ブレンダーズルーム
「そもそも、お主達二人共が、『他者』に作用する『力』を有しているからこんな事になったんだ! ウォン」
ラキは、フサフサで揺れる尾が、風に吹かれた草のように思うのか、あっちこっち触って確めているようだ。
狼男も、私に説明しながらラキを舐めたり、鼻であしらったりと忙しそうにしている。
「この愛くるしい生き物は、『幻獣』の力を宿している。ベロン。それで、今は、レベルに見合った『舎弟』が着いている筈だな」
「ああ、最強の『土の傭兵』が着いているな」
「能力が高いのは、この者の流れる血のせいだろう、ウォン」
「ラキは、人じゃないのか?」
「ウォン? 人に決まっている」
「……」
『ちょっと、厄介な相手らしい』
「この『幻獣』は、レベルが上がれば、やがて『成獣』となる。それは、この者の想いに大きく左右されて、どうなるかはその時にならなければわからないだろう」
「悪くはならないんだろう?」
「クゥン、あまりに純粋が故に、想像が出来んな」
「なんてこった! その『幻獣』の力は、捨てる事は出来ないのか?」
「備わった物を手放す時。すなわち、命尽きる時」
「わかった。ラキは私が守る」
ハッとして、改めて私を見た狼男。
「で、私のこの使えない能力はどうすればいいんだ?」
「お主の場合は、不偏の『時間』を征した世界から、有るがままの世界に移転した為に起こる、弊害としての能力だ」
『なんですと?』
「馬鹿な、『チート』な筈じゃないのか?」
「ウォン、『チート』とは、おめでたい」
「な、な、な、じゃ、この強靭な肉体と怪力はなんだと言うんだ?」
「それは、キューン、キューン」
ラキが尾の付け根をツンツンしたらしい。
「……」
「ウォッホン、それは、物理的な問題で、お主は『巨人の世界』から『小人の世界』に来たと言えばわかるだろうか?」
「全てが、凝縮されているとでも言うのか?」
「ウォン、早く言えばそう言う事だな」
うーん、わかってみれば簡単だった。
「で、『弊害』の方はどうなんだ?」
「今の『アソリティー』は、何かを極めなければ次には進めない」
「何かって、何だ?」
「ウォン、お主は、今、何に興味があるのだ?」
「興味? この世界をどうしたら生かせる……いや違う。生永らえるのかだな」
「キャイン、し、知っている?」
ラキにまた『いいこいいこ』されて、静かになった。
「やっぱりか……知っているなら教えてくれよ」
「それは、『ブレンダーズルーム』の役割から外れるぅ~~~!」
「ケチだな。じゃぁいい続きを頼む」
狼男の尾が縮んだもんだから、ラキが親切で毛を引っ張ってやっているらしい。
「ウォッホン、ある意味合致しているのではないか? お主が、このまま突き進めば、あるいは……」
「あるいは何だよ?」
「つまり『アソリティー』は、何かを突き詰めて極める事で、次の『大成』に進む。ただ、何を極めたかでまた変わる」
「今、発動している? 出来る『力』って何だ?」
「ウォン、異世界に来た割に、すんなり溶け込んで、初対面にも関わらず話しが思うように進んだのではないか?」
「確かにそうだ」
「最初に話したが、お主達の能力は、『他者』に作用する物だウォン」
「あ~、ライルゥ、しゃしゃ、ん~」
ラキがブラシをねだったので、渡してやる。
『しゃしゃ』と言うのは、ラキの頭頂がピョコリと跳ねやがるから、「しゃっしゃっ」と言って私が解かすからそう覚えたようだ。
「この世界には、魔法があるだろう? それはどうやって発動するんだよ」
「キュキューン」
「おい!」
「ウォッホン、『魔法』あっ、皆にあるのだ。あぁ、だが、こ、こには、魔の源になる物がまだ薄い、クゥーン」
「でも、魔物は使えたりするよな?」
ベロン、ベロン。(ラキを舐める音)
「あ~、キャア」
楽しそうだな。
「おい!」
「魔物は、既にそれを集める方法を知っている。とだけ言っておこう」
「まさか、それでこの先滅び……」
ラキを抱き上げてこちらを向いた狼男は、真面目に語る。
「お主は、何故この世界に来たのだ?」
「たまたま偶然落とされただけだ」
「お主のように、上位世界も下位世界も沢山存在するのだよ」
それを最後に、ラキを渡されて一瞬でギルドの中に転移されていた。




