たまには
どんな魔物が住み着いたかと言うと、鼻河馬と言う魔物と山羊蝗と言う噛みつき系の魔物達だそう。
何でも、あれに噛まれた跡が大変不名誉らしい。
ちっとも危険な感じのしない魔物達なのだが、最近では、塔が燃えるように光ったりするので、新たな魔物が住み着いたのではないかと噂されているんだとさ。
ベルナップの奴、私が戻るまで色々理由をつけて、出発を遅らせていたようで、明日には砦に向けて進軍するって言うんだよ。
で、せっかくの休みをラキにせがまれて、モーラ達のいる門に来ていると。
「あ~、モーラァ」
地鳴りがすると、ラキの目の前には土が盛り上がり、シャキーンとポーズを取ったモーラ達が現れた。
ラキも可愛いポーズを取っていて、町を出入りする者達の注目を集めている。
モーラ達が、ラキに捧げ物をすると、ラキが一匹ずつの頭をいいこいいこしていくのだ。
何やら、聴衆者達がざわめいているが、私は、ホッコリ和んでいた。
「ライル! 戻ってたのかよ」
声を掛けてきたのは、染め物職人のスダンだった。
「オッサン元気そうだな。この道で会うのは仕事だからか?」
「この先に、染めに使う唾緑の草が群生しているんだよ。で、毎朝それを採取するのがオレの仕事の一つよ」
「へー、そんなんがあるんだな」
「って、おい、ライル。お前の甥が撫でてんのは、土の傭兵って恐れられている魔物じゃないのか?」
「はっ?」
まさか、と思いながら万能スーツのナビに訊けば……。
【黄土竜子団:土の傭兵の一団。魔物のモーラが結束した一団で、軽く村を蹂躙出来る力を持つ】
「ハッ! 嘘だろう」
どう見ても、愛らしいラキに愛玩される動物にしか見えないんだが……。
「モーラ?」
シャキーンとポーズを取った。
「うん、まあ、お前が飼い慣らしたんなら大丈夫そうだな」
見事に整列したモーラ達に、聴衆者達も拍手している。
『ここに居たら注目浴びっぱなしになるな』
「オッサン、ラキを連れて散歩がてら着いて行くよ」
「えっ……」
迷惑そうな顔をされたが、構わずゾロゾロついて行った。
ラキは、モーラ達に運ばれたりして楽しそうだが、道が穴だらけで……。
振り返った私の視線で気づいたのか、ボスモーラが指示すれば、何匹かが素早く地固めしてまわっていた。
「お前等優秀だな」
シャキーン。
『しかし、何でラキに???』
上皇人にきちんと話しを訊いておくべきだった。
*
道から外れて小道を行けば、見事な原っぱが拡がっていた。
風が渡って気持ちがいい。
「あ~はっぱ~」
ラキが駆け出して行けば、モーラ達も続く。
「わー、こら、睡緑の草を荒らすんじゃない」
「モーラ、草を刈るのを手伝えよ」
シャキーン。
「で、どんだけ必要なんだよ」
「そうだな、そっちの端からここまで刈ってくれ」
モーラが、自慢の爪で目にも止まらない速さで刈って、山のように盛った。
「スゲェな……」
スダンは、瞬く間に終わってしまった野草集めにポカーンとしてたな。
「ライルゥ、こっち、こっちぃ」
ラキが何かを見つけたみたいで呼んでいる。
「どうした?」
小さな赤い花の前にしゃがみ、花が揺れると一緒に揺れたりして、モーラのボスが見とれていた。
「モーラ、ラキを守ってやってくれよ」
「ライルゥ、おはなあ~、ゆ~らゆらあ」
ポーズも取らずに、モーラ達はラキを囲んだ。
『こんな力なら、心配する事ないな』
「ラキ、お花に水をあげたら喜ぶぞ」
「ん~、おみずぅ?」
「ラキも飲んでおけよ」
「は~い」
今度は、スダンに呼ばれて草を束ねるのを手伝わされた。
『たまには、こんな日もいいか』
思わぬ息抜きになって良かったかもしれない。
この後、スダンの染め物屋まで山盛りの野草を運べば、お礼にと美しく染めた布をくれた。




