(2)攻める肉食、守る草食
序盤は粗方が予想していたように、攻める肉食、守る草食という構図となった。
中盤の底からユタラプトルがボールを散らし、二列目の小型獣脚類トリオがパスとドリブルを混ぜ合わせた巧みな連携で、草食の竜脚類3バックの壁の間をついてくる。そのファンタスティックな躍動に観客が湧く。
ヴェロキラプトルのスルーパスをアルゼンチノサウルスが尻尾で跳ね返そうとするも間に合わない。素早く裏に抜け出したアロサウルスを中盤のトリケラトプスが戻ってカバー。ボールをはじき出すもそこに詰めていたティラノサウルスが豪快に振り抜き、肉食チームが早くも先制する。
「肉食1-0草食」
ティラノサウルスは雄叫びを挙げて観衆を煽る。
草食チームのディフェンス陣も徐々に肉食の攻撃に順応してくる。中盤のケラトプス・カルテットが小型獣脚類トリオにプレッシャーをかけ、3バックの裏のスペースもしっかりとカバーする。すると、小型獣脚類トリオの一角、オルニトミムスが恐竜最速とも評されるスピードを発揮して、3バックの壁の間を強行突破する。ゴールキーパーと一対一になったところで、ボールを横にそらし、ティラノサウルスが押し込もうとするところを、ブラキオサウルスの伸ばした尻尾が足をかけてしまい、ペナルティーキックの判定。ブラキオサウルスにはイエローカードが出される。ティラノサウルスがペナルティーキックを蹴るもゴールキーパーのパラサウロロフスが横っ飛びではじき出す。ティラノサウルスは地団駄を踏んで悔しがる。
小型獣脚類トリオの中でも、ヴェロキラプトルとデイノニクスは知能が高く、意表を突いた攻撃を次々に繰り出してくるので厄介だ。しかし守備力は低い。サイドバックの翼竜類も守備力が弱いため、アンカー1枚とセンターバック2枚が事実上、肉食チームの守備要因だ。
草食の巨獣3バックが大きくはじき返したボールを前線の装盾類アンキロサウルスが収める。これを潰しに来るスピノサウルスを固い鎧でガードし、裏に抜けようとするイグアノドンにボールをはたく。イグアノドンは巧みなフェイントでカバーに入ったタルボサウルスを置き去りにし、最後はゴールキーパーの逆を突いて、グラウンダーのボールをゴールに流し込む。
「肉食1-1草食」
イグアノドンは飛び上がって、喜びを爆発される。背びれを立てたスピノサウルスが鬼の形相で睨みつけていた。
草食チームのカウンターはさらに冴えわたる。ボールを絡めとったトリケラトプスが中央を猛突進する。アンカーとして待ち構えていたユタラプトルと激突し、火花散るバトルを繰り広げる。そこをケトラプス・カルテットの他の3頭がフォローし、推進力の高い攻撃をしかける。インテリジェンスなハンターとして名高いユタラプトルとは言え、これだけ数的不利となれば、抑え込めない。
それでも、獰猛なセンターバック2枚、スピノサウルスとタルボサウルスもアグレッシブな守備で奮闘する。ファール覚悟の荒々しいプレーに草食チームも圧倒され始めた。
そんなわけで、大まかには攻める肉食、守る草食という構図で進むものの、次第に試合が落ち着いてきた。この拮抗状態は肉食チームの強力な武器によって破られる。