極秘の会議
前回の続き。
年度末まであと1か月余となったある日。
午後の防衛省。
大臣室で極秘の会議が開かれていた。
出席していたのは防衛相、副大臣と、それぞれの秘書官、
そして、暗号解読を担当している陸自の女性将校。
「図書館の防犯カメラには、該当する人物が写っていた?」
「女性のようでした。この写真です」
「スカーフにサングラスか。どこの誰かはわかった?」
「それが不明です。
警察庁でスカーフとサングラスを外した顔を推定してもらい、
運転免許証のデータベースと照合してもらいましたが、
防犯カメラに写っていた人物と合う人はいません」
「身元が割れるのを故意に防いだか。
図書館の玄関もこの姿で通過してるな」
「図書館には誰でも入れるし、中で本を読むだけなら、カウンターでの接触はない」
「入った人たちがすべて地元に住んでいるのかは、わからないわけだ」
「利用者カードを持っている人たちの住所については、
図書館で登録していますが、
閲覧だけの人たちは、身元の特定ができない場合もあります」
「盲点をつかれたか。
暗号はいつの時点でまとめられた?」
「数年前と思われます。わが国の対空防衛システムについての機密情報ですが、
今はもっと進んでいます」
「それにしても、何年も貸し出されない本が図書館にあるのはともかくとして、
誰が何の目的でこういうことをした?」
「メモ用紙の暗号はどこかに流出したのか推測できる?」
「あったとすると、仮想敵国や、その周辺諸国でしょう」
「メモ用紙の続きというか、あれ以降の情報は大丈夫か?」
「関与している職員の動静を数年前の分から洗っていますが、
過去のことなので、完全にわかっているわけではありません。
人事異動もあったし」
「機密情報の保管に手抜かりは?」
「パソコンを買い替えたことがあったので、ハードディスクの記録がどうなったかまでは不明なところもあります。
率直に言いますが」
「関係する職員で、カネに困っていた人間はいるのか?」
「そのへんも、現在は調査中です」
(続く)