プロローグ
数年前に書きかけたものなんですが、少し手直しして投稿します。とりあえず一週間ぐらい毎日更新し、そこからは気分次第でのんびり投稿するつもりです。それでも構わないという方はどうぞ。
ここは、学術都市ムーン。
世界中からあらゆる人々が知識を求め、様々な人々が学びにやって来る場所である。
その中心に建つのは、一際立派な図書館。
『導きの図書館』と呼ばれるそこに、一人の青年が入っていった。
「美蘭はいるか?」
「館長は……今三階ですね。呼びますか?」
「いや、俺が行く。さんきゅ」
青年は転移陣に乗って三階へ行き、読書中のある少女に声をかけた。
「よぉ、美蘭。久しぶり」
「………蒼君! どうしたの?」
「遊びに来た」
「もう……とりあえず地下に行きましょ。騒がしいから図書館にいると邪魔よ」
「酷いな……」
青年――蒼は、美蘭に連れられて再び転移陣に乗る。
着いた先は、ごく普通のリビングとなっていた。
「なぁ、ここは何階だ?」
「地下九十五階」
「………また増えてね?」
蒼は呆れた表情で美蘭を見た。
「そりゃ、増えるわよ。ダンジョンなんだから」
「はぁ……クーも大変だな」
「おー! わかってくれるか、ソウ!」
「あ、クー」
クー、と呼ばれた赤い髪の少年が、蒼の元へ駆け寄った。
「ミランの奴、ガンガン本を増やして、その分部屋と本棚も増やしてさ……最高到達階数、まだ地下五十一階なのに」
「いいのよ、クー君。地下四十階からの『図書迷宮』はA級ダンジョンなんだから、難易度はガンガン上げても大丈夫! それに普通の物語とかは地上だし」
そう、この『導きの図書館』は地上五階、地下九十五階の大型ダンジョンなのだ。
百を越えるダンジョンが存在するなかで、九つある古代ダンジョンの一つに数えられている。
アイテム、モンスターから得られる魔石や素材だけでなく、膨大な蔵書から得られる知識も注目されていた。
現在は学術都市ムーンの管理下に置かれ、世界の学びの中心となっている。
「まぁいいけどさ。それより、ソウは何しに来たんだ?」
「遊びに。あ、そうそう、新人教育回ってきたぞって伝言がある。よろしくってさ」
「ええ!? なんで!?」
「思考回路が少し変わってるらしいんだ。美蘭みたいなセオリー無視したダンジョンになる可能性が高くてな」
「ああ、ミランは変人担当ってことだな」
「酷い!」
「まぁまぁ。変わったダンジョンは生存率低いから、それを上げるのに成功例が必要なんだよ」
蒼の言うように、この『導きの図書館』は個性的なダンジョンであった。
これは、マスターである美蘭のこだわりによるものである。
「私だってこのダンジョンを成立させるのに、めっちゃ頑張ったんだからね!?」
◆◇◆◇◆
私は本が大好きな高校生だ。過去形だけど。
というのも、私はどうやら死んだらしい。
そして、転生するらしい。
今いるのは真っ白の何もない空間。
目の前には、一人の青年。
「えー、その、俺はまぁ一応神だ。いきなりだが……お前は死んだ。で、異世界に転生してほしい」
その人はこんなことを言ってきた。
ラノベでよくある異世界転生というやつかな?
私はそういうの結構好きで読んでいた。まさか自分の身に起こるとは思わなかったけど。
そんなことを考えつつ、私は自称神様に答えた。
「なんで?」
と。
「あー……簡単に言うと、世界を何とかするためだな」
「……もっと具体的に言ってくれないとわかんないよ?」
世界を何とかするためって、大雑把すぎるでしょ。何をしてほしいのかさっぱりだ。
「あーっと、説明面倒だから転生先でコアに聞いてくれ」
「コア? 何するかわかんないのに転生とかお断りなんだけど」
「ちっ……ダンジョンマスターに転生させるから、ダンジョン作ればオーケーだ。詳しくは相方のコアに聞け。じゃ、頼んだぞー」
「は? ダンジョンマスター? ってちょ、待っ……」
一方的に会話を打ち切られ、意識が遠くなる。
次に目が覚めた時には、既にダンジョンマスターに転生していた。