場所と値段
「そろそろ出掛けるぞー」
「あー、あん」
ラキは、興奮しすぎて躓いた。
「ラキちゃん、慌てなくてもちゃんと間に合うわよ」
「ぅん」
ラキは、いつの間に覚えたのか、トリシャにハグしてから走ってきた。
宿の外では、みな同じ方向に歩いていた。
ラキは、マァルを頭にのせて私の手を握ってくる。
「みんなもショーを見に行くんだな」
「ぁん、いっしよ、いっしよ」
ラキは、常にみんなと居たいんだな。
「楽しみだなラキ」
広場に着くとロープが張られて、それぞれが違う場所に並んでいる。
「何処が早いかな?」
なんて言っていたら、「兄ちゃん金持ってんだなあ」なんてからかわれた。
聞けば、座る場所で料金が違うそうだ。
ラキが楽しみにしているから奮発してやりたいが、さすがに、一番高い席は無理だし、三番目ぐらいの脇の席ならと計算していると、「クマックマ」と肩を叩かれた。
「クゥ!」
「えっ!」
こんなところに、鮭好魔熊かよ。
ラキは高い高いしてもらった後、肩車してもらって大喜びだ。
マァルは、私に飛び移って警戒しているがな。
「こんなところに居たら、大騒ぎにな……る」
「わー~、クマしゃんだ」
チビッ子達に囲まれて、他の子供達も抱き上げていた。
『ああそうか、ショーの関係者だと思われているのか』
「ガウガウ」
と、手招きされて、一番高い真ん前の席に連れていかれたぞ。
「ラキ! また会えて嬉しいよ」
地上人に変身している、と言っても元が綺麗だからな。
それでも、ラキは少し不思議に思ったようだ。
「ケェイ? ん?」
「この形は、気に入らないかい?」
変身している上皇人が、悲しそうな顔をするから、ラキは膝にのり上げて見詰めていたな。
あれは、私には堪えるが上皇人には嬉しいらしい。
「育ちの違いだと思いたい」
「グフ、グフフ」
思わず粒やいたら、鮭好魔熊に笑われた。
でもまあ、ラキも喜んでいるし、こんな近くでただでショーが見れるなら儲けたかな。
が、そう思ったのは最初だけで、「喉が乾いたな」と言われれば、近くの屋台で飲み物を買わされ、「アレは何だ?」と言われれば、また買いに行かされた!
私だって、魔物の口に頭を突っ込むのを見たかったのに!
「グフ、グフフ」
最後のフィナーレのダンスで、突然、雨が振り出したから、観客は一斉に帰ってしまった。
しかし、舞台を中心に円盤状に雨が降って来ないので、特等席の人達の貸し切り状態になった。
『濡れたくないから、円盤を呼んだんだな』
座長に気前良く上皇人がチップを渡したから、ラキと鮭好魔熊を舞台に上げてくれて、大きな魔物に触らせたり、玉の上に乗せてくれたりとサービスたっぷりだ。
「ぅあ、いいこ」
ラキなりに労ってやっているみたいだが、大きな魔物は大人しい。
「おい、お前!」
「は、はいっ」
『やべ、上皇人と二人きりだぞ』
「ラキに何かあったのか?」
「え、それはどう言う……」
舞台上にいるラキと鮭好魔熊に手を振りながら、上皇人は詰問してきた。
「ラキに能力が発生しているぞ? 知らないのか、この愚か者めが」
「能力が発生?」
「だから、我が守りたかったのだ。こんな輩になど任せたくはなかったのに……」
「え、あ、えっ?」
「それにだ、ラキがつけているアレだ! きつく持って離さないから仕方なく諦めたが、アレが何か知っているのか?」
「アレ? ですか?」
もう、雲の上の人の言う事がさっぱりわからない。
考えているうちに、ラキ達が戻ってきてしまった。
ラキは、お花を貰ったようで、トリシャに早く持って帰りたいと、お礼もそこそこに宿に急いだんだ。
『しかし、上皇人は他所に行ったんじゃなかったのか? 何でまだ居たんだか』




