表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/88

ディミトリ

 『やっぱり、駄目だったんだな……』


 抜け殻のようなディミトリの体を横たえる。


 少しショックを受けたが、今はそれどころじゃないと振り切った。


 地平線が見える荒野の真ん中では、向こうからもこっちからも丸見えだ。


 ただし、万能スーツから暗視スコープを出してかけないと、暗闇の中を視ることは出来ないが。


 馬車の前方から、丸い塊が猛スピードで迫ってくるのが視えた。


 『群れるってことは、野獣か』


 程なく意識が戻ったディミトリ。


 「我の言に耳を傾けもせん」


 と偉そうに言った。


 「なあ、ディミトリはもういないのか?」


 「居るが、寝ている」


 「起こしたらどうなる?」


 「酷く暴れるであろう」


 「んじゃ、代われ」


 「起こすのは構わんが、その後の事は知らんぞ?」


 「いいから代われ」


 「しょうがないのう」


 ブチブチ言うオッサンがウザイ。





 「フシャーーッ!」


 団体さんの到着だ。


 しなやかな体躯の山猫。

 ではなく、剛毛の胸毛か腹毛(あるのか?)のあるベンガル虎も真っ青な太く鋭いキバを持つ猛獣だよ。


 『斑胴食肉猫(レプティ):胴の斑点は、磯巾着のような攻撃をするので注意』


 万能スーツの解析が入った。


 まだ、半覚醒のディミトリをポイッと群れの中に投げ込み、怯んだ隙に手前の二匹の尻尾を掴み、振り回してなぎ倒しにしてやった。


 肩にのし掛かられていたディミトリは、変な風に体を捩り闇雲に腕を振って、周囲の斑胴食肉猫(レプティ)を吹き飛ばしている。


 『アイツ、超人みたいだな』


 こっちも、捕まえた斑胴食肉猫(レプティ)を振り回し続けるから、仲間は中々近づけずに隙を伺っている状態だ。


 そのうち、ディミトリのツン刺髪から青白い電気が走って、周囲に放電しまくり地面にまで穴をあけまくりだ。


 斑胴食肉猫(レプティ)は、驚いて四散して逃げた。


 持っていた二匹は、キバが折れて絶命していたが、それで、危険物のディミトリを構わず伸してやったのだ。


 「ヴヴーッ」


 ドサリ。


 『まったく、お前はバーサーカーかよ。あーあ、辺り一面穴だらけだよ。馬車で通れるか、これ?』


 首根っこを掴んでディミトリを回収した。


 「うおー、全身が痛い!」


 どうやら、オッサンが目覚めたらしい。


 そりゃ、あれだけ暴れたら体も悲鳴をあげるさ。


 出血は、手の甲ぐらいだったので、とりあえず馬車の中にディミトリを突っ込んで、トリシャに手当てを頼んだ。


 斑胴食肉猫(レプティ)の状態の良い物を何体か解体して、後は、ディミトリが明けた穴に入れて埋めておいた。


 『このキバは高く売れそうだな』


 肉も腿の辺りが旨そうだったので、確保しておいた。


 ピエールは、私が守っていたから無事だし、後は、この血の臭いに他の魔物が集まって来ないか、朝まで見張っておかないとならないな。


 サバイバルでは、これが一番大変だ。



 *



 「やたら、素材の取れる地域だな」


 さして必要もない手綱を満身創痍のディミトリに任せて、素材を載せたキャリーを引いて横を歩く。


 「また出たな」


 斑胴食肉猫(レプティ)のキバをスコンと投げた。


 土から出ていた鰐淵穴子(クッキー)の頭に刺さったようだ。


 通り抜けた時に、キバだけ抜いて持っていく。


 鰐淵穴子(クッキー)は、土の養分になって高く売れると言うが、臭いが……。


 魔物蔓延るこの荒れ地では、先に見つけて次々仕留めていくに限る。


 「冒険者を雇うつもりだったが、こんなに安全に進めるなんてなあ」


 「本当、ライルもディミトリも頼りになるわ」


 天気が良くて、安全だと思われているから、馭者台の方にアーデンやトリシャラキが顔を出していた。


 マァルは、ディミトリの肩にいる。


 「近道だと聞いたが、もっと回り道するのが普通なのか」


 「だから、こんなに荷を積んできているのよ」


 「息子に迎えに来てくれとも言えねぇしな」


 「向こうに着いたら、一緒に暮らすんでしょう?」


 「そうなの。テニイ(息子)が可愛いお嫁さんをもらってね、孫が産まれたのよ」


 「そうだ。それで、いてもたっても居られなくなってな」


 「孫に会いたくて押し掛けるのか。迷惑なジジババだ」


 「まあ、酷いわライル」


 ポンポンと宥めてやるラキ。


 「ありがとうラキちゃん。孫もラキちゃんみたいに可愛いに違いないんだから」


 ぎゅうぎゅう抱きしめるトリシャ。


 「クーナの村には子供はどれくらい居るんです?」


 ディミトリがまたドン引きするような質問をした。


 「あんたは、黙ってなさい」


 「ライル、またディミトリが拗ねるわよ」


 「祖先か何かが偉い人だったみたいで、自分が中心じゃない事が不満なだけだから。今は、戦闘の中心はディミトリだから、魔物にチヤホヤされて満足している筈だよ、な?」


 「毎回、中心に放るのはそう言う事だったのか。ライル!」


 突然怒り出したディミトリ。





 「ブヒブヒ」


 それを煩そうにピエールが注意したようだ。


 何やらブチブチ文句を言っているが、まあ平和な旅だよな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ