ディミトリの特技
「で、どうするんだ? ライル」
「そうだなあ……ディミトリ、お前何が出来るんだ?」
「いきなりですね。何かって何でしょう?」
「質問を質問で返すなよ。いいか、例えば、腹で湯を沸かすとか、鼻からスバゲッティ出すとか、尻から音楽奏でるとか、何か出来るだろう?」
ラキは、期待のこもった瞳でディミトリを見ているようだ。
ディミトリは、ラキの視線を嫌そうに半目で見返している。
『ディミトリの奴は、ラキをライバル視しているから厄介なんだ』
それも仕方ない。アーバン夫妻もライルもマァルでさえ、ラキ信者と言っても過言ではないのだから。
真面目に聞いていたアーバンが……。
「それは、変態じゃねぇのか? ライル」
「プッ、うふふ」
トリシャからヴィオラに笑いがうつれば、ココラがあどけない声をあげた。
「うおーっ、幸せだなトリシャ」
「本当ねぇ」
ラキもニコニコしていて、ああ、これを守らなくては人でなしだな。
男共の話し合いにも熱がこもる。
「私が出来る事は、弱きを救う事ですよ」
「ポンコツだな、お前」
ディミトリ改め高貴なオッサンは、カリスマの欠片もないぞ。
「これが教祖だ! と言うとんでもないところを見せて、村人の度肝を抜かないと、信者なんて獲得できるかよ!」
「無礼な! そなたは、ワシに人を引き付ける力がないと言うのだな?」
「「「うん」」」
アーバン夫妻と私は頷いた。
「うぬぅ、なんて奴等だ」
「そう、怒るなよ。じゃあ訊くが、あなた様の周囲の者は、あなた様の何処が好きだって言ってたんだよ?」
「ワシの好きなところ……首相は『さすが』といつも褒めておったし、従者は、『立派』でごさいますと褒めておったな……妃は……ご機嫌麗しゅうだったか?」
私以外、意味がわからなかったみたいだ。
ポンとディミトリの肩に手を置いて、「わかってんだろう?」と言ってやる。
ディミトリの落ち込みように、それぞれが励ました。
「野草茶でも飲みましょうか」
トリシャが逃げた。
「母さん、さっき飲んだばかりだよ?」
確かに、胃がチャプチャプ言ってるよ。
「まあ、もう少しこの村を観察してからにしようか。その間に、それぞれ案を考えてもらって、また今夜にでも話そう。ちょっと、これから素材を売りに行ってくるよ。それで、色々仕入れてくるからさ」
「あ~、ライルゥ、ラキいくぅ」
「じゃあ、二人で行こうか。ディミトリ、みんなを守ってくれよ」
「期待するでないぞ、フン!」
あらら、まだ怒っていたか。
マァルは、ヴィオラが気になるのか、着いては来ないようだ。
「じゃあ、行って来るよ」
*
小さな村だから、雑貨屋はすぐにわかった。
「ここで、魔物の素材買ってもらえます?」
「おや? みない顔だ。あんた冒険者だな?」
「ええ、まあ」
「で、何を持って来たって?」
えらく、素っ気ない店の主人だな。
持ってきた斑胴食肉猫のキバや毛皮、柔皮丸甲羅の甲羅なんかを出して見せた。
腕組みして仁王立ちか。
ラキは、ずっと大人しい。
『そうか、店の主人が笑わないからか』
「この毛皮と甲羅は、状態がいいな」
「そりゃそうさ」
ジロリと睨まれたぞ。
「よし、この斑胴食肉猫の毛皮を置いていけ。その代わりと言っちゃなんだが、一年間好きな物を持っていっていい。どうだ兄ちゃん?」
「その権利は、テニイに渡していいか?」
「テニイ? ああ、あんたテニイの両親が頼んだ護衛なのか」
「ああ、ちょっと訊いたら、大変な奴等に目をつけられて苦労してるって言うんでね」
「ヴィオラは村一番の器量よしだから、サボに目をつけられていたからな」
『あれ? 意外に話しがわかりそう?』
「この甲羅も付けるから、宜しく頼むよ」
「それなら、斑胴食肉猫をもう一枚頼む」
「いいけど、何に使うのさ?」
「お前さん、何処の出だ?」
「うんと遠い南の村から来たんだ」
「じゃあしょうがねぇな。この村は、冬になると雪に覆われてとても寒くなるんだ。だから、この斑胴食肉猫の毛皮を掛けて寝れば、凍えずに済むというもの」
『成る程。まだまだ沢山あるから、テニイの小屋に置いていこう』
「いいこと教えてくれて助かるよ。で、少し買い物してもいいか?」
「ああ、好きな物を持っていけ」
こうして、麦やら燃料やらを仕入れて帰った。
勿論、ラキには小麦粉を丸めて作ったお菓子を買ってやった。
なんでも、砂糖やハチミツを使っていて高価だから、別料金なんだと。
「これは、肉を食べないラキの非常食だから、万能スーツの懐にしまっておきなさい」
「ぅん、ライルゥ、いーの?」
「あんたの弟か? ほら、一つおまけしといてやる」
「あ~、ありまとござましゅ」
『うげっ、店の主人が笑ったぞ』
真ん中にぎゅっと集まっている顔した店の主人。笑うとなんだか不気味だ。




