エカリアの町
クーナ山の麓沿いには沢があって、それを辿ればその先がエカリアの町だそうだ。
体力のないラキを抱いて、荷物を背負い素材を載せたキャリーを引いていたが、荷物を背負いもしないディミトリの奴もすぐバテてしまい、そこで考えた。
特殊フィルムの布に、万能スーツについているボタン(反重力)を取り付けて、そこに全部載せて引っ張る事にしようと。
摩擦が起きない程度にしか浮かばないので、違和感はない筈。
ラキやディミトリも載せてエカリアの町を目指したんだ。
「そろそろ休憩するか」
ラキは、元気がないからマァルが膝でゴロゴロしてやっている。
マァルは、傷ついた人を見分けるのも早いし、人を癒すのも上手だ。
『まさかな』
「ラキ、字を一緒に勉強しようか?」
「ん?」
「エカリアの町に着いたら、そこでトリシャ達に手紙を書くといい」
「てまみ?」
「そう。そうすると、時間はかかるけど、トリシャ達からも返事がきて、離れていてもお互いの事が知れるんだぞ」
わかりやすいな。
ラキの潤んだ瞳が、やっと乾いたみたいだ。
「ライルゥ、ラキやるぅ」
「そっか、そっか」
私がいい子いい子していると、ディミトリが何か言いたげだ。
「もしかして、オッサンも字が書けないのか?」
「それは、そなた達であろう。ワシは、こちらの字も完璧に頭に入っておるわ」
呆れたように言われたが、「えっ? オッサン覚えたんかい!」
「オッサンではない。ワシの名は……トール(愛称)とでも呼ぶがよい」
「トールのオッサン、凄いんだな。見直したよ。ついでに、二人に字を教えてくんないか?」
「どうやってだ? ここには、サイバーブレインもないのだぞ?」
これだから、高貴なお育ちでは考えられないんだろうさ。
地面に石で書いてやる。
「それでは、良く見えぬが?」
面倒なオッサンだなあ。
しょうがない、エカリアの町で書く物を揃えよう。
「ラキ、少し待っててくれな」
「ぅん、ライルゥ、ラキまてるぅ」
「そうか、ラキは本当にいい子だな」
これにより、ラキが文章を覚えて、もっと話せるようになるんだけどな。
それで、私のレベルもやっと上がる。
大した効果のわからない能力だし、どうでもいいんだが。
私には、強靭な肉体に山を持ち上げられるかもしれない力(大袈裟)と、喧嘩慣れした強さがあるから、下位の世界では特に不便がないからな。
*
エカリアの町は、山を掘った中にあった。
と言うのも、断層が光っているから明るいんだ。
『なんとも幻想的な町だな』
「あ~、あっちキラキラ、こっちキラキラ」
「山の中なのに、不思議な景色だな」
「ホホォ、苔か? 蜘蛛の糸か? それとも鉱物なのか? ライル、説明せぬか!」
あれから、オッサンである事を隠さなくなったディミトリ。
万能スーツの説明を教えてやれば、「やはり、異世界とは創りが違うのだな」と言っていた。
外に大きな看板があったので、中に入ってみたが、門はその先にありしっかり三人分の利用料を取られたところだ。
「ギルドで素材を売らないと、資金が足りないかもしれない」
すると、受け付けのような物があったから、訊いてみた。
「ようこそ、エカリアの町へ。クピッ。あなた方は、この町は初めてなのかしら?」
「そうです。あの、ギルドで素材を売りたいんですが、どっちに向かえばいいですかね?」
室内なのに、大きな帽子を被っている、ちょっと毛深い女性が教えてくれた。
「間違えると迷子になるから、良く聞いて下さいね。クピッ」
「はぁーい」
ラキが大きい返事をしたら、女性の背中の何かが揺れた。
「クピクピッ。大変良いお返事でしたねぇ」
と、ラキを見て言った。
ラキは、トテテと女性に近づいて、「ん~、ラキない、ん~、なあに?」
女性の背中で揺れた物を掴んでしまったのだ。
「あっ、あっ、放してクピクピッ」
「あ、ラキ、わるい子した。ごめんしゃい」
困ったように言われて、ラキはすぐに手を放して謝ったんだ。
『うんうん、ラキは偉いなあ』
「クピッ、いいのよ。ここはね」
そう言って、女性が帽子を脱ぐと、パサリと大きな獣耳が現れて、「これ、本物?」って思わず訊いてしまったさ。
「ええ……まさか、あなた方は、クピクピ族を知らないの?」
「クピッ?」
ラキが可愛いく言った。
「まぁ、可愛い挨拶をありがとうクピッ」
『初めて会った受け付けのクピクピ族をもうタラシ込んだか。流石、ラキだな』
焦れたトールのオッサンが、宿も知りたいと催促したから、知り合いの宿を紹介してくれて、安く済みそうで助かった。
先に宿に宿泊して、その日はゆっくりさせてもらったよ。
それにしても、クピクピ族って何だ?
【クピクピ族:驚異的な進化を遂げた齧歯類】




