閑話 あの晩の出来事
『わいとした事が……油断したぞい』
あの、子悪党な男からこの、変わった小僧に移ったまでは上手くいっていたぞい。
しかし、小僧の心の澄み具合ときたら、どうだ?
わいとて、所詮神の遣いだもの、美しいまでに洗われてしまえば、それはもう極楽だぞい。
しかも、仲間だと言って大歓迎されているぞい?
いったい、この小僧は何者なんだぞい?
思えば、神が庇護する者達の祈りに応え、来日も来日も、汚い者にまとわりついて、そして黄泉道に誘う日々。
わいは、ジワジワジワジワと心が穢れてしまい、あんなにお喋りだった相棒の黄口は、一言も口を利いてはくれなくなった……。
黄口。
近頃は、姿も見ていない。いったい何処に隠れてしまったのか……。
逢いたいぞい、わいの片割れ。
『仲間、仲間』
さっきから五月蝿いぞい。
そうか、この者の強い気持ちに抗えないのは、わいも欲しているからなんだぞい。
『ん、ラキ。んー?』
『なんだ、わいの名前を知りたいのか』
『ん』
『そんな事より、わいを追い出さんと大変な事になるぞい』
少し脅してみせたぞい。
パアーーッ。
どうしてそこで、こんなにも温かな光りが生まれるんだぞい?
『やってられんぞい』
『ここ、ここ』
『ここに居ていいのか?』
『ぅん』
まったく、呆れる程美し過ぎて、わいも疲れていたのかもしれんぞい。
『角有じゃ』
『つのぉ?』
『違うぞい。かくゆうぞい。失礼な奴だなあ』
『ん、ラキ。ん、かくうー』
『わあーっ! 何が起こっているんだ?』
さっきよりも、眩い光りにわいは呑み込まれてしまったぞい。
こうして、捕らえるつもりが、捕らえられてしまった現状。
『まあ、わいにとっては、この澄んだ場所は居心地がいいぞい』
異世界で真名を口にした『角有』は、ラキに不思議な力を与えてしまい、ラキは『幻獣の卵』と言う能力に目覚めるのであった。




