テッテケテ
「ライルゥ、あっち、あっち!」
戦いの最中では、ラキとサフラを庇うのに精一杯でいる私に、ラキは訴える。
ディミトリを投入しているが、バーサーカー状態な奴は、たまにこっちも攻撃したりするから大変なんだ。
まあ、そんな時は、平気で蹴り飛ばすがな。
「どうも、こっちが狙われているな……」
じわじわと迫る縞蜘蛛。
変に思い、右手にラキを掴み左手にサフラを掴んで手前に交互に出してみた。
ラキをぷら~んと掲げた瞬間、手前にいた縞蜘蛛達から一斉に綿毛を噴射された。
「よし、わかった。サフラは、この綿毛を集めてくれ」
ポイっと手放し、次にラキを前にすると綿毛が舞った。
「コイツら、これが売れるとも知らずに大盤振る舞いだな」
ぷら~んぷら~んラキを下げていたが、またも、上皇人の話しを思い出してしまったのだ。
「なんでなんだ?」
目の前は、綿毛とディミトリの暴れっぷりで、視界がゼロになっている。
「こんな無害な魔物まで、何でラキに向かってくるんだろう?」
仔犬状態のラキと目を合わせると、ニパッと笑った。
『くそ可愛い』
遊びだと思っているラキには、やっぱり何も言えなかったさ。
「クピクピ、もう持てませ~ん」
サフラが根を上げたところで、近くの川に縞蜘蛛を投げ込んで、ディミトリの後ろ髪を引っ張ってやれば、怒りで川に放電した。
そうして、電気ショックを受けて失神する縞蜘蛛達が川に浮かんだのだった。
後は、ディミトリを気絶させれば、戦闘終了だ。
「クピピピッ、ライル鬼畜~」
サフラが、尻尾を立てて叫んでいが知ったこっちゃない。
マァルは、ラキの帽子からソッと顔を出して、安全を確認してから、ラキの顔を伝って降りてきていた。
『ちゃっかりしてやがる』
「あ~ん、マァルゥ」
「フニー」
サフラが集めた綿毛を、フィルム布で圧縮して巻いて背負えば、素材回収完了だ。
『よし! これをベルナップに売り付けよう。きっと高値で売れるに違いない』
せっかく遠回りしたんだから、もう一つの町にも寄ってみるかな。
なんて考えていたら、悲鳴だ。
「助けてくれ~!」
「あ~、ライルゥ」
ディミトリとサフラを残して、ラキを抱いて川下に走った。
すると、川から土手に上がろうともがいている人がいたぞ。
「あれかな?」
黒い小さな鍵張りみたいな物が、ワラワラとそいつの身体を登っている。
すると、土手に上がってきた鍵張りの頭が一斉にこっちを指したから、急いで逃げたが「テッテケテ」と追ってくるじゃないか。
しょうがなく、ラキを下ろして身構えてみたが……。
それが間違いだったようで、ソイツらは、真っ直ぐラキに向かっていき、あっという間に埋め尽くしてしまったんだ!
「ラキから離れろよ」
手で払うが後から後からそれは群がってきて……。
「ぃやあー」
ラキがそう叫ぶと、鍵張りの体が灰になって風に舞った。
出会った時に、なにげに胸につけてやった雫石。
それが、万能スーツから出ていた。
「ラキ、大丈夫か?」
ヒシッと足にしがみついて、そして離れなくなってしまったぞ。
「ラキ?」
「……」
マァルは、ラキの帽子の中で目を回していたようだ。
『今、何が起きたんだ?』
ラキが話すのを拒否しているから、何も言えないが、あの鍵張りみたいな奴もどうしてラキを狙っているのか?
さっき、助けを求めていた男は、もう逃げてしまったようだし、何がなんだかさっぱりわからない。
こんな変な事があったから、寄り道しないでカンツールの街に急ぐ事にしたんだ。




