ラキの想い
「おーい、開けて欲しいぞい。さっき渡した肩揉怪獣の事で話しがあるぞい」
ラキは、ライルが出掛けてからもずっと、肩揉怪獣の傍にいて、ライルがしてくれるみたいに優しく背中を撫でていた。
いつから井戸で暮らし初めたかをラキは知らない。
物心ついた時には、ずっと井戸の中で暮らしていた。
そんなラキに、食べ物と土を掘る道具をくれた村人達。
ラキは、嬉しくて一所懸命穴堀をした。
しかし、日照りが続いたある日、井戸は枯れたのだ。
村人達は、寝ていたラキに石を投げつけてきて、休むとまた更に石を投げつけた。
フラフラになりながら堀り続け、ようやく、少しだけ水が出るようになった時、地下に住む獣達も水を求めて姿を現したのだ。
それを見た村人達は、追い払う為に獣達にまで石を投げつけた。
小さい獣は逃げ遅れて、石が当たり動けなくなった為に仲間からも置き去りにされてしまったのだ。
水はまだあるのに、どうして?
仲間を見捨てていくのはどうして?
言葉は知らないけれど、ラキの胸はとてもとても痛くて仕方がなかった。
一所懸命看病したけれど、水を飲ませる事しか出来ないラキには、助ける事も叶わない。
仲間にしてもらえない自分。
仲間なのに助けもしない獣達。
自分なら……とても大切にするのに……。
シクシクと痛み続ける胸を抱えて、それでも毎日を踏ん張ってきた……。
でも……。
身体中痛いしお腹もいつも空いていて、なんだか気力も出ないと感じていた時、井戸の中に人が運ばれてきた。
グッタリしている様子に、この人も、仲間かもしれないこの人も、弱って消えてしまうのかと思って、胸がざわざわざわざわして、ずっとずっと見ていた。
水を沢山飲ませたら、元気になってくれて、それでも心配で傍に座ったら、「よしよし」って大きな柔らかい手で触ってくれた!
井戸の上に居る人達からは、手で払われたり蹴られたりするのに、やっぱりこの人は仲間だったんだ! 初めて出来た大切な大切な仲間なんだって、胸がとてもとっても熱くなって、落ち着いていられなかった。
だから、土を掘ってもっと食べ物を増やしてもらおうと張り切ったのだ。
『だってライルは、ラキに沢山の力をくれたから』
何も食べていないのに、ライルがいてくれるだけでいつまでも土を掘れる気がした。
仲間ってこんなにこんなにいいものなのに、どうして弱ったからって放ってしまうのかと、悲しく思ったのだ。
「………」
荒い息をしている。
『肩揉怪獣は、仲間だった男の事をどう思うのかな?』
ラキは、第三者の立場で考えられる迄に成長した事には気づいていなかった。
そして、まさに考えていた男が訪ねて来たようなのだ。
『肩揉怪獣を迎えに来たんだ!』
ラキには、そうとしか考えられなくて、急いで扉を開けてあげたのだ。
「あっち、あっち」
男に、肩揉怪獣を寝かせているベッドを指差してやれば、戸を閉めた男は、後ろからラキを羽交い締めにして、顎を持ち上げて強引に口を開けさせた。
「あ~!」
ジタバタもがいても、指がくい込む程の強い力で抑えられてしまい、そのうち、何かを飲みこまされて気を失ってしまったのだ。
「お、おい! どうした? 何だこの状況は? 何でこんなところに居るんだ俺は?」
グッタリしている子供をベッドの洋服が載せてある横に転がして、後は一目散にそこから男は逃げ出した。
「クソッタレ、カモだと思ったのに、いったい何でこんな事になってんだよ! ああ、関わらなきゃ良かったぜ」
男は、深く後悔しながらも、この後町を去るのだった。
*
「助かってくれればいいが、あの万能スーツはラキ仕様だからどうだろうなあ」
もしもの時に、ラキを慰める為の物を買っておこうと、そのまま通りの店を覗いて歩いていたライル。
まさか、ラキが狙われてしまったとは、想像もしていなかったのだ。
「鳥の形をしているこれはなんだ?」
「いらっしゃい。その鳥、精巧に作られていますでしょう? 今、町で売れているのですよ。机に飾ってもいいですし、紐を通して首にかけてもいい品物です」
「この鳥、余所でも見たよ(嘘)。これより少し安かったかな?」
「っ、そ、そうでしたか。では、特別にこのお帽子もお付けしましょう」
「子供用か。あれ? ここんところ、虫喰ってるなあ」
「ええ、まあ、そこにこの鳥をお付けすれば、あまり気にならないでしょうし、いっそう素敵になると存じますよ」
確かに、外は思ったより暑いし帽子は必要だな。
「じゃ、それでお願いするよ」
「はい。ありがとうございます」
ラキは、きっと鳥が好きだろうから、これで喜ぶだろう。
じゃなきゃ、チイチイなんて鳴く訳ないし、水を飲みに来た鳥が羨ましくて見ていたんだろう。
よし! 硬貨を支払って宿に急ぐぞ。




