拾った風船
『いやいや、ちょっと待て! 私は、門で硬貨を払ったが、素材の代価が石ころってないだろう!』
と、内心腹を立てていたら、説明してくれた。
「クピクピ族特産の灯り石だよ。光りが弱くなってきたら、暗い場所で何年か寝かせると、また使えるようになるんだクピ」
「それは便利だと思うが、これじゃ何も買えないじゃないか」
「クピクピ、心配されずとも、灯り石は大変貴重で重宝されていますから、これだけの量があれば、数年は楽が出来てしまうでしょう」
キツネ耳よりもう少し長めでフサフサな耳が揺れる。
『まるで、麦穂みたいだな』
「えっ、そんなに貰っていいのかよ?」
「クピクピ、あなたが持ち込んだ斑胴食肉猫のキバの方が、我々には価値がありますから、遠慮せずにお持ち帰り下さい」
斑胴食肉猫のキバは、山の採掘で使ったり、岩盤の補強に使ったりするそうな。
で、次は紙とペンを売っていないか訊くと、そんな物存在しないようだ。
紐を結んで渡せば、それでクピクピ族は通じるそうな。
「じゃ、外の看板はどうしたのさ」
「クピピ、あれは、領主様から頂いたものですよ。外の人達には、紐ではわからないそうですから」
『うわあ! ラキに何て言おう』
トボトボ歩いていたら、ヤバい道に迷った……。
で、歩けば歩く程薄暗くなってきて、アーチ型の穴から何かが出てきそうな雰囲気がしている。
『参ったなあ。クピクピ族が誰もいない』
歩くと冷たい岩廊がカツコツ鳴り、どうしてか、ヒタヒタと言う音も聴こえて、何処からかピチョーンピチョーンと、滴が落ちる音までしてきて……。
『何だ、何か出るのか?』
勇気を出してちょっと振り返ってみた。
「わあーーっ!」
「わあーーっ!」
風船に毛が生えた物が足下にいたから、驚くって!
「おま、何、生き物?」
「おま、何、生き物ケケケーッ」
「……」
風船に生えた毛が増量された。
ムカついたので、ちょっと足で転がしてみた。
コケッ。
丸いからよく転がる。
起き上がった風船は、凄い勢いで飛んで来て、私の頭を猛烈に突っついていた。
「コッコッコッケケケーッ!」
「羽むしって丸焼きにするぞ?」
「コーーーッ!」
やたら、好戦的な鳥だな。
醜い争いをしていたが、虚しくなったので、仕方なく、変な物を拾ったとギルドに届けに戻ったんだ。
「クピクピ、あ、痛」
受け付けのクピクピ族の獣耳をむしろうとする風船。
「クピピッ、ちゃんと持っていて下さいね」
結局、持ち主がみつかるまで、預からされてしまった。
宿への道を教わったから、今度は真っ直ぐ帰れたが、その間、この風船は、私の頭をずっと突っついていたよ。
「あ~、ライルゥ何?」
「いや、これ道で拾ったんだが、後で食うから触ったら駄目だぞ」
私は、風船の足を縛って宿の部屋の壁に提げておいた。
食われると思ったのか大人しい。
ラキとマァルは、新しい生き物に興味津々で、話しかけていた。
「あ~、ラキ、ん~?」
「あ~、ラキ、ん~」
「わっ、ラキソックリにしゃべったぞ」
「あぁ、じよず」
パチパチ拍手すれば、「あぁ、じよず、パチパチ」と真似をした。
「まさか、お前オウムか?」
「コッコッコッケケケーッ!」
私に対する態度が酷い。
やはり、このまま放置しようとしたら、ラキとマァルにお願いされて、陥落。
放してやれば、風船は、何故か私の頭を攻撃してくるんだ。
『ナビ、この風船は、なんだ?』
【悪口鳥:伝書鳩】
「えっ?」
「何がえっ? なのだ、騒がしくてかなわん」
トールのオッサンが、お昼寝していたベッドから起き上がって言った。
「ライル、昼食はまだか?」
『すっかり、従者扱いされてるなあ』
「ケケケーッ」
風船にまで笑われたぞ。
「ラキ、二人で外に食べに行くか?」
「ライルゥ、ん~とん~は?」
こんな奴等を心配してやるなんて、ラキは、何ていい子なんだ!
「昼から寝てないで、ちっとは働け! オッサン。 お前も、いい加減突っつくの止めろ! 風船」
「ラキも、何もしてないではないか!」
「コッコッコッケケケーッ」
「……」
『あと少しの辛抱と、底の村迄の我慢だ』
で、このお荷物と一匹の面倒をみながら過ごすしかなかったのさ。




