ラキの看病
ラキは、二人の診察が終わるまで付き添っていて、医者からは、診察代が足りないと何故か、私が支払わされたんだ。
その後もマァルまで、奥さんから離れようとしないから、もう、私も諦めたさ。
マァルは、奥さんの肩に引っ付いて、きっと何かしているんだろう。診断は、肩が外れていたのと打撲だそうだ。
旦那の方は、骨が粉々になってしまい、正常には戻らないと言われていたな。
ラキが、自分の万能スーツを脱いで、宿で寝かせている旦那の足を包んでいる。
『ラキに余計な事を教えちゃったよなあ』
後悔してももう遅いか。
大部屋を借りて、落ち着いた奥さんがお礼を言ってきた。
「ご迷惑ばかりかけてしまったのに、こんなにお世話になってしまい、主人と二人、何てお礼を申し上げたらいいんでしょう」
「それは、ラキに言ってやって下さい。ラキが頼まなかったら、私は、見ないフリしてましたよ
」
「ラキちゃん、どうもありがとう」
「ん、ラキ、んー?」
心配そうに見詰めながら、指差しで名前を訊いている。
「ごめんなさい、名のるのが遅れて。おばさんは、トリシャ。旦那は、アーデンよ」
「トリー、アーテ」
「私は、ライル。甥のラキは、色々あって言葉が少し足りないんです。すみません」
「いいえ、謝ることなんて何にもないですよ。ラキちゃんが素直で心優しい事は、身に染みて知っていますからね」
奥さんが少し微笑むと、ラキは嬉しそうに笑った。
「それから、トリシャの肩にいる、肩揉怪獣はマァルと言いますから」
「真っ白くて綺麗な肩揉怪獣ね。初めて見たわ」
トリシャに優しく撫でられて、気持ちがいいのか「ニーニー」鳴いている。
ラキと一緒で、アイツも人タラシなのか?
「それで、これからどうします?」
「私達は、息子夫婦が住んでいるクーナの村に向かうところだったんです。でも、少ない旅の資金も使ってしまって、夫も……」
再び顔を曇らせてしまったぞ。
『重い、暗い』
「私達が一緒ですから。そんな事考えずに体の治療と旦那の看病をして下さいよ」
「そんな……いいんでしょうか?」
「いいも何も、コイツ等があなた方から離れませんから、仕方ないんですよ。フゥ」
「ライゥ……」
私が怒ったと思ったのか、ラキは、また心配そうに眉を寄せて見上げてくる。
頭をポンポンとしてやり、「大丈夫だ。ラキ、しっかり面倒みてやりなよ。私は、仕事に行ってくるからな」と言ってやった。
「ぅん、ラキみう!」
『うーん、るがなあ……中々ハッキリと言えないなあ』
「宿の主人には伝えておきますから、ちゃんと食事して薬を飲んで下さいよ」
「本当に、色々ありがとうございます」
「ラキもちゃんと食べるんだぞ」
「あい」
『はもかよ。ヤレヤレ』
今度の宿の主人は、やたらと注文の多い大部屋客に、ムッとしながらも対応してくれそうないい人だった。
先ずは、ディミトリを探しながら金を稼ぐか。
ギルドに顔を出したところで、あの、馬を預けた男に会った。
「「アーーッ!」」
「知り合いがここに馬を売ってくれてな、金を受け取ったら、あんた等の宿に行こうと思ってたよ」
「ライルだ。お互い面倒事に巻き込まれましたね」
「俺は、スダンだ。この街で染め物をやってる」
「怪我した二人なら、今、甥が面倒を見ていて、稲穂の風亭に一緒に泊まってるよ」
「若いのに、驚くほど力があって親切なんだな」
「あんたが手伝えって言ったんでしょうが!」
「そうだったかな? アハッハッハ」
どうにも気持ちのいいオヤジだ。
「じゃ、稲穂の風亭に届けて来るよ」
「私は、人探ししてから帰りますから、遅くなるって伝えてくれません?」
「いいともさ」
掲示板とやらに何か情報がないか足を踏み出した時。
「あ、ライル。お前噂になってんぞ」
と、すっとぼけた事を言ったオヤジ。
『噂ってなんだ?』
と考えながら、端から依頼や伝言なんかを、万能スーツのOCR機能で翻訳してもらっていた。
『黄色く光り浮遊する羊とか、夕日時に出る浮き雲とか、ふわふわ漂う物が目撃されているのか。これを捕らえたら、大金が稼げそうだな』
「鮭好魔熊が喋った。熊に助けられた。鮭好魔熊が陽気に踊っていた。って、あれ? 何か既視感がするなあ。忘れよう」
『空から降った石で穴が空いた場所に、時給自足する人びとが集まっているか……。水でも涌いたのか?』
『後は、薬草採取、魔物を狩る依頼と護衛か』
『街の荷運びなんかもあるなあ』
『手っ取り早く稼げるのってなんだ?』
「もしかして、今朝、大きな荷車引いてた男か?」
「ああ、怪我人がいて急いでいたんだ」
「全然疲れた感じがしていないが、荷車って重くはないのか?」
「軽い鞄を持ったのと同じくらいの感覚だったな」
考え事をしている時だったんで、余り良く考えずに返事をしてしまった。
「そうなのか。ならば、少し頼みたい事があるんだが? 勿論、お金はちゃんと払う」
「いいけど、手短かにしてくれよ。養わなきゃならない奴が増えちまったから、手っ取り早く稼ぎたいんだ」
「いいとも」




