再会
「お迎えに上がりましたライル様。さあ、こちらの馬車にどうぞ」
「この魔物連れて行けるかな?」
「これは?」
「ラキの友達なんだ。結構強くて、助かっているから連れて行きたいんだよ」
従者のルーミスは、門兵に底の村方面の門前に放すように指示した。
「先に行ってラキを待っててくれよな」
「モーラ!」
キリリとポーズを取って承諾してくれたようだ。
で、やっと、馬車で移動できたのさ。
まだ、納得のいかないラキを宥めながらで、大変だったけどな。
*
屋敷に着くと、軍から早退したベルナップが待っていた。
「随分、変わった仲間が増えたのですね。それで、ご夫婦は村でやって行けそうでしたか?」
「なんだ、心配してたのかよ。あの二人は幸せにしているよ。なぁ、ラキ」
「ぅん、しあせ」
「ラキ君、こっちでお菓子を食べるといいよ」
「あ~、ベルゥ、ありまと」
「そちらの二人もどうぞ」
従者に案内させようとしたが、ラキは私の隣りにチョンと座った。
ベルナップは、それには特に何も言わず、私にまた頼み事をしてきたんだ。
「あれから、お祖父様が僕に期待してしまって、今度は、西の砦に巣食う鼻河馬退治に行けと言うんだよ」
「あ、そうなの。貴族は大変だな」
「そんな、軽く……」
「それより、縦蜘蛛の綿を手に入れたんだ。見てくれよ、真っ白ふわふわだぞ」
「こんなに沢山。成る程、こうやって持ってくれば、沢山運べるのですね」
ルーミスがすぐに受け取り、ヴィッカース家お抱えの商人に情報も売る手配をした。
「お金は後で用意させるよ。それで……」
「まだ、隊の者達と上手くいってないのか?」
「あれから、部下はおとなしいよ。それに、ダングルじゃなくイットが左遷された」
「まさか、イットが?」
頷くベルナップ。
「だから、第二工兵隊が何でそんな最前線に行くんだよ?」
「僕だって、お祖父様の跡なんて継ぐ気はないよ。だけど、砦に送られる事は決まった事なんだよ」
ベルナップにしては、必死さを感じる。
「今までは、砦を守っていたけど、今度は、退治しなければならないんだよ! わかる?」
「ああ、工兵隊にやらすのは無茶だな」
「ねっ、そうでしょう? なのに、決まったんだよ」
「もう、はっきり断ればいいじゃないか」
「それが出来れば……」
憔悴しているベルナップ。
「あ~、ライルゥ」
と、寝ていると思ったラキが、またジッと見詰めてくる。
「いや、だって、ディミトリを早く送って、それで、他にもっと大切な事があるんだよ」
「う~、ライルゥ」
『くそ~、ラキの穢れない瞳は……あの日の……みたいで……』
「フゥ、わかったよ。でも、ラキ。お前は置いて行くからな」
すると、キュルンとした仔犬の目から、ポタポタと涙が溢れて……。
「ごめん、悪かった泣くなよラキ」
……ポタリ、ポタ。
圧し殺したように静かに涙を溢すラキ。胸にギュッと指を握りこみ微かに震える肩。
『これか! くっ、確かに辛いと言うか胸が痛い』
「嘘だよ。嘘。だから、な?」
目を見張ったかとおもえば、私の顔をグイと引き寄せ……。
「ん~、ライルゥ、うそ、だめぇ」
また、しばらく目を見詰められたが、泣き止んでくれたならまぁいいか。
「ライルの弱点はラキか。これは、良い事を知った」
『あ! ベルナップに弱みを握られてしまったか?』
「ラキは、ライルから離れたくないんだな。よくわかった。僕が、絶対に二人が離れないようにしてあげるから、力を貸してくれないか?」
「ん~、ぜたい?」
「えーと、どう説明したらいいのかな……」
ベルナップが考えている間に、先に入れ知恵をした。
「ラキ、世の中に絶対なんかないんだぞ」
「あ~、ぜたい、ない?」
「ああ、そうだ」
「ちょっと、ライル狡いよ!」
するとラキは、ベルナップの膝に乗り上げて、目を見詰めると、可愛いお説教が始まった。
『ククッ、いい気味だな』
「ラキ君、違うんだ、だから……」
「ん~、だめっ」
素直に聴かないから、結構な時間あの瞳に見詰められたベルナップ。
「ごめんなさい、僕が悪かったよ~もう、許してくれないか?」
と、音をあげるベルナップの情けない姿が見れて、笑いが止まらなかったさ。
西の砦は、元は、罪人を送っていた塔の監視をする為に造られたらしいのだが、いつしか、塔が使われなくなり、魔物が住み着くようになったそうだ。
ところが、ここ数ヶ月の間に、砦に侵入しようと魔物が何度も姿を見せたので、この機会に一掃しようと決まったらしい。




