許嫁
すっかり、贅沢に慣れてしまったディミトリを引きずっての出発だ。
「オッサンが散財した分は、キッチリ働いて返してもらうからな」
「ムニャムニャ」
それにしても酒臭い。
そして、何故か宿の娘も着いてきた。
「あぅん? だあれ?」
「クピッ、ディミトリの許嫁のサフラで~す」
「あ~、サフラァ、ん~、ラキ、マァル」
「ニーニー」
「クピッ、これから、宜しくね~」
「クピッ、いっしょ、いっしょ~」
盛り上がっている。
「サフラ、ちょっと訊くけど許嫁ってなんだ?」
「クピピッ! やだ、恥ずかしい~」
『デカイ耳は便利だな。耳で顔を隠して、手で尻尾を隠すのか、何故?』
「コイツから言ったのか?」
「クピクピ、私と妹のサフミを貰ってくれると……もう~、クピクピ」
「……」
『落ち着け、ライル!』
「じゃ、サフミはどうした?」
「クピクピ、どちらかが宿を継がないとならないでしょう? そしたら、サフミが「お姉ちゃんに譲るよ」って言ってくれたの~ん。キャッ」
「キャッ……」
「キャア」
私が呟いたら、ラキも真似した。
『フゥ、このまま進んでいいのかあ?』
そこに、悪口鳥が酷い形相ですっ飛んで来て、私の頭の後ろに隠れてさあ……。
顔面に爪を立てようとして、突進する魔物の採掘鷲を叩き落として踏んだんだ。
「あ、羽がだいなしだ」
咄嗟だったから、力任せに潰してしまった。
『失敗したかな?』
ラキに視線を向けると、マァルが顔に張り付いてジャレていた。
『ナイス、マァル』
サッサと捌いてしまうと、ドン引きしていたのはサフラだった。
原因の悪口鳥はもういない。
『クソ! あの○○○野郎』
「ライルゥ?」
罵っていたら、いつの間にか隣りに来ていたラキに心配されていた。
「ちょっと、ディミトリが起きるまで休むか?」
ラキとディミトリの距離も一向に縮まないな。
ちょっと増えすぎた同行者達のお陰で、この時、起こり始めていた異変に気づくのが遅れてしまったんだ。
*
「向かってくる魔物が多すぎるな」
「ライル! 貴様のせいで、ワシは、身体中が痛いままなのだぞ!」
ディミトリからトールのオッサンに代わっていた。
「クピクピ、私が看病するわ、ディミトリ」
「では、任せよう」
『なんだかんだで、上手くやっているな』
ラキは、ライルの後ろにいたが、小さな黒いモノが、テッテケテと死んだ魔物から去るのが見えていた。




