クーナ村
道を短縮したお陰で、山の麓にあるクーナ村に昼頃到着した。
『こんな辺鄙な場所に暮らしているのか……』
柵も継ぎ足して、寄りかかっただけでも倒れるんじゃないか? と思うぐらいの頼りなさだ。
「おーい! テニイの両親を連れて来た。開けてくれー」
ギギギーッ。
酷い音だ。
「テニイの両親か。聞いている。通れ」
門番が開けてくれた中に、ピエールを引いて入った。
「あんた等は冒険者か?」
「そうだ。この村にギルドはあるか? 魔物の素材を売りたいんだ」
「ねぇよ。あるのは雑貨屋だ」
「じゃあ、そこで買い取ってくれるか?」
「物によるだろう」
「父さん! 母さん!よく無事で来れたね」
走って来た若者は、アーバンを甘い顔にした感じの男だった。
「「テニイ!」」
三人は抱き合って、お互いを見詰め合っている。
ラキが、それを羨ましそうに見ていたから、空いてる方の腕に抱き上げてやったのさ。
「ラキには私がいるだろう」
「ぅん、ライルゥ」
やっと笑顔になったな。
こうして、テニイの住む奥の方にある家に向かった……は、いいが、何コレ?
小屋のような物がポツンと建っている。
中からは、確かに可愛い奥さんと赤ちゃんが出てきたが……。
「初めまして、お義父さんお義母さん。ヴィオラです。それから息子のココラです」
「まあ! 本当に可愛いお嫁さんね。やるじゃないテニイ」
「母さん」
「うふふっ、ココラ、おばあちゃんよ。こっちにいらっしゃい」
ヴィオラがトリシャに赤ちゃんを預けると、ラキは腕から降りて、赤ちゃんを見に行ってしまった。
「あ~、ラキ、ココラァ?」
「そうよ、ラキちゃん。私の孫は愛らしいでしょう」
「ぅん、あいらし」
「ラキちゃんに抱かせてあげてもいいかしら?」
「勿論ですよ、お義母さん」
「こう、頭を支えるようにして抱くのよ。そーっとね」
ラキは、一所懸命赤ちゃんを抱き上げようとしていた。
それが出来た時のラキの大切な者を見る優しい顔を、私は一生忘れないだろう。
「ラキ、ココラァ」
「あぅ~」
幸せな一家を見ているようだ。
そこに、出ました悪役。
「お~い、随分と幸せそうじゃないか、テニイ」
お付きを三人連れている。
『誰だ?』
「両親が来たなら、残りの金も払ってもらうぞ」
『私も、こんなセリフを言った事があるな。アイタタタ』
そう思って反省した。
「家を手放したんだから、それで足りた筈だろう?」
「あんなちっぽけな家なんか要らないな」
「囚人でも入れとく事は出来んじゃね?」
「ウワッハ、違いね」
『自分が言うのもなんだが、コイツらクズだな』
ラキは、赤ちゃんをトリシャに返すと、トコトコやって来て、クズ共に名前を訊いた。
「なんだこのガキ、頭が抜けてんのか?」
ラキの言葉足らずな喋りを馬鹿にした。
幸せそうな一家は、一気に物騒な連中に変わった。
トリシャも赤ちゃんをヴィオラに返すと、家の中に入っているように言って、ズイと前に出てきた。
アーバンもだ。
『アレ? いつ、歩けるようになったんだ?』
私は、誰より早くラキの前に出て、睨み付けながら笑っていた。
異様な雰囲気を察したクズの親玉は、後退りしながらテニイに「また来る」と言って去っていったんだ。
「アレ、何?」
テニイに質問した。
「すみません、着いて早々に嫌な気分にさせてしまって」
「あんたが謝る事ないだろう。で、誰なんだ」
「テニイ?」
トリシャ達も心配している。
ここでは、誰が聞いているかわからないので、とりあえず、小屋に入る事になったのさ。
小屋の中には何もなかったから、広く感じたよ。
「ほーら、色々持ってきて良かったでしょう?」
トリシャが明るくアーバンに言った。
「ハッハ、家のかみさんの言う通り役に立ちそうだ」
トリシャに頼まれて、馬車からあれこれと荷を降ろし中に運び入れたら、少しはましになったか?
ディミトリにピエールの世話を頼んで、やっとテニイが話してくれた。
「実は、持っていた畑から金が出たって……」
「こんな辺鄙な村に財宝か?」
「ずっと耕していましたけど、あんな塊見たこともありません」
『仕組まれたのか』
「金が出たから何だってんだ」
「村の宝になるから、その土地を返せって……」
『あーあ、やっていたからこの先もわかってしまう! やだやだ』
「耕していた土地を取り上げて、税金が払えないからと家を明け渡したと。あんた、いったい何でクズ共に目をつけられているんだよ?」
「まあ、良く知っているのね、ライルは」
「ライルゥ、かこいー」
『ラキ、そんな透明な目で見ないでくれ』
居心地の悪い思いを抱えていたら、大人しくしていたヴィオラが……。
「私のせいなんです」
「「「はぁ?」」」
「ずっと、村長の息子のサボに執着されていたんです」
『ああ、そっちか』
「まぁ、辛かったでしょう?」
トリシャは、ヴィオラの肩を抱いてやり、ラキも隣りに寄っていった。
「何処にでもいるんだな、そういうの」
「だが、村長の息子じゃ相手が悪過ぎるな」
アーバンは、腕組みして考えているようだ。
「ディミトリに説教でもしてもらうか?」
「あら、いい考えね」
「まるっと、ここを何とか信者にしてしまえば、あのクズ共も変わるかもしれないからな」
面倒だから、ディミトリに振っただけだったが、みんな乗り気でさあ(特にディミトリが)。
で、『ディミトリ教祖信者育成作戦』が始まったのさ。




