村長さん
村長に挨拶に行くと言い出したアーバン。
危険じゃないかと、私も着いて行けば、やっぱり待ち伏せされていた。
小屋を出てすぐの事だ。
一番端にあるこの小屋では、村人の目もほぼない。
「挨拶に行くなら、無駄が省けたな」
「退いて下さい。私達は、村長の息子ではなく、村長その人に会いに行くんですからね」
トリシャがピシャリと言った。
やはり、母は強し。
今回も三人のお付きを連れているから、その一人に目配せをしてトリシャの持っていた贈り物に手を出そうとした。
アーバンが止める。
「妻に手を触れんでくれよ。オレは、狭量な男なんだ」
「フン、親子で趣味わりぃな」
「「なんだと?」」
サボが吐いたセリフに、アーバンも私も着火した。
「アーバン、トリシャと下がっていてくれ」
「ライル、喧嘩は駄目よ」
「わかってる」
四人がニヤニヤしながら私を囲む。
「随分、格好いいじゃないか兄ちゃんよ」
サボは、言い終わると同時に、ボディブローをかましてきた。
それを期に、他の三人も一斉に殴る蹴るの暴行を加えてきたが、私が平然としているのを見て、お約束のナイフ登場だ。
サボが魔法を使って牽制してから、ナイフで斬ってきた。
『魔法が使えるから、勘違い男なのか』
魔法と言っても、火の玉が一つ。
万能スーツを溶かす事も出来ない。
「サボの火の玉が効かない……」
確かに、普通の服なら燃えているのかもしれないし、衝撃も少なからずある。
「慌てるな、追い詰めたつもりで連携するぞ」
魔物退治に慣れているようで、それからの連携プレーも巧みだったが、何一つ私に傷を与えられないので、体力を消耗していった。
「まだやるのか?」
早々に三人は後退りしていて、サボだけが落としたナイフを拾う。
「俺様の魔法があって、四人もいるのにどうして勝てないんだよ!」
それまで、黙って下がっていたアーバンが前に来て……。
「ここに来るのに、荒野を真っ直ぐ来たんだ。魔物もお前達より多くで襲ってきたんだが、馬も人も荷物も無事なんだぞ」
「「「サボォ……」」」
恐ろしい者を見るみたいな目を向けられて、何だかラキが居ないと、昔に戻ったような気がしたな。
「じゃあ、通らせてもらうぜ」
ところが、サボは通ろうとしたトリシャに斬りかかったものだから、つい足が出てしまったのだ。
「ガフッ!」
キレイに決まったから、すっとんで行っちゃたよ。
「大丈夫かトリシャ!」
「アーバン、血が……」
私より先に庇ったアーバンの腕が切られていた。
「かすり傷だ、すぐ治る。オレは回復の早い男だからな」
『あ! 勘違い男がここにも! どうすんだよ』
トリシャが泣きそうだったので、アーバンの傷を見たら、服の上からだったので表皮が切れた程度で済んでいた。
証拠として、そのまま傷を縛ったアーバン。
で、悔しいから挨拶に行くと強情な二人。
ひなびた村だと思ったが、村長の家には門があった。
「村長に挨拶に参りました。誰かいませんか?」
開門してくれたのは、白い髭のおじいさんだった。
「何のご用ですかな?」
「テニイの親のアーバンとトリシャが、ご挨拶に伺いました」
「そうですか、ではこちらにどうぞ」
柔らかい物腰の老人だ。
間口で待っていると、奥から先ほどの老人が出て来て自分が村長だと言ったのだ。
「息子夫婦と一緒に住めるなんて、夢が叶いましたわ」
「返事をいただいたときゃ、二人で飛び上がって喜んだですよ」
トリシャとアーバンがお礼を言って、トリシャ手作りのパッチワークしたカラフルな上掛けを渡した。
「遠いところから、よう来られた。これからは、テニイと村の為に働いて下さる事を期待しとりますよ」
『ん? 至って常識人だな』
「さて、そちらの方はどなたですかな?」
「私達の大切な友人で、ここまで護衛をして送ってくれましたの」
「そうでしたか、てっきり、ここに住む方なのかと思いましたよ」
「冒険者のライルです。よそ者ですが、村長に一つお願いがあります」
「はて、何でしょうか?」
「テニイの畑や家を取り上げておいて、この村は、代わりの畑も用意してはくれないんですか?」
「さて、何の事でしょう?」
三人顔を見合せる。
「ご存知ないのでしょうか?」
私が言えば、とぼけている風でもなかった。
「失礼ですが、これからこちらにお世話になる二人では言えないでしょうから、私から言わせてもらいます」
村長は、ショボショボした目を向けてきた。
そこで、テニイやヴィオラが嫌がらせを受けて、畑や家を取り上げられた事を話し、今も怪我をさせられたとアーバンの腕を見せてやる。
すると、ただの好好爺だと思っていたジーさんの眼がカーッと開いて、次いでなぜだか口をモグモグさせた。
『なんか、可愛いジーさんだな』
「サボ! サボはいないのか? えーい、誰かサボを呼んで来なさい!」
と、大激怒。
それから、色々あってサボ達の悪事が明るみに出た。
村に住む事が決まったアーバン達の家も用意するように言われていたらしいのだが、そのお金を酒に使ってしまったのと、テニイの幸せが許せないのもあって、追い出そうとしていた事実が判明した。
それから、あの小屋を貸してくれたのは、雑貨屋の主人らしい。
『いい人だったんだな』
テニイの両親が早く到着したから、計算が狂ってしまったのと、小屋を貸す者が出ると思っていなかったようだ。
サボが全身打撲で担ぎ込まれた時は、どうなるかと思ったが、ちゃんと調べてくれた村長さんは、やはり村長さんだった。




