つい癖で観察してしまうの」
「それを絵に描いて、図鑑にすれば一儲け出来そうだな」
「な、どうして、私が絵を描いているのを知っているの?」
私の適当な話しの何処でそうなる?
「フローズ、あの、摩訶不思議な図形って……」
「絵だったのか」
幼なじみ二人は、顔を見合せて苦笑いだ。
「そうよ。今回の依頼達成した報酬で、色を着ける道具を買うつもりなの」
「まだ、達成してないだろう?」
幼なじみ二人は呆れている。
「あたい等には、リーダーのライルがいるから、必ず達成するさ」
ニーアがフローズの味方をした。
「けっ! ライル、これが終わったらオレっちと勝負しねぇか?」
ジュマルも輪に加わり、面倒な事を言ってくる。
「お断りだ。私には、やらなきゃならない事がまだまだ沢山ある」
「ちっ! 余裕ねぇじゃん」
ずっと悪態つきっぱなしなジュマル。
「ん、ん、ん~」
ラキは、目をこすりながらモゾモゾし始めたので、目が覚めたのかもしれない。
なんだかんだと、みんなが群がって話していたから、五月蝿かったんだろう。
「ん~、あ、ライルゥ、はよお」
トリシャに教わった挨拶をする。(首に手を回してから頬をくっつけるんだ)
「五月蝿かっただろう、起こしてごめんな。まだ寝てていいぞ」
「ん、へーき」
「おはよう、ラキちゃん」
フローズが挨拶をすれば、ラキはニコニコとみんなに挨拶をした。
そのまま、水を飲ませ朝食のパンを食べさせた。
腕から下ろしてやりたかったが、遅れる訳にはいかないので、そのまま抱いて歩いていたら、ラキはまた眠っていた。
「あんたの腕は、よほど居心地がいいようだね」
「ニーアは、兄弟いないのか?」
恥ずかしくなって、とりあえず訊いた。
「あたいには、ジュマルとアッサムがいるよ」
『うっわ、悪い事を訊いてしまった』
「私もラキに会わなければ、同じだったけどな」
「甥っ子なんでしょう?」
「そうだな。会わなければ、存在じたい知らなかったからな(嘘)」
幼なじみ三人は、グッと押し黙ってしまった。
*
少しの休憩をとり、そのまま歩き続け夕方前にはテントを張り野宿した。




